堕とす者と落ちた者
まず最初に3ヶ月も投稿を空けてしまい申し訳ありません。
作者の都合もありますが、お詫びとして今回の話は1000文字程増やさせて頂いたのと、自責の念から電柱にダッシュで頭から突っ込んで来ますのでお許し下さい。
しかし、文字数が増えた分文章も多少拙くなっていると思われますがお手柔らかに。
……長い……長すぎる、体内時計上ではとうに前回の記録は更新している。
ここまで記録の更新が嬉しくないこともなかなか無いな。
しかし、このままじゃいくら疲労を感じない身体とは言え心的疲労でぶっ倒れるんじゃなかろうか?
「なぁ、から――」
「知らないっつってんでしょ!?」
まだ何も言ってないんだがな。
「どうせ「いつになったらこっから出られるんだ?」とか聞く気でしょ?この会話何回目よ?」
今回で3回目位か?
「4回目よ!」
そうかそうか4回目だったか。
で?ここからはいつになったら出られるんだ?
「さっき言ったじゃない!」
良いじゃねえか、減るもんじゃあるまいし。
「あんたが私に同じ質問をする毎に私のSAN値はすり減ってるけどね」
分かったよ。これっきりでこの話題のことは聴かないから答えてくれ。
「……はぁ。さっきもその台詞を聞いた気がするけど退屈なのはお互いだしまぁ良いわよ。んで?いつになればここから出られるかだっけ?結論から言えば分からないが答えね。理由はさっきも言ったけど、この橋は入る毎に距離が変わるのよ。つまり10京キロの時もあれば、1ナノの時もあるってこと。分からないのはそういうわけよ」
つまりは、今回は運悪く、その長い方を引いちまったってことか?
「まぁ、そういうことでいいわ」
でも、お前の能力的な――
「できない」
飛んで――
「いけない」
レバー入れ大ジャンプは?
「橋壊す気?私達問答無用で地獄行きになるわよ?」
どうやらズルは出来ないらしいな。残念ながら今まで通り地道に歩いていくしか無いようだ。
だとするなら一つ気になることがある。
「なぁ、鴉」
鴉は容姿相応の歩みを止めること無く仏頂面を貼り付けた顔をこちらに向け、
「……なによ」
暗澹とした面持ちで鴉は振り向いた。なんでこいつはいつもこんな顔してんだろうな、なんならピリピリした気配が段々増してきている気がする。
見た目通りにニコニコしてりゃ可愛いのに。
「気になったんだが、お前が言ってたもう一本の、なんつったか……あぁ、近道になる可能性がある道じゃない方の道ってのはどれ位の長さなんだ?」
「あぁ、あれね。えーと?確か……ひゃ――きゃあっ」
うおっっ
強風のような見えない力が3メートル程俺を後方へ突き飛ばした。――鬼だ。
どうやらあの鬼は俺から鴉を遠ざけたいらしい。鴉から3メートルも離されたんだ、多分そういうことだろう。
さっきまで何もなかったからかね。
懐かしさというか嬉しさというか、なんというか、なんとか暇つぶしが出来そうだけど絶対飽きるであろうレトロゲームを見つけたような気持ちになってしまうのはこんな状況じゃ仕方のないことなんだろうな。
「あーもう!しつこいっての!今回で何回目よ?あいつら見た目はバリエーションある癖にやることは一辺倒なのはなんなの?」
といった感じで鴉は愚痴りつつ、ドスドスというよりは体重が足りないせいでポスポスって感じの足音を立てながら鬼のいる方向へ歩を進めていった。
あんな奴に倒される鬼たちには同情を禁じえないな。俺だったら1ヶ月は引き籠もるね。
さてと、今回は何分で終わるだろうか?
確か……前回が大体10分だろ?んでもって今回は飛べない――うおあっっっっっ!?
なにかに足を掴まれている。
いや、何かというよりは十中八九鬼で合ってるだろう。
鬼の奇形なゴツゴツした手で掴まれている部分が怖いというよりは気持ちが悪い。瘴気のようなものでもにじみ出てるんじゃなかろうか?
いやはや、まさか鬼どもが連携を取るとは……あいつらにも脳みそ的な何かは有ったようだ。
もしくは上位個体みたいな奴なのだろうか?……いや、今考えることじゃないな。
後で鴉に聞くとして、今すべきはこの状況からの脱出か。
……ま、いいや。
「おぉーい!こっちにも鬼いんぞ!なんか脚引っ張られて――」
「うっさいわね!こっちだって戦ってんのよ、ちょっと待つくらいしなさい!ああぁっもうっ!うっざいわ!」
飛べないことにムカついてるらしい、なんだか攻撃が荒いように見えてくる。
まぁ、殆ど見えやしないんだが。
にしても羞恥心を捨てておいてよかった、ここに来たばかりの俺だったら多分……いや絶対あいつに助けなんて乞わないだろうしな。
なんせ一回首を切られかけた仲だ。
もしかしたら羞恥心って案外いらないのかもな。
実際アダムとイブとかだって禁断果実……確かリンゴだったか?あれを食べるまでは羞恥心なんてなかったらしいし。
あれ?アダム達がいたエデンとかいう所は天国って認識であってんだっけ?
ふぅむ……この世では神話とか聖書に興味がなかったからなぁ。
色々知ってたらこの殺風景この上ない風景にも彩りがあったはずだし……こんなところで知識の有用さを再確認させられようとは。
来世ってのがあるのかは知らないけど、少なくともこの風景が少しは彩りを持つような人生を送りたいとこではあるな。
……ところでいつまでこいつは俺の脚を持ってるつもりなんだ?
