自己紹介と落ちた者
初投稿です。よしなにお願いします。
あれ?現世からのお客さんかな?随分と珍しいお客さんだなぁ。
にしてもここに来るような生者にしては随分普通な風貌してる気がするけど……まぁ、時代は移り変わるってことなのかな?
そういえば、この前っていつ来たん……いや、今気にすることではないか。
気を取り直して。
やぁ、現世の皆さん。お元気ですか?
御初に御目に掛かります。私、名前を鴉と……えー申します。
仕事は死神というものをさせて……貰う?……違う違う。
えー……あっ、させて頂いてます。
えーと?あと何言うんだっけ?
んー……あっ、そうだそうだ。
趣味は、ゲーム、読書、あとアニメとか、あぁそれと甘いもの食べるのこともかな。そんな感じです。
……うん、無理だわ。
自己紹介とか何言えばいいか分かんなくて本っ当に嫌い。
つーか敬語って何?何なの?私この喋り方がいっちばん苦手なんだよね。
というか、別に話してる相手目上じゃないから敬語じゃなくていいんじゃん。勝手にこっちに来てるわけだし。
はぁぁ……
まーいいや。えぇと、話の続きね。
んーと、死神ってのは、現世のほーでは人を死に誘う神とか、人に死ぬ気を起こさせる神とか言われてるけど、別に私、神様なんて大層なものではないんだよね。
あんたらの認識で言えば、天使みたいな感じかな?現世の認識では天使の場合神様の下に付いてるらしいけど、私達はエンマ様のしたについてるって感じ?
まぁ、仕事の中には人に死ぬ気起こさせるってあるんだけどさ。
あと他にはー……現世行って悪霊地獄に落としたり、あの世に来たおじいちゃんおばあちゃんとか案内したりって感じかな。
他にも細かいのは有るんだけど……まぁ、見てれば分かるよ。
さて、お仕事を始めますか。
今日は何かなぁ?
えーと、この辺りに有ったはず……………………あれぇ?こっちか?
……あったあった!はー良かった、失くしちゃったかと思った。危ない危ない。失くしたとか地獄に落とされちゃうよ。
えぇと?んー……自殺……かな?
あぁ、ちょっと違ったか。
えー、古山 和正、19歳。だから……大学生か。
ん?あ違う、社会人なのね。
んで、投身ね。なるほどなるほど。
なんか最近自殺多くなってるなぁ。
まぁ、仕事が増えれば給料も増えるから別にいいんだけどさ。んん?現世の方では悪いことなのか?現世の政治なんて知ったことじゃないけど。
世間話もここらへんにしてと、さっさと終わらせてスイーツでも食べますか。
えぇと、GPSはここら辺指してるんだけど……。
あっいたいた、早速迷ってるわ。ちょっとどこ行くのか見てようかしら。
んん?あれ?なんであれ出てるの?
やっば、早く止めなきゃ。
はぁ、面倒臭いなぁ。
20XX年5月3日、俺は死んだ。
何故よりによって53の日なんかに死んだのか、何だか少し悲しいが、今となっては死んでいるのだから日付なんてどうでもいいのか。
死んだ理由はなんとなくだが会社のストレスとかに耐えられなかったとかそんな感じだった気がする。残業をしまくってた記憶がある。
あれ?遺書とかって書いたんだっけ?書いた気がしないってことは書いてないのか?記憶が曖昧すぎる。落ちたときに変なところでも打ったか?
……つーかどこだここ?随分と真っ白だ。
見る限りなにもない。全方位が遠近感なくなるくらいの白。
確か、5億年ボタンとかいうやつは中の空間全部が真っ黒だったが、それの逆って気がする。
現状整理して気付かない振りしてたが、これが天国ってやつなのか?……いや地獄って可能性も無いわけじゃないけれど、それにしても何も無さ過ぎるだろ。
んん?その前に閻魔大王とかいうやつにどっちに行くか決められるんだったか?だとするなら天国ではなく極楽浄土ってやつになるんだっけ?あー駄目だ頭がこんがらがってきた。
……えーと?取り敢えずここが、天国だろうが、地獄だろうが、極楽だろうが、冥土だろうが、なんであれ何かしらを見つけないと先に進めないってことでいいのか?
いやまぁ、体内時計だが、だいたい5時間位待ってなにもないのだから、そういうことなのだろう。
というかそうでないと困る。俺は5億年ボタンを押さない派なんだ。
じゃあ、動くか、別にずっとここにいてもいいのだが、なにぶん何もないし、どうせ死んでいるのだから時間ならいくらでもあるが、暇は人を殺すというしな。……まぁ、もう死んではいるのだが。
どっちの方向に行くかは決めなくてもいいだろ、時間はいくらでもあるんだ。ゆっくりその何かを探すとしよう。
何かしらあればいいんだが。
なんにもねぇ……。
どんくらい経ったかなんてだいたい2日位経ったかなって思ったときから覚えてない。
やっぱり5億年ボタンみたいな感じなのか?
聴いたことがあるが、人間が最も苦痛と感じるのは意味の無いことをすることらしい。前言撤回、ここが地獄という可能性は大いにある。
いや、こういう事を考えるのはよそう、気が滅入ってしまう。
可能性なんていくらでもあるんだ。考えたところで切りが無いしそれこそ意味が無い。
さて……そろそろ捜索を再開するか。
……あった。
あぁ良かったぁ。何日経ったかなんてとうに覚えちゃいないが無駄ではなかったということだ。
まぁ、三途の川ではないっぽいが何かしらを見つけられただけで成果としては十分だ。
……にしてもでかいな。駅か?そんな感じの外装をしている。随分とイメージと違う。あの世ってもっとなんかおどろおどろしいものを想像してたんだが……いや、こんな空間の時点で現世の知識なんて当てにならんのは当たり前か。
しかし、これが駅なのだとしたらあの世ってのは思ったよりハイテクらしい。
これで外観の通り天国だか極楽だかへの電車が出てりゃあ最高なんだが……まぁ、なくてもこんだけでかけりゃ何かしら有るだろ。オアシスを探した挙げ句幻想のオアシスを見る探検家みたくなってさえいなきゃそれでいい。
ま、止まってても仕方ないさっさと入っちまうか。
駅……だな。
まごうことなき駅だ。これ以上無いってくらいに。
電光板は光り輝き、自動改札機はカシャカシャと音を立て、聞き覚えのある発車メロディが鳴る。
よくある駅の風景が目の前に広がっていた。違うのは人が一人もいないってことくらいだ、駅員すらいない。んん?あの世って時点で人ではないのか?呼び方がよくわからんな。まぁ、どうでもいいか。
券売機は……と。運賃表には只々単純に、天国 5円と書かれていた。
……まじかよ。
ジーパンのポケットを探ると財布が有ったどうやら現世から持ってきてたらしい。歩くのに必死で気付かなかったようだ。中身は613円だった。
券売機の使い方は現世と同じだったので大人1人のボタンを押し5円と映されてる液晶を押して10円を投入し、切符とお釣りを持って自動改札機の方へ向かうと、後ろから声が聞こえてきた。
どうやら走りながら叫んでいるらしい。
一人で天国へ行くのも何だか悲しかったところだし、旅は道連れとも言うしな、自殺したやつが道連れと言うのもあれではあるが、ともかく少々嬉しくなりつつ後ろを向くと……
目の前が真っ暗になってた。と同時にこんな声が聞こえてきた。
「仕事増やしてんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
ただ今書いております。ので少々お待ち下さい。