(14)新大河ドラマ!軍師ヴォイテク!
無限に広いかと思われる平原を一台のバイクが疾走する。
先端には熊のぬいぐるみが乗っていた。
もちろんこの世界にそんなものは存在しない。
それでもここにバイクがあるのは俺、旅野勇輝が錬金術によって作り出したからだ。
異世界錬成師ってサイコー。
「いやー、やっぱりバイクはいいなぁ」
「お前さん免許持ってんのか?」
「もちろん普通二輪免許持ってるぞ」
そんな会話をヴォイテクと交わす。
どうでもいいけどバイクの教習って20万くらいかかる。
かなり高い。
バイクのモデルはセロー250だ。
とは言っても設計図はないから外見は写真からイメージし、内部構造はVTWにある一般的なオートバイの設計図を参考にした。
ガソリンなどはもちろんないのでエネルギーは魔力である。
シェラさんによると、錬成術で生成する際の材料は自分の所有する鉱石などが素材になるらしい。
では材料が無ければ錬成術は使えないのか。
答えから言うと材料が無くても錬成術は使える。
どこから出てくるのかと言えば、自分の近くから素材を持ってくるのだ。
もちろん魔力消費はハンパない量になる。
金属などは地面に埋まっている事が多いから自分の足元とかから取るのだろう。
有機物は空気中の水蒸気や二酸化炭素から、あるいは地下、あるいは木々から取ると言ったところか。
思えば初めてバッテリーを作った時、一階で鉛素材が消えたとかなんとか騒ぎになっていた。
これからは自分で鉱石集めて作ろう。
ここで一つ問題がある。
作ったものをどうするのか。
その辺に捨てても誰も気にしないだろうが、もし核ミサイルとかを作って要らないからと捨てたりしたら、結構危ない。
その問題を俺は別空間に生成物を飛ばして必要な時に取り出すという方法で解決した。
簡易的に4◯元ポケットを作ったわけである。
発案者ヴォイテク、監修シェラのこの世界最新技術だ。
ちなみにヴォイテクやVTWのバッテリーは無くなる度に新しく生成している。
本人曰く、その方が飯を食うような感じがしていいからだそうだ。
ヴォイテクは機械なのか生きているのかどっちなのさ。
王城を出てから数時間。
日が西に傾き始め正面に見える山脈が赤く照らされていた。
「お、見えたぞ。あれが参謀長の言ってた山だな?えーと名前は確か…」
「ニューセンとか言ってたな。勇輝、敵兵との戦闘は一度平原におびき寄せてからの方が良さそうだな」
その方が一気に敵を殲滅できるからだとヴォイテクは言った。
なぜそのような思考に至ったか。
ニューセンの道は山と山の間にある谷を利用している。
谷を通過している途中の部隊に山から攻撃を仕掛ければ敵は逃げ場がないため後ろに引かざるを得ない。
通常の戦闘であればこの作戦が用いられるだろう。
だが、今回の場合敵の攻撃を一度弾き返すだけでは不十分なのだ。
敵主力を完膚なきまでに叩くには狭い谷ではなく平原で戦闘した方が遙かに目標達成の可能性は高い。
「よし、その作戦にしよう。だとしたらここで足止めできるような何かが欲しいな」
「ここに巨大な要塞でも築けば必ず止まるさ」
俺はヴォイテクを見つめた。
「そしてその要塞には火砲をみっしり配備して敵を迎え撃つと?」
「そういうこと。勇輝わかってんじゃん」
俺たちはニヤニヤ笑みを浮かべた。
築城に適した場所を俺たちは地形スキャンで確認しその場に到着した。
「あー!いたー!」
俺たちが要塞を作ろうとしたそのとき上空で有翼人のミューリーの声がした。
彼女は降りてくると俺たちの前に立った。
「こんなところにいたんだー、ずいぶん探したよ」
「なんでミューリーがここに?」
「俺たちの監視役ってところだろ?」
勘のいいヴォイテクがそう言った。
いや、勘がいいというのは間違いか?機械だし。
「まぁそんなところだよー。だって8万の部隊を1人で相手するなんて絶対できないもん。なんかあったら報告しろって言われてきたんだ」
「なんかってのは俺が敵と結託したりとかってことか?まぁ初対面の人間だし仕方ないっちゃ仕方ないよな…」
俺は後ろを向いてしばし黙る。
ここでカッコよく決める事こそ異世界転移した男のロマンという物だ。
「俺はレイセンを裏切る気はない。頼まれたことはしっかりこなす。俺たちの戦闘をその目に焼き付けるといい」
そう言うと俺は早速要塞作りを始めた。
決まり具合は55点くらいかな。
まだまだ研究が必要だ。
こんばんはひぐまです。
非常に拙い文章と自覚していますが、ここまでお読みいただきありがとうございます。
感想評価報告等いただけると今後の参考や励みになりますのでよろしくお願いします。
次回は10月31日(日)の23時に投稿を予定しています。