微妙に力が強いせいか足首から先が壊死しないか心配になってきた。
それ以前になんか掴み方というかなんというか色々気色悪いし……どうしたもんか。
一番の謎はこいつがなんで俺を掴むだけで引っ張らないかだ。
いや、脚にぶら下がられているので一応引っ張られてはいるのだが、こいつが本当に引っ張ろうとしたら俺の踏ん張りなんぞ雀の涙の塩素並だ。
もしかしたら連携なんてして無くて只近くに気の良さそうなお兄さんが居たからじゃれているだけなのかもしれない。
まぁ、それなら可愛く思えな――いな。うん。
一回鴉並みに可愛くなってもらってから再度来て欲しい。
凶器を持ってなければ喜んで抱き上げてあげよう。
にしても身体すら怖くて見てないってのに、息遣いが聞こえるだけで気持ち悪い顔をしてるのがなんとなく解るってのは超常的な何かが働いてるのかね。
やっぱりハイドって例えは的を射ているのかもしれない。
段々落ちるのに耐えるのも心的に辛くなってきた。
……まだだろうか?鬼に脚掴まれてんの気持ち悪いんだが?
流石にこの状態が続くとヤバそうだ。
「あのねぇ、こっち見て苦戦してることすら解んないの?」
どうやら聞こえていたらしい。
ひょっとしたら死神の耳って地獄耳とかって名称がついてたりするんだろうか。
苦戦と言うが、こっち振り返って喋ってる時点で苦戦してるようには思えないな。
「ほっ!……そもそも戦ってる途中のやつに普通話しかけたりする!?」
問答無用で切りかかってくるやつから普通なんて言葉が出るとはね。
俺は驚きが隠せないな。
「あれはあんただからであって、私だってちゃんと話し合う位出来――きゃっ!
あーもう!うっざいわよ!今人が喋ってるってのに攻撃しないで――ひゃっ!
……細切れにしてやるぅぅぅ!」
……まぁ、うん、なんであれ殺る気が出たのなら良いか。鬼って本当に性格悪いんだな。
あと鴉に何度も思ってることなんだが、なんであーやってからかわれている姿は年相応に愛らしい様相をしてるのになんで中身はああなのかね?
閻魔様とやらがギャップ萌えを狙ってるのだとしたら萌えないし、下手したら笑顔でガソリン掛けながら燃やされかねないような性格にはしないで頂きたい。
「あーもうっ、言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!はぁ…………あーもうっわかったわよ!10秒待ちなさいすぐそっち行ってあげるから、これいいでしょ!?」
沈黙を何と勘違いしたか解らないがどうやら急いでくれるらしい。
これで前の首切り落とそうとしたことはチャラにしてあげても良いかもしれない。
結果的に切られなかった訳だしな。
しつこい男は嫌われるとも言う。
……まぁ手遅れな気はするが。
にしてもこうやって何かを待ってる時の時間ってのはなんでこんなに長――うおわっっっっっ!?
遂にしっかり引っ張ってきやがった。
……んん?本当に引っ張ってきたのか?じゃあ俺はなんで耐えられている?
流石にさっきのじゃれてきたって説が当たっていたって事はないとは思うが、だとして、どういうことか全く解らない。
やはり鴉の動きを目で全く追えないあたり、あの世に来たことで生者の枷から解き放たれた的な感じで俺が強くなった訳ではなさそうだ。
「よぉーいしょっと……よし倒せたわね。……なんかムカつくしみじん切りにしておこうかしら」
どうやら向こうの戦いが終わったようだ。なんだかホクホクしながら鬼の死骸をミンチにしている。
この距離なら1秒とかからずこっちに着くだろうし、足を引っ張るのがこの強さなら俺が橋から落ちることもなさそうだ。
「お――」
「解ってるわよ!2秒待ちなさい、ストレス溜まってんの解るでしょ?」
こりゃ刺激したらまずいな。大人しく待つとしよう。まぁ2秒だけど。
しかし人の首は切るのに約束は守るってのはよく解らんな。
……あぁ、なるほどそりゃそうか約束破るってことはつ――んなぁっ!?
なんだ!?いきなり鬼が思いっ切り引っ張り出しやがった。
本領発揮ってか?主人公の見た目じゃねぇだろ!
いや違うな、やっぱり思いっ切りじゃない、俺がぎりぎり耐えられない力で引っ張ってんのか?
何で段階的に引っ張ってんだこいつは?
訳解らん。解ったとしても教えてくれなくて結構だけどな。
――あ、これ落ちるわ。
「からすぅぅぅぁぁぁぁぁ!」
地面の感覚がなくなる。
まさか壁を垂直移動した後に橋から自由落下するとは思わなかった。
心の準備位させて欲しいもんだ。鬼がゆっくり引っ張ってたのは……まぁ多分違うだろ。
絶叫アトラクションとして売り出したらいいんじゃないか?
鬼がニタニタと笑っている。
……あぁ、やっぱりこいつら性格悪いわ。
まさか鴉が俺を助けるギリギリのタイミングで落とすとはね。
最後に落ちながら見えた鴉の悔しそうな顔は流石の俺でも可愛そうになった。
もう下を覗き込んでいた鴉も見えないほど落ちている。
橋の下が何か位聞いときゃ良かった。
あの世産の重力を体で感じつつ俺の意識は暗転した。
最近、マックのポテトを頼むときに「揚げたてで」と頼むとあっつあつのポテトが来てくれることを学び、ポテトを食べる頻度が増えてまして。
やはりあのポテト何かしら混入してるのでは?等とお世話になっておきながら仇で返すようなことを考えつつ、やっぱりあっつあつのポテトのLをクーポン使って安くしつつ買っている今日この頃です。
後、紅茶はリプトンの茶葉を使って自分で淹れてます。
ついでで良いので、1でも良いので、評価の星下さい。