(9)翻訳蒟蒻っていいよね
「ˈdʌblju(ː)ɒtiː ɛɑɑː juː ˈdu(ː)ɪŋ ?」
女剣士が話しかけてくる。
が、もちろん日本語ではないから何を言ってるか分からない。
しかももともと友達少ない俺はコミュ症なのだ。
「おい、ヴォイテク。なんて言ってるかわかるか?」
「うーん、該当データがないなぁ…全体としてはヨーロッパ系に近いが…最初の方は東南アジア系に近いんだよなぁ」
どうしていいか分からない。
とりあえず日本語と英語で話しかけることにした。
「We are Japanese.We get lost.俺たちは日本人。道に迷った」
「…?」
あー、やっぱり通じないのね。
俺たちは様々な言語で会話を試みたが全く成立しない。
どうしようもなく困っていると、女剣士に後ろから魔法使いっぽいお姉さんが現れた。
髪は茶色で、年齢は俺より5つくらい年上だろうか。
魔法使いっぽいお姉さんが何かを呟くと彼女の持ってる杖が蒼く光り出した。
おっ?青色LEDってこんな演出にも利用されているんですか?
「通訳の魔法を使った。言葉の壁は無くなったはず」
ってあれ、この人日本人だったりするの?
とても自然な日本語が聞こえてくる。
俺はもう一度言った。
「俺たちは日本人だ。道に…というか世界に迷って困っている」
今度は通じたらしい。
女剣士が答えた。
「なるほどね。そうなんだ…でも日本ってどこだい?」
「え?日本を知らないのか?」
今や世界に日本を知らない人はいないと思い込んでいた俺はこの言葉に驚く。
「率直に言うと貴方をここに召喚したのは私です」
茶髪の魔法使いっぽいお姉さんが言う。
「あのーどういう状況なのか全く分からないんですが…」
「そりゃそうだよねぇ…」
女剣士が苦笑する。
俺たちはここがレイセンという国であることや、レイセン王国が勇者の召喚を行なっていることなどたくさんの驚く情報を聞かされた。
どうやら俺たちがこんなところにいる理由はレイセン王国の事情らしいが、この国の召喚術は元の世界に帰還する方法がないらしい。
お姉さんが美人じゃなくて魔女のお婆ちゃんとかだったら確実にブチ切れ案件だねこれ。
以前ヴォイテクと話した異世界に行っても帰ってこれなければ云々の件は現実となったのである。
あんなフラグ立てなきゃよかった…。
「おい、俺たちこれからどうすんだ」
答えが出るわけがなかった。
「いまあなたたちに出来ることはレイセン王国のために協力すること。元の世界に戻る魔術はちゃんと研究する」
魔法使いっぽいお姉さんがヴォイテクを珍しそうに眺めながら言った。
「戻るって言っても年寄りになってからじゃ困るんだけどな」
俺がそう言うとヴォイテクが吹っ切れたように本音を吐いた。
「なんで世界一の人工知能VTWをどことも知らない国のために使わにゃならねぇんだよ。できればとっととここで帰還術を研究してもらいたいもんだぜ」
確かにヴォイテクの言うことも分かる。
彼女達にすれば召喚でも、俺達からすれば拉致同然なのだ。
だが、覆水盆に返らず。
「ヴォイテク、無理を言ってもしょうがないよ」
魔法使いっぽいお姉さんは一度下を向き、落ち着いて答える。
「そう思うのも仕方ない。完全に私たちの都合だから。その代わりしっかりと面倒は見るから安心して欲しい」
俺たちは今ここでできることをするしかない、そういうことだ。
まぁ俺らは勇者とはかけ離れているとは思うけど。
「ところであれ、止めてもらえないかな」
ヴォイテクが上を指差した(厳密に言えば指はない)。
見ると翼人がまだVTWを追いかけ回している。
「あ、忘れてた…」
こんばんはくまくまです
拙い文章ですが読んでいただきありがとうございます
感想や評価、誤字脱字や文法誤りの指摘等いただけると今後の励みや参考になりますのでぜひお願いします
更新ペースやや落ちます
申し訳ないです
10月23日(土)の23時に次回投稿を予定しています
今後ともよろしくお願いします