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死神 鴉の仕事姿  作者: 小鮫 流治
12/15

類似品と落ちた者

明けましておめでとう御座います。

今年もよしなにお願い致します。

今回も色々あって千字ほど増量しました。

畢竟拙いですが、そこはご愛嬌ということで。

夢オチというモノを知っているだろうか?

知らない方のために説明しておくと、物語の最後辺りに登場人物やらの誰かが目を覚まし、今までの殆どが夢であって、非現実的な事象はなんにも無かった事になるという物語のオトし方だ。

豆知識を入れておくと、彼の有名な手塚治虫大先生はこの手法が大嫌いだったらしい。


とはいえ、今現在の自分の状況を考えると夢オチの方がありがたい。

戻る場面はそうだな……会社をクビになる前なんてどうだろうか?

クビになるところからが夢であって、起きたら家でうたた寝をしていた。みたいな。

悪夢にしては酷すぎる内容だが起きれば問題もない。

全て夢なのだから。


いやさ、そもそも短期間のうちに何度も重体になりかけたり、それが即座に治癒している時点で夢でなければおかしいんだよ。

そうでなくちゃ歴史の物理学者達は涙目だ。

質量保存もあったもんじゃない。


さて、そろそろ目も当てられないこの状況から目を覚ますとしようか。





………………やはりと言うかなんと言うか、どうやら胸を刺された位で俺は目を覚まさないらしい。

無情にも、俺の目の先には見慣れたこの世産の白い天井があった。

そして、窓の向こうはまたもや見慣れた夕焼けがビルと言うほど高くない建造物に沈むところだった。

畳み掛けるように、ふとドアの方向を向いてみると示し合わせたかのようなタイミングでドアが開き、彼方が入ってきた。


「あ…………和正ぁ……」


「おはよう、彼方」


彼方が抱き着きながら泣きじゃくる。

なんというか……癖になりそうで怖いな。

何がとは言わないし、癖にする気は毛頭ないが。

しばらくすると泣き声がしゃっくりに変わり、何を思ったのか離すまいという感じに一層強く抱きしめられた。

しゃっくりしながら顔面を俺の腹部に擦り付けている。

なんだろうかこの可愛い生き物は。

生物の成し得る可愛さを超越していることは確かなんだが。

よく考えたら、顔が見えないのに可愛いって解るのは生物の本能的サムシングがこの人を可愛いと認識しているのでは?


駄目だ。これ以上抱きつかれたら頭がどうにかなっちまいそうだ。

いやまぁそれもいい気がしてきたな。

……あぁなるほどこれが尊死ってやつか?

そんなことを思いつつ彼方のつむじを見つめていると、満足したらしい彼女は泣き腫らした顔をガバっと上げ息を吸い込んだ、


「っ………………」


そして固まった。

何かお小言を言おうとしていたんだろうが、ちょうど彼方の泣いたあとの残る目が俺の皿にしていた目とバッチリあって恥ずかしかったようで、息を吐きだしつつゆっくりと目元の位置へ逸らし、耳がどんどん赤くなっていくのが見える。

近くに穴がなくて良かった。あったらすぐさま穴の中に向かって可愛いという感情を大音声で吐き出していたところだ。

危ない危ない。


「えぇっと…………ごめん彼方」


二歩ほど先で俯きつつ顔の火照りが収まらない彼方に俺はそう謝った。

まだ言われる前ではあるが、お小言を言われた時はなるべく早く謝ってしまったほうがお小言が短くて済むからな。

……いやまぁ長くてもいい気はするけど。彼方に負担をかけないのが先決だ。

なにより俺まで恥ずかしくなって、病室で膠着状態になるという、あまりよく解らない状況になる前になってしまったら俺にはどうしようもない。


「あえ?……あぁうん。良いよ許してあげる。でももうしないでね?」


彼方はしゃっくりをしつつ言い終わると、泣き腫らした顔でつくった柔らかな笑みをこちらへ向けた。


「はぁぁぁ、良かったよぉぉぉ本当に良かったぁぁぁ」


と思ったら唐突に間合いを詰めて先程の体勢に戻りこう言った。

今回は泣いている訳では無いらしく、ただ俺の存在を確認したいと言った感じだろうか?

まぁどんな理由だろうと絶世の美女に抱きつかれて嫌な気分は毛頭ないので、俺は数分ほど地蔵になることにした。


彼方は今度こそ満足したようで、ニッコニコな笑みを浮かべた顔を俺から離し、さっきのとはベクトルの違う暖かい沈黙を堪能すると、いつの間にどちらからか、俺が寝ていた時に起きたことやらをゆったりとしながら駄弁っていた。


ふと日がどっぷりと沈んだ街を見つつ寂しげに彼方は、


「それじゃ私はそろそろ帰るね。まだまだ一緒に居たいことは山々なんだけど流石に病院に迷惑掛けるわけにもいかないし、ね?」


俺としては退院まで一緒に居たいんだが、まぁそんなこと言えば怒られることは火を見るより明らかなのでそんなことはせず、了解の意を示した。

彼方はしょんぼりしつつもどこか嬉しそうな顔で部屋から去っていった。



さて、答え合わせだ。

答え合わせといっても別にそんなに大層なことをする訳じゃない。

ただひたすらに、()()()()()()()()それだけ。


俺は駄弁ってる時に彼方から「夜更しはしないように」と釘を差されつつも渡されたスマホの電源を入れた。

起動画面が酷く長く表示され、ロック画面に切り替わる。


絶句したね。

別に何か言っていた訳ではないが、絶句という表現が正しい程に俺は息も忘れそのロック画面を見つめていた。

俺はどんな顔をしていたんだろうな?

