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Spectacular Fight Tales in Mysterious Different World  作者: マッハ! ニュージェネレーション
港町トオカッタ編(ザラス大陸(チーム・ノースディビジョン)編ファイナルステージ)
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第88話(水都氏サイド):近づいてくる闇の竜

 闇に潜み魔を喰らい、幾千の夜を越えてその竜はその大陸で最強の一角となった。

 このままいけば存在進化を果たすことも夢ではないだろう。

 闇に属する性質を持つ割に、その気性は大人しく冷静沈着であり、弱き者に対する慈悲すら持ち得ていることを知るものは少ない。

 それが竜の国ドゼウスに棲家をかまえる、黒竜ノアールのすべてである。


 そんなか弱き人の子を人知れず守護する慈悲ぶかき竜だが、竜である彼には許せない領分というものがある。

 その最たるものが、己が棲家を荒らされることだ。


 黒竜ノアールは静かに激怒していた。


「…許さんぞ、侵入者ども」


 ぼそりと落とされた言葉は呪詛のように低く轟いた。

 一層夜が深くなるような気配を気にも留めずに、ノアールは怒りに鋭く瞳を細めながら唸った。


「我の棲家を荒らしたならず者め…噛み砕いてくれる…っ!」


 呪詛のようなつぶやきが夜に解けて消えた。

 その鋭い竜の赤眼は真っ直ぐに丘の上の古城を射抜いていた。







 ◇






 燦々と朝日が降り注ぐトオカッタの街。

 丘の上にある小城の一室には爽やかな朝の空気とは無縁な、不穏な雰囲気に包まれていた。


「…なあ、まさかジェイノリー。その黒竜の塔で、その黒竜とやらに恨まれるようなことしでかしてないだろうな…?」


 恐る恐るそう切り出した明に、ジェイノリーは視線も向けずにぼそりと返す。


「…実は、その時に塔の内部で戦闘になった」

「ああ、聞かなくても嫌な予感がしやがるぜ」


 ジェイノリーの返答に、明は嫌そうに顔をしかめてがりがりと頭をかいた。


「…暴れまわったせいで、おそらく室内は荒れ放題になったのではないかと…」


『うわっ、それまずいって』


 そう口を開いたのはシュヴィリスだ。

 これでもかと顔をしかめて、ため息交じりにシュヴィリスは言った。


『竜にとっては棲家は聖域みたいなもんなんだよ。侵入した者を許せずに撃退しちゃうほどなのに、その棲家を荒らすって…』


 はあっと深いため息とともにそう告げたシュヴィリス。

 明はがくりと肩を落としながら呟いた。


「ああ、やっと落ち着いたと思ったのに…」

「…急ぎ船出の準備を整えないといけないな」


 明の嘆きに、周二が仕方がないと首を振る。


「すまない…」

「いや、仕方がないことだ。お前は無意味に暴れるような人間ではない。差し迫ってのことだろう」

「それは言いっこなしだ。家に帰るために、俺たちはやれることをやるしかないんだしな」


 厄介な追手を生み出してしまったことをジェイノリーが謝罪すれば、周二が気にするなと言った。

 明の方もそれに頷き、手にしたパンを噛み切りながら口を開く。


「塔には仲間の所持品が落ちてたんだろ?回収しなきゃ日本に戻れないかもしれないんだ。黒竜さんには悪いけどよ、すまなかったってことで謝って許してくれねえかな」

『…どうかなぁ。僕もこっちの竜の性格までわからないんだけど』


 ううんと首をひねって、シュヴィリスは考え込んでからぽつりと呟いた。


『…ドゼウスからわざわざ追いかけてくるほどだから、相当怒ってるんじゃないかな』


「やっぱり難しいか」

『下手したら話し合う前に食べられちゃうかもね』


 シュヴィリスは右の手のひらを大きく開き、ぱくっと言いながら手のひらを閉じる。


「…逃げ切るしかないな」


 わかりやすい例えに、ジェイノリーは険しい表情のまま呟いた。


「だが、どうやって?船に乗る手配も整っていないだろう」


 そうしたいのは山々だがとつぶやいて周二がため息をこぼす。

 急いで出発したいが、この先は船がないとどうしようもない。

 今日街に降りて、すぐさま中央大陸行きの船に乗る手配が出来るかどうか。


 そもそも乗船にあたって、この世界の貨幣も持っていないのだ。

 元々の予定では足りない金はこの港町で働くかして稼ぐ予定であったのが、追手が迫る今の状況ではそれもかなわない。


 難しい顔つきで黙り込む二人に、明は困り切ったように肩を落として呟いた。


「もういっそ、ビアードさんによ、何とか協力してもらって急いで船に乗らせてもらった方がよくないか?」

「無茶だ」


 明の提案に、周二は初対面の旅人相手にそこまで面倒を見てくれることはないだろうと首を横に振る。


「…いや、いい案かもしれない」

『えぇ?』


 けれどもジェイノリーは名案だとばかりに険しい顔をわずかに緩め、そうしてシュヴィリスを見た。


『…ねぇ?何だかおかしなこと考えてない?嫌な予感がするんだけど?』


 路銀が足りなければ鱗を売ろうと考えていたことは知らないはずなのだが、勘がいいのかジェイノリーが口を開く前からシュヴィリスは警戒の眼差しで見返した。


「全てを話すことはない。語れる部分だけを話して協力を仰ぐ」


 そういって、ジェイノリーは朝食の最後の一口を口に放り込む。


「…黒竜に追われていることを相談するのだな?」


 周二の言葉にジェイノリーは「そうだ」と肯定を返す。


「なるほどな。街中で俺らと…黒竜が争いになっちゃ、領主としてはたまったもんじゃねぇな」


 話が読めたらしい明が、なるほどと頷いた。


『つまり、竜同士の争いを避けるために領主権限でも使って手早く船を用意してもらおうってわけだね』


 言い終えてシュヴィリスは不満そうにぽつりと『僕何も悪いことしてないのに災厄扱いかぁ…まあいいけど』と呟いた。

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