世界の果てと落ちた者
短めですがご勘弁を
「そ、壁。それもめっちゃデカイやつ大体200000000キロ位だったかしら?」
それは壁って言っていい代物なのか……
つーか思ったんだがそんなでかい壁何で出来てるんだ?
駅は見慣れた近所の駅だからなんとなく分かったが、そんなでかい壁俺は見たこと無いぞ?
「さっき話したじゃん。あんたの記憶によって背景、まぁ模様もかしら?と名前が変わるだけだって。だからあんたには見えにくくて名前も特に無いんでしょ。そもそも天国に材料なんて無いわよ。元からそこにあるだけ。私もよく分からないけどさ」
そうかい。で?ここだかそこだかにある壁を俺達はどうすりゃいいんだ?
「登るのよ」
数日歩いたあとに200000000キロ階段を登ることになるのか……そろそろ足に無いはずの痛みが来そうだ。
「何言ってんの?壁って言ったじゃない階段なんて無いわよ」
んん?じゃあエレベーターでもあるのか?まぁ、そっちの方が有り難いんだが……
「いや無いわよ、無いに決まってんじゃない。マジで何言ってんの?なんなら見てきたらいいじゃない。目の前にあるんだからさ」
分かったよ、百聞は一見に如かずとも言うしな。
自分の目で見たほうが早いしこれ以上質問攻めして鴉を怒らせるのは愚策だ。
見えないが……いや、触ることぐらいは壁って言ってるんだしできるのか。案内してくれると助かるんだが。
ただ……じゃあ何で登るってんだ?こちとらロッククライムはしたことは無いぞ。
「はいはい。あーもうちょいもうちょい」
さっきの距離がわかるやつはどうしたんだよ。
「ん?あ、あぁあれね。そんなに使い勝手が良くないのよ。あ、もうちょい前。いや普通に歩きなさいよそんなすり足じゃ全然近づいてないわよ」
はいはい…………
ガッ
うぉあっっ――がっ
……盛大にコケた先に壁があったようだ。俺は額を見えない壁に打ち付ける形で止まっていた。触覚的には壁があるんだが視覚的には浮いてるとは……変な感覚だな。
鴉は何もないところでコケた俺に対して大爆笑した上で罵倒してくると睨んでいたのだが、どうやら一周回って引いているらしかった。
なんというか……笑うでもいいからせめて何かコケたことに対して反応をくれないか、この永久凍土を思わせる膠着は精神的にキツイものがある。
「えーとさ……私目線ちゃんと歩いたかと思ったらいきなり壁に向かってダイブたんだけど……何やってんの?頭打ち付けても天国にはいけないわよ?頭の中が天国なの?」
反応をくれとは言ったがこんなに辛辣なのが来るのか……こいつの見た目も相まって威力が5割増しくらいにはなっている。
まだボクサーのジャブ食らってた方がマシな気がするな、幼女の冷たい罵倒がここまでキツイものだったとは。
鴉は呆れたような声で、
「はぁ……んで?何もないでしょ?」
……確かに何もないな。ガラスみたくスベスベした壁があるだけだ。これがずっと続いてるんだとしたらロッククライムも出来ないと思うんだが。
「しないわよ。まぁできるんだったらやって欲しいとこだけど」
お前は普通人類に200000000キロの垂直移動を期待してたのか……出来るわけ無いだろ。
「で?どうやって行くんだ?」
鴉は苦い顔をして、
「えぇと……言わなきゃ駄目?」
んん?分かんなきゃ登れないだろ。
諦めたような顔をした鴉は、
「はいはい、分かりましたよ。言えば良いんでしょ?言えば」
そんなに言いたくないようなこと俺にやらせようとしてんのかよ……まぁ死んでるんだし別にいいけどさ。
「あんたは何もしなくていいわ。私があんたを運ぶから」
何もしなくていい?運ばれるってことは一瞬コウノトリみたく運ぶのかと思ったが袋はないしな……どうやって運ぶんだ?この壁には何もないんだろ?
「はぁ……おぶるのよ」
俺が鴉を?まぁ、軽そうだし別にいいけどさ。
「違うわよ、んなわけ無いでしょ?あんた飛べんの?それならいいけど。出来ないでしょ?だからその逆、
私があんたを背負うの、アンダスタン?」
背負う?確かに俺は飛べんが、あー……どういうことだ?
鴉は不機嫌そうに、
「さっき言ったじゃない。もっと噛み砕かないと駄目なの?面倒臭いわね」
「いや、言われたことの意味は理解してるんだ。ただお前じゃ俺を背負えるようには見えなくてな」
なんせ、見た目が小学生なのだ、俺の足を抱えられるかすら怪しい。それが年齢的に大学生である俺を背負おうと言っていて理解が出来ないのは当たり前じゃないか?普通は逆だろう。
まぁ、ここに来てから意味のわからないことばっかりだが。
「はぁ?出来ないことをやるなんて言わないわよ。馬鹿なの?」
出来るんなら別にいいけどさ……で?なんでお前はしゃがみ込んでるんだ?
「おぶるって言ったでしょ話聞きなさいよ、そして早くして」
あ、やっぱり俺がおぶられるのか。
まさか幼女におぶられる日が来るとはな、しかし他に手は無いのだろうか誰も見ていないと分かっていても羞恥心が凄い。
「無い、早くして。切るよ?」
……どうやら羞恥心はここにおいていかないと天国にはいけないらしい。
私的地獄のオアシスである文芸部の作品を作らなきゃなので少々休みやす。