出遭いと落ちた者
急いで書いたので拙く短いですが、お手柔らかに。
ドコッッ――
ぐっ―――ぐぇっ
一瞬足が見えたことからどうやら蹴り飛ばされたらしい
取り敢えず体を起こし、蹴り飛ばしてきたやつの方を向きながら俺は、
「なにしやがんだ!いきなり思いっきり蹴りやが―――え?」
何だこいつ?子ども?よくこの身長で俺の顔面蹴り飛ばせたな。
身長からみて10いや、だいたい12歳くらいか?
着てんのは……確かポンチョとか言ったか?真っ黒なそれを着てるせいで真っ白な風景からとても浮いている。
いや、特筆すべきはそこじゃない、右手に持っているのは鎌……か?
でかいな、こいつの身長の二倍位ある。ゲームによくある武器みたいな形だ。
……この世では季節違いのハロウィンでもやってんのか?
つーかこいつなんて言った?仕事を増やすなって言ったのか?仕事?こんな小さい子供が?
……あぁ、成程、子役かなんかなのか。だとすれば高い身体能力にも説明はつくのか?
死んでからも仕事のことを考えるなんて可哀想なやつだな。
きっと生前は多忙だったんだろう。同情するよ。
つーことは、あの服装ってなんかの衣装なのか?
と勝手に考察していると、怒っているらしい少女は、
「なにしやがる?こっちの台詞よ!あんたなにしれっと私の仕事増やしてんのよ!」
は?何いってんだこいつ?記憶はぼやけちゃいるが俺は少なくとも芸能関係の仕事にはついてない。誰かと勘違いしてんのか?
すると、アングリィな少女は、
「生前の話なんかしてないわよ!あたしはあんたの持ってるそれのことについて話してんの!」
「これのことか?」と俺が少女に切符を見せると、少女は即座に俺の手から切符を取り上げビリビリと破きやがった。
少女の「これでよし」という一言で我に返った俺は、
「お前なんなんだよ!」
ドロップキックされた直後に言う台詞なんだろうし他にも聞くことはたくさんあった筈なのだが、まだ頭が混乱してるらしい。
何故か不思議そうにこちらを向いている少女は、
「へ?気付いてなかったの?この格好で?あんたなんか変な宗教に入ってたりした?」
まじで何いってんだこいつ?宗教?こいつ電波系ってやつなのか?というか質問を質問で返さないで欲しいんだが。
「あぁ、それはごめん。いやさぁ、まさかこの格好で気付かない人なんていないと思ってたからさ」
は?格好?ポンチョってことは軍隊関係の人なのか?
「違うわよ!こんな小さい兵隊がいるわけないじゃない、何いってんの?」
じゃあなんだって言うんだよ。ポンチョなんて軍隊の人くらいしか着ないと思ってたんだが。
「死神よ‼」
「はぁぁ?」
自然に出てしまった。いやまぁ、あんな事言われたらそりゃ誰だってこんな反応するだろ。
にしてもこいつマジモンの電波系ってやつなのか?
いや、この場合中二病のほうが正しいか?
つーか死神ってあの骨に黒いボロ絹被せたみたいな見た目のやつだろ?それこそこんな小さい死神がいるわけないと思うんだが。
少女は溜息を吐いてから面倒臭そうに、
「実際にそうなんだからしょうが無いじゃない、勝手に人間の考えを押し付けないでほしいわ。何なら証拠見せたげよっか?」
証拠?死神のことなんぞ何も知らないんだが……
「んなことはさっきの会話で知ってるわよ。こうすりゃ誰にだって人間じゃないことくらい分かるでしょ?」
と言いつつ少女は空へ浮いた。浮いた!?浮いたと言うか空中で止まってるのか?少なくとも地面に足をついてはいない。……まじで人間じゃねぇのか、まさか電波を受信してる方じゃなくて発信してる方だったとは、……いや、死神は電波出さねぇか?
少女は浮いたまま、
「これで信じたでしょ?っていうかここどこだと思ってんのよ、あの世がある時点で死神もいるでしょ?なんでここまでしないと信じないかなぁ」
それもそうか……どうやら本当にこいつは死神らしい。
まぁ、嘘かもしれないが、嘘だとしてもこいつが死神以外に何だったら嘘つくのかが分からないってのもあるけどな。
「お前が死神だってことは理解した、ただなんで俺の持ってた切符を破きやがった?」
死神だとしても意味が分からん。
「ん?何?お金のこと?がめついわねぇ。はいはい、これでいいでしょ?」
と言って5円をコイントスの要領で返してきた。
……何だ?ムカつかせたいのかこいつ?いや、こんなことで子どもにムカつくほど俺は大人げなくはないが。
「ん?なんか文句でも有るの?黙りこくっちゃって。さっきの切符、5円であってるはずだよ」
いや、そういうことじゃないんだが……こいつ俗に言う天然ってやつなのか?
あれ?電波と天然の違いってなんだ?……いや今はそれを考えてるときじゃないな、
「あー……その、俺が言いたいのはだな、なんで俺の切符を破ったのかってことで、お金の話は一切してないんだよ」
「んん?じゃあ、5円返してよ」
がめついのはお前のほうじゃねぇか!
「弁償しろってことじゃないんでしょ?じゃあ、返したっていいじゃん」
何なんだこいつ……あぁ地獄の沙汰も金次第だっけか?それのせいなのかもしれないな。世知辛いなぁ。
「わかったよ、5円返すから取り敢えずなんで切符を破ったのか教えてくれないか?」
俺から5円を受け取った死神は、
「ん、はいどーもー。破った理由?あぁ……ちょっと待ってね」
と、どこからか広辞苑より分厚そうなバインダーを出した。そう言えば仕事とかなんとか言ってたな。
「あったあった、あ、えー先に一つだけ聞くけどあんたなんか体に異常ある?」
体に異常?死人に体調も何もないだろ……
「無いってことでいいのね?」
「記憶がぼやけてるってのはそれに入んのか?」
一応異常ではあるからな言ったほうがいいだろう。
「何?あんたそんな年くってたの?そんな事書いてないけど?」
「ちげぇよ、ここに来てからなんか色々と思い出せねぇんだよ」
そこまで年くってるようには見えねぇだろ……多分。
「へぇ……そんなこともあるんだ。……ちょっと待ってて」
と、分厚いバインダーをペラペラとめくり、数秒と経たず目当てのページを見つけたらしい死神はページを読みつつ、
「あぁ……と、えー別に行ってもいいわよ、勝手に破って悪かったわね」
えぇと?こいつ今謝ったのか?最早行ってもいいことよかこいつが謝っていることに驚きを隠せないんだが。
「なにアホ面晒してんのよ」
今は罵倒に付き合っている心の余裕はない。
「なぁ、本当に行ってもいいのか?」
死神はバカを見るような目で、
「何いってんの?ここで嘘ついて私になんの得があるってのよ」
それもそうか……ここで止まってても仕方ないし行っていいならさっさと行くとするか。
と俺が券売機の方向へ体を向けると、
「じゃあね」
と、死神
返さないのもあれかと思い俺も、
「じゃあな」
その2秒後死神は「じゃあね」と同じ声のトーンでこう言った。
「地獄を楽しんで」
明日は平日ということで地獄(学校)へ行くので、週末に出せるようがんばります。