でだ、なんて書いてあったと思う?

感の良いやつなら解るだろう。



()()()()



俺のスマホは日付の欄をそう表示していた。

年も変わらず俺が綱無しバンジーから起きた日付が網膜に写っていた。


時間が――戻っていた。


予感はしていたし、大方予想もついていた。

でも準備してなかった。

逆に誰ならそんな突飛なことに対して身構えられるってんだ?

それこそ漫画の主人公にやらせておけば良い。

俺じゃあ役不足だ。


…………とりあえず寝よう。

どう考えてもこの状況がなんとかなるとは思えないし、もしかすると起きたら夢の中で夢を見ていたとかいうくどい夢オチになるかもしれない。

望み薄だが。

でも日付を見間違えていた可能性ならある程度ある。

……なんであれ今何を考えてもしょうがないか。


混乱し続けている思考を一旦通行止めし、座ってた姿勢から上半身をベッドに倒す。

寝て起きたら腹部に穴が空いてたら最高だな。

そんなことを思いつつ寝逃げした。


何故だろうか。

どうやら俺の目はまだ疲れているらしい。

何度見ようと、何度目をこすろうと、俺の目にはスマホが五月八日を映し出しているように見えた。

スマホが正常なら昨日から正常に時間が進んでいた。

シュレディンガーの猫よろしく一度確定した現実というものは覆らないらしい。

猫は死んだままのくせして、俺は生き返ってるんだがな。


とりあえず感情を無視した上で状況を整理するか。

混乱したままだと彼方に会う時に変なことを言いそうで怖い。


まず、毎回病院で目が覚める訳だから、俺がトラックの幌にダイブして五月三日から四日間寝るまでは共通なんだろう。

そこから数日ほど入院して退院。

そしてダンプに轢かれるなり、化物みたいな通り魔に刺されるなりして時間が戻ったという感じか。

ふうむ?前言撤回、どうやら俺の目線ではシュレディンガーの猫も生き返るようだ。


まぁ、ダンプに轢かれた時も戻ったのか、刺された時に戻ったのかは解らないが、ダンプに轢かれてあんだけ軽傷なんだ、十中八九、二回は時間が戻ってるだろう。

時間を戻しておいてあれだが、会社を辞めても人間を辞めたつもりはない。


頭がおかしくなった人が自身の頭を打ち付けるのは、現実を受け入れたくないと思っているってのはよく分かった。

まぁ頭を打ち付けたりなんてしやしないが。

痛いのは嫌いだ。


さて?どうする…………いやまぁどうしようもないという事は既知なんだがな。

少なくとも今はこのまま俺が退院するまで待つしかあるまい。

今まで通りならそれまでは平和なんだ。

問題はその後なんだからな。

なんだかインフルエンザワクチン注射をすると親に言われたときを思い出すな。

退院した後になんの問題もなく生活が送れたなら御の字だが、今までを鑑みるにそうはいかないと考えたほうが良さそうだ。

慌ててもしょうがないか。

不幸中の幸いというべきか対抗策を考える時間は多めにある、ゆったりと帰宅経路でも考えつつ病院生活を過ごすとしよう。


前回と同じく薄味の朝食を平らげ、診察室へ行くと変わらない老けた医者の席に座っていた。


「えー……、四日ほど寝ていたわけですが痛みなど体に不調などありますか?」


席に座ると老年の医者はそう言った。

台詞としては誤差はあるがここも前と同じか。


「あぁ、いえ特に無いですね。痛みも大してありません」


前回を意識するように俺は同じような言葉を吐いた。

老医者は俺がダンプに轢かれる前の、多分オリジナルであろうと思われるお話を大して変わらない言い方で俺に話していた。

聴診器やらなにやらをされた後、何の問題もなかったらしく。そこまで時間も掛からず自室へ戻れた。


さっきので解ったのは俺がやはり時間遡行してるってことか。

流石に医者がおちょくってくるとは思えないし、無差別ドッキリなら人のできる範囲を余裕に超えている。

ダンプトラックに轢かれた怪我やら、腹に空いた刺し傷がどうやったらこんな綺麗に治るんだよ。

どう頑張っても傷跡くらいは残るはずだろ?

