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「おい、ウリエル。」
「なんだ? ミカエル。」
「何か忘れてないか?」
アダイブ・シエルが消滅したことによって、無数の天使たちは消えた。
「おっと!? うっかり忘れていたぜ!?」
「相変わらずだな、ウリエルは。」
うっかりウリエル健在。
「ラビエルとジブリールに、このことを教えに行かないと。」
「そうしよう。」
ウリエルとミカエルは修道院の協会に向かった。
「遅い! ウリウリとミカミカ!」
ラビエルは待ち合わせの時刻に待たされた女のように怒り心頭だった。
「きっと、サリエルのことだから、うっかり忘れているんだろう。」
ジブリール大正解。
「ということで、アダイブ・シエルの反応も無くなったことだし、私たちの仕事をしようか?」
「はい! 癒しまくります!」
黒い天使のラビエルとジブリールは、白い天使の光を放つ。
「神の癒しを司る天使ラファエル!」
「神の死を司る天使ガブリエル!」
ラビエルはラファエルに、ジブリールはガブリエルに姿を変えた。
「神よ、悪しき神の悪戯のために命を落とした人間たちの魂を再び地上に戻したまえ! リザレクション!」
アダイブ・シエルの進行で死んでしまった街の人々が生き返る。
「神々、生き返ったばかりの瀕死の状態の人々の体力を回復させなさい! リカバリー!」
蘇った人々の健康状態が良好になっていく。
「ふう、これで全て元通りだ。」
「ガブガブ、私たち良い行いをしたね。」
「だって、天使だからな。」
今は黒い天使、堕天使の衣を着て、天使としての行動は控えているが、ラファエルもガブリエルも天使としての神のご加護は衰えていない。
「さあ、ウリエルたちを迎えに行こうか。」
「そうね。ミカミカはちゃんと活躍したのかしら?」
「その話はやめておこう。ウザいから。」
「そうね、ミカミカの話はやめときましょう。」
しかし時すでに遅かった。
「おい~! ラビエル! ジブリール!」
ラファエルとガブリエルを呼ぶミカエルの声が聞こえてくる。
「あちゃ!? 噂をすれば影だよ。」
「ミカミカの地獄耳。」
ミカエルとウリエルが現れた。
「アダイブは倒したぞ。」
「やったね。」
「街の人々も生き返らしたし、まさに天使の働きだ。」
ウリエル、ラファエル、ガブリエルはお互いの健闘を称える。
「私がいる限り、この世に悪が蔓延ることは無いのだ! キャハハハハ!」
「ウザい・・・。」
白い天使になり、ミカエルのウザさは2倍にも3倍にも増している。
「あの・・・どちら様ですか?」
そこに修道院の協会に隠れていたエリザが外に出てきた。エリザにはガングロから美白になった天使が誰なのか分からなかった。
「エリエリ、私よ、私。ラビエルよ。」
「ら、ラビエル!?」
黒から白に変わった天使の姿に驚くエリザ。
「そうよ。ラビラビよ。」
「ということは!? まさか!?」
エリザは他の3人の白い天使を見回す。
「元サリエルのうっかりウリエルだ。」
「ジブリールからのガブリエルです。」
「私の名前を聞きたいだと? 教えてあげてもいいが。」
「ミハイル、黙って。」
名乗らなくてもエリザには、ウザさでミハイルだと分かった。
「あんまりだ!? 名前ぐらい名乗らせてくれてもいいじゃないか!? 神よ!? 私が何か悪いことをしましたか!? それとも私の存在が罪だというのですか!?」
神に救いを請うミカエル。
「ウザいのが罪よ。反省しなさい。」
決してエリザはミカエルを許さなかった。
「ああ!? 神の裁きを司る私が、人間の小娘に裁かれた!?」
ミカエルの苦悩は終わることは無かった。
「エリザさん!」
そこにシューとエクレアさんがやって来た。
「シュー!」
エリザはシューの姿を見て、シューの無事を喜び抱きつこうとする。
「ストップ!」
そこをエクレアさんが止めに入る。
「え!?」
