(17)科学≒魔法
敵要塞まであと600ラッド。
「進め!とにかく進むんだ!」
騎馬隊は猛スピードで突っ込んでいく。
歩兵大混乱に陥れた謎の攻撃は幸い今は止まっている。
僅かにオレンジ色の何かが飛んでくるが、被害はさほど出てはいない。
「突っ込めぇぇぇ!」
が、ガルフスらの進撃もそこまでだった。
突如としてオレンジ色の火箭が彼らに降り注いだのである。
敵要塞のあらゆる所から湧き出るそれはいとも簡単に騎馬隊を薙ぎ払っていった。
「なっ!?まずいぞ!た、退却ー!退却ーっ!」
慌ててガルフスは指示を出すが、馬の向きを変える間も与えられず容赦なく味方が倒されていった。
「クソッ!あの攻撃、もしや爆轟魔法か?!魔王以外であれを使える者が…」
勢いよく突っ込んだ騎馬隊1000人のうち、3分の2以上が還らぬ人となった。
「目標退却していく!」
「撃ち方やめ!」
数十秒程続いた轟音がピタリと止む。
「一体何が起きたの?」
ミューリーが目を丸くしてモニターに見入る。
「まぁ、魔法みたいな物だと思ってくれれば」
どうせ科学とか説明したって意味ないだろうから魔法という事にしておこう。
関係ないけど科学ってある意味魔法だよね。
「魔法?でもこんなの見たことないよ」
無論俺もヴォイテクもない。
モニターに映るのは生々しい戦場だ。
戦車のモニター越しに見ているからまだゲーム感覚でいられるが、近くに行って生で見れば恐らく吐き出しそうになるだろう。
長篠の戦いでは装填に時間のかかる火縄銃の欠点をカバーするために、3段撃ち戦法を取ったと言う。
だが自動制御のM2重機関銃の掃射ともなると火縄銃の3段撃ちなど比でもない量の弾丸が敵に向かい飛んでいく。
そんな物を騎馬隊が浴びれば結果は明らか。
ロザンヌ平原には数千の歩兵と数百の騎馬隊の死体が僅か数十分のうちに転がったのだった。
地獄ってこんな感じなのかな。
そしてこの地獄を作ったのは…俺だ。
「ガルフス隊長!本隊が到着しました!」
5万人のレイセン攻略部隊本隊が到着したのはその日の夜だった。
「ロック司令!お待ちしておりました」
ガルフスは攻略部隊の指揮官に挨拶をする。
「ご苦労、しかしこのような要塞がロザンヌにあったとはな…」
司令官ロックは長い髭をつまみながら要塞を眺める。
「数日前にはそんな情報はなかったと言うのに、まるでかつて伝説にあった一夜城だな」
しかもただのハリボテでなく強力な防御兵器まであるという。
「まぁよい。明日数に物を言わせて強襲してくれるわ」
ロックには根拠のない自信が溢れていた。
一方勇輝も明日の戦闘に備えヴォイテクと話し合いをしていた。
ミューリーは報告のため一度王城に戻っている。
戦闘が始まってからずっと質問攻めにあっていたから少し落ち着いた。
「かがり火の数がやけに多いな…本隊が到着したんだろう」
「となると、明日以降に総攻撃ってことになるな。8万の敵とどう戦うか…」
「やろうと思えば夜間砲撃で一晩の内に片付ける事もできるが、それはしたくないんだろ?」
その通り。
今回の目的は敵が今後こちらに攻め入る気を完全に断つ事だ。
となれば先程のような地獄を生み出して、恐怖の念を敵に抱かせるしかない。
ここは話し合いで解決とか、そんな綺麗事で成り立っている世界ではないのだ。
「さすがヴォイテク、わかってんじゃん。」
「相棒だろぉ?」
会ってそんなに時間は経っていないが、俺たちの間には堅い信頼があった。
いわゆる一心同体って感じかな。
「こっちに手を出せばどうなるか、分からせてこそ意味がある」
ヴォイテクが頷く。
「8万人が一気に押し寄せるとなるとやはり必要なのは圧倒的火力だな。こんなのはどうだ?」
ヴォイテクが出したのは高性能20mm機関砲の設計図だ。
1分に数千発という凄まじい破壊力をもつバルカン砲である。
「それと、これだ」
次に出てきたのは16式機動戦闘車の図面である。
16式機動戦闘車は装輪装甲車に105mm戦車砲を搭載した国産の装甲戦闘車だ。
詳細はG○ogleで調べてもらうとして、とにかく超高性能な車両なのだ。
こんな最新型の兵器の図面をどう手に入れたかは疑問であるが、あるものはなんでも使いたい。
「戦車の速度じゃ敵さんの前を走り回るには不都合だ。こっちの方がいいだろ?」
まぁそりゃそうだけど…。
ホント創造魔法とAIの組み合わせってチートだわ。
こんばんは
ひぐまです
ここまで読んでいただきありがとうございます
次回は11月7日(日)の23時に投稿予定です
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