んなことが出来たらブラックジャックも拍手を惜しまないだろうさ。


でだ、そろそろ問題に取り掛からないとな。

時間があるとはいえ無為に過ごしてたら時間ってのは無いに等しい。

まず何から考える――


「どおしたのぉ?そんな困った顔して」


いつの間にやら彼方が病室に入り、首を傾げながらいつか聞いたような言葉を俺に投げかけていた。

前回も同じようなシチュエーションだったな。

今回はそこまで集中していた訳ではない筈なんだが、彼方の前世は伊賀忍者かなんかだろうか?

前回と同じような問答の末、前回と同じく料理を作って貰えることになった。


バタフライエフェクトだったか?蝶が羽を揺らしただけで地球の反対側ではハリケーンだかが起こっちまう感じのやつ。

それが起こらなくて良かった。

あの料理を食べれないのは現状では精神衛生上悪い。

彼方と話している間、医者の言葉が少し違うような気がして少々怖かったが、無事数日間分の星付きレストラン顔負けの料理を獲得することが出来たようだ。

まぁ、彼方なら俺が頼めば作ってくれそうな気がするが、そんな烏滸がましい事をせずに済んでよかった。

これで前回と同じ通りにいけば退院の日までは幸せに過ごせそうだ。


予想は的中した。

最近やっと当たり始めた俺の予想は負け分を取り戻す気らしい。

あれから退院の日までは、まるでコピー機でコピーされたプリントの如く、少々粗いものの殆ど前回と同じ日々が過ぎていった。


そして退院の日である。

三回目の退院の準備を彼方とともに終わらせ、やはり申し訳なくなりつつ会計を済ませると俺たちは病院を出た。

さて、ここからが問題なのだがその辺は抜かり無い。

前回、前々回の事件発生現場を通らないかつ、美味しそうな料理のあるカフェの前を通る道を入院中に調べておいたのだ。

文明の利器大万歳って感じだな。

病院を出てすぐこの道の話をしてみると、どうやらこのカフェの存在を知らなかったらしく料理の画像を見て興味津々になり、この道で行くことを即決した。


ハミングをしつつスキップを交えながら歩く彼方を、カメラに収めたいという衝動を抑えつつ歩くこと数分。

無事、第一の目的地へ到着した。

カフェでの昼食に舌鼓を打ちつつ駄弁りつつし、彼方が満足したところで彼方の持ってきてくれた俺の財布の中に入っていた金で精算をした。

さてこれはどちらのお金なのやら。


その後何のこともなく第二目的地の駅に到着し、無事新たなステージである我が家へ帰れた。



んな訳無かった。

二度あることは三度ある

三度目の正直という言葉があるが、この世界は正直ではなかったようだ。


今回の死因は前回、前々回が(多分)失血死だということから失血死だと生前のゲーム頭でうすーく妄想していたのだが、この世界は二度あることは三度あるの方も否定したいらしく、溺死だった。

そう溺死。

この世で一番辛いと言われている死に方だ。んん?いや、一番は窒息死だったか?

知らんけど。

同じようなもんだろうし結局死んでんだから誤差だな。


でだ、なんで海もない場所で溺死してるのかってとこだが、これが中々見ない溺死の仕方をした。

というのも、俺が食べすぎたおかげで橋にいつかどこかから落ちたような体勢で寄りかかっていると、

重心を変えるタイミングで持ち上げた足の下にスチール缶が転がってきて、

またまたいつか見たように橋から落っこち、

その時吹いた風で点検してなかったのか上から落ちてきた都会によくある大きな看板に蓋をされるような形になり、

溺死と。


不運の詰め合わせセットみたいな死に方をしてしまった訳で、仏の顔も三度までとは言うが俺は仏じゃないので誰とも知らない何かに怒る気にもなれず、目を開くと見慣れた無機質な白い天井と赤い夕焼けがあった。


ため息ゆっくり吐きつつ頭を回す。

ここで物語の主人公なら、まだ匙を投げるにも、手やら白い旗を挙げるにも早いんだろうが、「諦めない」ってコマンド以外にこの状況の打開策はないのかね?


…………どうすれば良い?

去年前話を投稿した時は、元旦に投稿できれば良いななんて事を書き終えてハイになりかけている脳みそながらに想っていたのですが、

どうにもそう簡単に自分が目標達成なんて出来るはずもなく、気付けば正月から八日経ってしまい、あと一歩で正月の日付に零が一つ付くところになっての投稿に、自分の不甲斐なさやら怠惰な性格に少しばっかりがっかりしているところです。

あぁそうそう、やはりこれもイイワケのような何かなのですが、最近マックのポテトがSサイズしか売られなくなり、いつかの後書きで書いたように自分はマックのポテトと紅茶でどうにか物語を紡いでいるので、それも筆が遅くなった一因になり得るのかもしれません。

次は3月までに書き切れたら良いなぁなんて想っております。

読み続けてくれる方々に感謝の祈りを捧げつつ、

ではまた如月のいつかに。

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