時間と動きが止まるシューとエリザ。
「私のシューに馴れ馴れしくしないでほしいわね。」
エクレアはエリザの前に立ちふさがる。
「私のシュー!? シュー!? どういうこと!? 私という女がいながら他に女がいたのね!? この浮気者!?」
エリザはシューとの再開の感動の涙から、悲しみの軽蔑する涙に変わった。
「ち、違います!? 違います!? この人は修道院の修道士の先輩で、子供の頃からお世話になっている人なんです!? お母さんみたいな存在なんです!?」
シューは必死に弁解する。
「酷い!? シュー!? 子供の頃からずっと一緒だった私より、あんな女の方がいいって言うのね!?」
エクレアさんは完全に、このシチュエーションを楽しんでいる。
「シュー!? あなた育ての母に手を出したのね!? 近親相姦なんて最低よ!? このマザコン!? 変態!?」
「ご、誤解です!? 誤解ですよ!? エリザさん!?」
エリザの誤解からくる怒りは簡単には収まりそうになかった。
「あんな連中に負けたの? アダイブ・シエル。」
ここは天界。
「そうみたいだ。情けない。」
そこに数人の人間ではなく、天使がいるみたいだった。
「・・・。」
その内の1人は声を出せないみたいだった。
「いいわよ。あなたは血が少なかったのか、声が出せないんだから。エヴァ。」
声の出せない天使の名前はエヴァ。
「・・・。」
やはり話をしないではなく、話ができないようだった。
「やはり俺様が行くしかないだろう。」
「ダメよ! アダム! 今度は私が行くんだから! 天界は平和過ぎて退屈なんだから。」
俺様天使の名前はアダム。
「イヴには敵わないな。」
「それでいいのよ。私が1番強いんだから。シエルなんて、私たちの中では1番下っ端なんだから。」
そして、天使の中で最強の者の名前がイヴ。
「・・・。」
エヴァが身振り手振りで何かを訴えている。
「アダム、訳して。」
「えっと、なら、どうして、アダイブ・シエルを助けたのか?」
なんと、アダイブ・シエルは消滅したかに見えたが、密かに助けられ、天界に意識の無い頭と両手の無い上半身だけがあった。
「なんだ。そんなこと。」
イヴはつまらなそうに受け止める。
「私たちは偉大なる神に造られた、神に忠実な新たな天使。だけど神が、その気になれば私たちは一瞬で消されてしまう。」
偉大なる神がいるらしい。
「面白くないでしょう?」
イヴは楽しいか楽しくないかが基準の愉快な天使であった。
「それは仕方がない。俺様たちは偉大なる神が創りし天使、アダイブなのだから。」
イヴと違い、意外と神に忠実なアダム。
「違うわ。私たちは冥王ハーデースの言う通り模造品よ。偽物の天使だわ。」
イヴは自分の存在している意味に納得していない。
「そこの嘆きの壁に埋められている抜け殻の天使と同じ、私たちは中身のない傀儡よ。ただの操り人形でしかない。」
イヴたち純潔のアダイブ3人がいる場所は、エクレアの体が埋められている嘆きの壁の前だった。
「どちらかと言うと、私たちを自分の駒として創り出した神より、私たちに流れる血を与えてくれた、神の血を司る天使の方に親しみを感じるわ。」
イヴにとって、エクレアは母ともいえる存在であった。
「・・・。」
「言い過ぎだろう!? イヴ!? 偉大なる神に聞こえたらどうするんだ!?」
自分の存在をリセットできる偉大なる神に怯えるアダム。
「構わないわ。私は生命の樹の実と知恵の樹の実を食べてみせる。」
禁断の果実である。
「自由になってみせる!」
イヴは、アダイブ・イヴから抜け出したかった。
「エデンが生命の樹と知恵の樹を探しているわ。きっと見つける。見つけて見せるわ。自由の翼を。」
その時、何者かが現れる。
「ずっと、そこに居たんでしょう?」
「よく、お気づきで。」
黒い羽を背中に生やした者が現れる。
「サマエル。」
死霊の王とも呼ばれている、死を司る天使サマエルであった。
つづく。




