(15)ミリオタ+創造魔法=永久BANレベルのチート
ーロザンヌ山脈ニューセン道中
「さて、第一陣は皆峠を越したな?」
「はっ、現在先頭部隊がロザンヌ平原に到達した頃かと」
「よし」
ハノーバー連合王国軍レイセン攻略部隊第一陣25000人の隊長ガルフス・ホルスターはニューセン道を騎馬に乗って降りているところだった。
「レイセンの主力は既に我が戦力の前に散って残りは数千しかいないと聞いている。楽勝だな」
そう言ってニヤニヤしているとふと隊列が停止した。
「どうした?前へ進め!」
「隊長!ロザンヌ平原に巨大な要塞ができており通過ができません!」
「要塞だと?そんな情報は入っていないぞ?」
「し、しかし…」
報告する兵士の目はこの世のものではない何かをみたような、そんな目だ。
「ええい!この目で確かめてくれる!」
ガルフスは道を駆け下りた。
道が開けるととんでもないものが目に飛び込んでくる。
「こ、これは一体なんだ?!」
全長数メイラーはありそうな巨大な要塞がそびえているのである。
こんな巨大な物をこの世界の人間が、しかも超短時間で造ったとはとても信じがたい。
「ど、どうしてこんなものが?」
「隊長!どうされますか?」
部下の声ではっと我に帰る。
「ええい!こんな要塞、攻め落としてくれる!直ちに布陣せよ!総攻撃だ!」
皆が混乱しているときに隊長である自分までが動揺していてはまずいのだ。
「はっ!」
25000人が直ちに戦闘モードに入った。
「おうおうおう。敵の大将さん目ん玉ひん剥いてたまげてやがるぞ」
俺は双眼鏡(もちろん生成したもの)を覗いて言った。
実に気分がいい。
どうせやるならと大量の魔力を使ってみたのだが、左右4kmにも渡る超巨大要塞が出来上がってしまった。
要塞から見る敵軍はアリの集団くらいにしか見えない。
監視役のミューリーは一体なんと上に報告するのであろうか。
アホみたいにデカい要塞を作ってなんかしてるとでも言ってくれれば面白い。
「あ、敵の隊形が変化したぞ」
「それじゃあこっちも準備するか」
要塞にはVTWのデータを基に作った榴弾砲FH−70を20門、MLRS(多連装ロケット砲)10基、M2重機関銃60基、自動制御バルカン砲2機が配置されている。
その管制は同じく魔法で生成した巨大サーバーによってVTWが行う。
そしてさらに…
「勇輝!これも作ってくれ!」
ヴォイテクが用意したのは10式戦車の設計図だった。
10式戦車は日本が開発した世界屈指の性能を誇る戦車だ。
なんと彼我共に移動している状態でも主砲の命中精度は百発百中なんだとか。
しかも各戦車間で構築されたネットワークにより高度な戦闘が可能という。
現代でさえヤバすぎるチート戦車をこんな剣と魔法の世界に持ってきたりしたらもはや永久BANレベルじゃないか?
「どうしてこんなものを?」
「もとは日本の公的機関向けのAIだぜ?こんくらい持ってるよ」
いや、全然おかしいおかしい。
ヴォイテクさ、君絶対なんかやばい事してたよね?(笑)
とりあえず10両くらい作っておこうかな。
「でもどうやって戦闘をすればいいんだ?」
「大丈夫。勇輝が操作しやすいようにカスタマイズしてるさ」
俺は戦車に乗り込んだ。
はっきり言って操縦装置の仕組みはサッパリ分からない。
取説見ても分からないだろう。
だが、この通称戦うコンピューターはVTWが管制し、オペレーターをヴォイテクが務める。
ぶっちゃけ俺は乗ってるだけでいいのだ。
ちなみに腰にはM29リボルバー銃を下げている。
なぜかって?
もちろんかっこいいからに決まっている。
魔力を込めたそれはおそらく絶大な威力を発揮するだろう。
無論試射したことがないので何とも言えないが。
俺は戦車の中でモニターを確認して相手の様子を窺った。
「勇輝!目標前進してくるぞ!」
「よし!戦闘状況始まった!作戦【夏虫】を開始する!」
夏虫という名前は「飛んで火に入る夏の虫」ということわざから取ったものだ。
「ねえねえ、さっきからなんのこと言ってるの?」
監視のためと乗り込んできたミューリーが俺の首の横から顔を突き出して尋ねる。
戦車の内部は狭い。
やたらと密着する体に一瞬余計なことが脳裏をよぎるがすぐに振り切った。
「んー?これからドンパチ始めるんだ。耳を壊したくなければ耳塞いでおいた方がいいぞ!」
ミューリーは不思議そうな顔をして耳を両手で塞ぐ。
「目標突撃してくる!明らかに敵対意思があるものと思われる!」
「勇輝、ここは日本じゃない。専守防衛だとかそういうものが通用する世界じゃないんだ」
そう、やるかやられるか。
ここはそれが当たり前の弱肉強食の世界なのだ。
「ヴォイテク、榴弾砲を標準!目標、前方敵集団!」
「了解!目標敵集団!距離4000!榴弾砲撃ち方初め!」
ヴォイテクの制御で20門のFH-70が火を噴く。
と同時にものすごい衝撃が全身を震わせた。
「ぴぎゃ!なにこれ!」
ミューリーが素っ頓狂な悲鳴をあげる。
彼女にとっては俺たちの武器は見たことも聞いたこともない物だ。
驚くのも無理はない。
ここにハノーバー軍第1陣25000人と旅野勇輝&ヴォイテクの戦闘が開始されたのである。
あ、そうそう。
今更ながら記しておくと旅野勇輝、この男、ミリオタである。
こんばんは
ひぐまです
ここまでお読みいただきありがとうございます
1番最初の戦闘がいきなり大規模な対人戦とまぁ特殊なタイプだなぁとは我ながら思います(笑)
次回の投稿は11月2日(火)の23時を予定しています
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