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(13)フラグ建てるのは漢のロマン

ギルドと王城の距離はさほど遠くはなかった。


城門が開かれて中へと入っていく。


ヴォイテクはもちろんVTWに乗って移動していた。


そういう事するからバッテリーがすぐ上がるんでしょうが(笑)。


まぁ魔法で作れるしメカの虫はカッコいいから許す。


城内は俺たちが一般に想像する西洋の城の作りだ。


とは言っても中まで実際入った事はないから、感覚は非常に新鮮。


入り組んだ迷路のような通路を抜けるとやがて大きな扉の前に出た。


自分の身長の3倍は軽く超えている。


ものすごく重そうだ。


「この先が謁見室だよ」


メイビスが説明する。


大きく軋みながら扉が開かれた。


「勇者殿!中へ!」


奥の方から声がする。


勇者って、そんなすげぇあれじゃねえっての。


中に入って見渡すと非常に広い空間となっていた。


俺たちがコツコツと歩く音がすごく響き渡る。


王女のリリアーナが姿勢を低くし、玉座のような場所へお辞儀をしたので俺たちも続いた。


「お父様、ただいま戻りました」


「その者が勇者であるか」


太くて重みのある声が響く。


この人物が王様だと一瞬でわかるような、威厳のある声だ。


「えーと。まぁ、一応はそうみたいです」


俺は空気に押されて間の抜けた返事をした。


まぁ「我こそが勇者だ!(ドヤァ)」みたいな事する気もないし。


「左様であるか。もっと近くに寄りなさい」


「は、はい」


「なかなか若いの…既に話は聞いておると思うが、ハノーバーとの戦争はいよいよ重大な局面を迎えておる。あいにく部隊の編成が出来てはいないが勇者殿の力を思う存分発揮し、我が国に平和をもたらして欲しい」


え、なんか勇者パーティみたいなのってあるんじゃないの?


ものすごいプレッシャーがのしかかる。


こちらはついさっきここの世界に飛ばされてきた身。


ところが彼らはその俺たちに国の命運をかけているらしい。


「大丈夫だ!世界最高の人工知能と最強の錬成師がこっちにはついてる!我々が負けることなど、ありえん!」


ヴォイテクがVTWのスピーカーを最大にして叫ぶ。


おい何してん!?


なんて言いたかったが、王様の前で喧嘩などできない。


俺は驚いた顔でヴォイテクを見るしか出来なかった。


とりあえず何言ってくれてんだよこの熊。


「おお、それは頼もしい限りだ。しっかりたのむぞ!」


(お、おい!何フラグ立ててんだよ!)


周囲からは錬成師?…とボソボソ聞こえたり人工知能ってなんだって聞こえたりした。


まぁそうなるわな。


人工知能どころか電子機器すら存在しない世界だ。


どうしたわけかヴォイテクが一番やる気になっているのが不思議である。


「早速なんだがおっさん。作戦を立てていきたい。参謀たちをすぐに集めてくれ」


おっさんって…誰に言ってんのこの熊は。


背筋が凍るような感じがした。


だが、王様はあまり気にする素振りもなく言った。


「うむ、いいだろう。参謀をここへ!」


王様がそういうと左右の兵士が素早く動き始めた。


この王様まじで仏だな。


てかノリいいな。


「おい、ヴォイテク。王様におっさんはないだろ!あとでバラバラにされるぞ?」


「この国の命運がかかってるんだろ?気にしないって」


王様優しいからいいけどこの熊に礼儀とかそういうものは微塵も無いらしい。




「それではさっそく会議を始めます」


参謀長が地図を開いた。


さっそくすぎて俺はかなりビビってる。


戦略ゲームさながらの会議が始まった。


キャラコンやらプレイスキルが要求されるようなシューティングゲームと違って戦略ゲームは得意な方だ。


「現在敵兵力の主力部隊およそ8万はロザンヌ平原の先の山脈を越えた位置にあるタリネという場所にいます」


「つまり山を越えれば一気にロザンヌ平原を抜けてここ王城に迫れるわけだな」


ヴォイテクが尋ねる。


「そういうことになります。ですが山脈は非常に険しいので侵入経路はある程度予測が可能です」


「それは一体どこなんだい?」


メイビスがヴォイテクをつつきながら聞いた。


どうもヴォイテクはその性格に反し女性からはいじられるようである。


「ここの北側の峠と南側の峠です。北の方はナスールと申しまして非常に狭い道ですが高低差がほとんどなく通行は容易です。南の方はニューセンと申しまして道幅は広いですが険しい道となっています」


参謀長が地形の説明を行なった。


戦略ゲームにおいては地形の把握は非常に大切な要素だ。


「現在動員可能な兵力は?」


「大体5000くらいかと…」


うわぁ、少なすぎだろ。


この国の主力部隊は既に壊滅してしまっている。


となれば取れる作戦は限られてくる。


だが、俺はこういう逆境プレイが大好きなのだ。


「ユウキ、何か考えが?」


シェラがこっちを見て聞く。


ニヤニヤし過ぎたのバレたかな。


もちろん頭の中には既に戦略が浮かんでいる。


「おそらくだが、敵の戦闘部隊は全て南のニューセンを通ってくるだろう。大部隊を動かすには広い道でなければ都合が悪いからな」


「ああ、でも…」


ヴォイテクが何か言おうとするのを俺は制した。


「ヴォイテク、言いたいことはわかるぞ。これだけの軍勢を支える兵站(へいたん)部隊のことだろ?そう、兵糧を運ぶには険しい道では困難。つまり効率よく軍を移動させるなら戦闘部隊は南、兵糧は北を通るのが都合がいい」


南北の峠の間には200kmほどの距離がある。


が、広いロザンヌ平原は両部隊が会合するのに持っていこいだ。


「そこでこの国のすべての兵力は北のナスールに配置してくれ」


「すべてだと?」


「そんな無茶な!」


参謀たち驚いてが次々に騒ぎ出す。


コイツら作戦立てた事あるのか?


参謀長が他の者を制してから尋ねた。


「ニューセンの部隊はどうするつもりなんだ?」


「俺とヴォイテクで対処する」


俺はヴォイテクを手にして言った。


「馬鹿な!2人で対処などできるわけが、」


「できる、だろ?」


「もちろんだ!」


ヴォイテクが呼吸を合わせる。


そして揃ってニヤッと不敵な笑みを浮かべた。


参謀たちは皆驚いてドン引きする。


「俺たちは気にしなくていい。きっと敵を粉砕してやる。だから君たちは自分の任務に専念して欲しい」


俺はそう言い残すと参謀たちを放って早速ロザンヌ平原に向かった。


こんばんは

ひぐまです

ここまで読んでいただきありがとうございます

次回は10月30日(土)の23時に投稿予定です

感想、評価、ご指摘等頂けたら幸いです

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