私の『ユメ』
私は、幼い頃からよく同じ『ユメ』を見る。不思議と言われれば不思議な夢なのだが、その夢を見ると、どこか『安心感』を得ることができるのだ。
『ユメ』の内容はいつも一緒だ。私は何もない空間で寝ている。人間が作り出した建造物も、大自然が生み出した起伏も緑も、何もない。ただ、透明な床と青い、蒼い空がどこまでも続いているだけだ。そんな中に私だけが存在している。まるで私が、この世界では唯一の異常ではないかと思うほどに。
私はその世界の真ん中で、静かに寝ていた。ここが世界の真ん中であることを証明するものなんてもちろんない。だが、本能的にそう感じたのだ。
しばらくすると、私は目を開ける。仰向けで寝ていた私は、どこまでも続く青い空を見上げているような形になった。心が洗われるような蒼い空だ。この空のように私の心も青く澄み渡ればいいのに…
私は体を起こした。やはり何もない。どこを見渡しても、ただ地平線が続いているだけだ。私は立ち上がり、自分自身を確認した。どうやら、私は白いワンピースを着ているようだ。この服には見覚えがある。私が幼い時に好きだった服だ。不思議と懐かしさは感じなかった。
そんな思い出にふけ、ふと現実へと帰っていっくると、目の前に女性が立っていた。普通ならとても不気味な話だ。しかし、私はひどく安心している。白い白衣を着た女の人。優しい笑みで私を迎えてくれる女の人。
お母さん…
私は声にならない声でそう呟いた。私を唯一愛してくれたお母さん。ずっと、そばにいてくれるはずだったお母さん。私を置いて死んでしまったお母さん。
お母さんの顔は覚えていない。私が5歳の時に死んでしまったから。だが、とても優しい人だったことは覚えている。
お母さんが手を振っている。私は無意識に歩を進めた。もう少しでお母さんに触れることができる。一歩、また一歩と歩き、あと一歩で触れられる距離になった瞬間私は目が覚めた。いつも通りだ。起きたくて起きたわけではない。何故か起きてしまうのだ。私の『ユメ』の中だけでも、『ユメ』を叶えさせてほしいのに。
また今日が始まる。何の味気もない、ただ、私の『ユメ』のためだけの一日が。