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Spectacular Fight Tales in Mysterious Different World  作者: マッハ! ニュージェネレーション
港町トオカッタ編(ザラス大陸(チーム・ノースディビジョン)編ファイナルステージ)
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第84話(水都氏サイド):森の奥の出会い

『あー、重かったぁー。トオカッタ遠かったよー』

「っぶ!なんだそれ、おもしれー!」


 ぶほっと吹きだした明が快活な笑い声をあげる。


 その反応にまんざらでもなさそうにシュヴィリスがふふんと鼻を鳴らした。


 カイザスタンからはるか南方のこの地まで、重い荷を吊り下げて飛んできたのだ。

 さすがに竜であるシュヴィリスでも相当な重労働である。


 トオカッタ近隣に広がる森の中へと降り立ち、荷を下ろしたシュヴィリスは大きく地に伸びていた。

 その傍らで明が労苦を労うように、拳でどんどんと肩の辺りを叩いてやる。

 気持ちよさそうに細められる瞳に、明もどんどんと叩く拳に力を込めた。


 そんな一人と一頭を横目に、ジェイノリーと周二は運んできた車を草陰に隠そうと躍起になっていた。


「まいったな。カイザスタンの森のように草薮が茂っていないとは」


 とりあえずカモフラージュ用の布で車の周囲を覆い隠して、ジェイノリーは眉根をきつく寄せて呟いた。

 海に近いからか、明るい広葉樹の広がる森の中は草丈の低いものが疎らに分散して生えている。

 車を隠せるような茂みもなく、ジェイノリーはどうしたものかと頭を悩ませた。


「…これでは丸見えだ」


 落ちていた枝や落ち葉を布の上から振りかけてみたが、見通しのいい森の中では何かあると丸わかりだ。


「まいったな」


 頭を悩ませているジェイノリー達に、シュヴィリスが声をかけた。


『あー、どうやら問題はそれだけじゃないみたいだよ?』

「ん?どういうことだ?」


 明の言葉に、シュヴィリスはすっと目を細めた。

 ぐうっと開かれた口元から、おそらくは苦笑をしたのだろう。


『真っ直ぐここに向かってくる集団がいるよ』

「うげっ」

「それはっ!もう見つかったというのか…!」


 シュヴィリスの言葉に明と周二がすばやく身構える。


 長い旅路の果てにようやく目的のトオカッタに着いたというのに、落ち着く暇さえない。


「く、早く逃げねば」

「周二!早く車をシュヴィリスにくくらねぇとっ!」


 すぐさま車のそばへと駆け寄り、慌てたようにほどいたばかりのロープを手に取り車体へと回しかけようとする。

 急いで荷造りを始める二人に、ジェイノリーは落ち着いた様子で声を上げた。


「落ち着け、二人とも」


 慌ただしく動いていた二人の手が止まる。


「ここで逃げ出したのでは、何かあると言っているようなものだ」

「しかし…逃げるなら早いほうがいいだろう?」


 ジェイノリーの言葉に周二は戸惑いつつ言い返す。


「まだこの国では我々は何もしていないんだ。逃げる必要などないだろう」

「だけどよ、…このソアラはどうするんだ?」


 ジェイノリーに向けて、明は落ち葉を散らせた車を指さす。

 隠しきれていない大きな荷を見やり、ジェイノリーもわずかに言葉を詰まらせる。


「それは、あれだ。シュヴィリスの大事な荷物を我らが守っているとでも言えばいいだろう」

『えー?』


 不満そうに上がるシュヴィリスの声を聴き流し、ジェイノリーはそれがいいと自分の意見に納得して言葉をつなげる。


「この世界では竜が意思を持つことは常識のようだ。これをシュヴィリスの荷だといいはっても不思議はない…はずだ」

「おお、すげえ。ジェイノリー天才だな!」

「ふむ…確かにそれなら、強引ではあるが理屈は通る」


 ジェイノリーの提案に、明と周二の二人も頷いて答えた。


「何も後ろめたいことがない俺たちに、逃げる理由はない」

「さすがジェイノリー!よっ、大統領!」

「なかなかの名案だな。それでいこう」


 一気に乗り気になった三人を見やり、シュヴィリスは鬱屈としたため息を吐き出した。


『ちょっとー…、何でも僕に押し付けすぎじゃないー?まったくもうー…』





 ◇





 トオカッタ近郊を警邏中の騎士達一行は、森の奥に行った場所で思いもよらない珍客を目にし目を丸くした。


「そ、そこの者達!何者だ!!」


 それでも職務を全うするあたり、さすがは騎士である。


 彼らの目線の先には、森にうずくまるようにする一頭の青い竜と、三人の男達。


 不審な彼らにそう詰問すれば、彼らもこちらに気づいたのかそろって視線を向けてきた。


「あ、俺らは…」

「私たちは旅の者です。こちらの竜の引越しの手伝いをしています」

『ぇ、あ、そ、そう。僕引っ越すの』


 何やら戸惑った物言いではあるが、一般人が騎士を前にすると緊張で言葉が出なくなるのはよくあることだ。

 不審ではあるが、彼らの言うことには一理ある。


 何よりも竜自体がその弁を肯定しているのだ。


 どうしたものかと、ジョージアを見やる。


「…ベラルド卿、どうしますかこれ?竜がいるなんて…」


 話しかけた隊長は、ジョージアの顔を見て唖然とした。


「あー…」


 先ほどまでの毅然とした眼差しはどこへいったのか、半眼で重々しいため息を吐き出している男が次にいう言葉がたやすく想像できてしまう。

 彼は言うだろう。”面倒”だと。


「…面倒だから、ビアードに任せればいいんじゃあないかなー」

「ッベラルド卿!!」


 咎めるようにきつく声を張り上げるが、それをこの領主代行が聞くわけがない。


「うん、それがいいってー。じゃ、帰ろう」

「ベラルド卿!!!」


 全く堪えた様子のないジョージアは、くるりと馬首を返した。


「んじゃ、後頼んだわ。俺は先に馬車に戻っているから」

「ベラルド卿ぉおおおおおお!!!」


 騎士の返答を待たずに、さっそうと馬を走らせて去ってゆく男の背に騎士の慟哭が響き渡る。


 後に残されたのは、がっくりと項垂れた様子の隊長とその部下である騎士達。

 戦闘もしていないのに疲労を滲ませた彼らの表情に、明は気の毒そうな眼差しを向けた。


『えー、それで、どうなったの?この状況?』


 困惑したようなシュヴィリスの言葉が、むなしくその場に響いた。

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