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第76話(マッハサイド):回収と追っ手

 シュヴィリスは2人を肩に抱えたまま紐無しバンジージャンプを決行すると、そのまま空中で指をパチンと鳴らした。

 その瞬間、シュヴィリスの身体が光り輝いて空中に青いドラゴンの姿が現れた。

 抱えられていた2人の人間は一瞬の浮遊感を覚えた後。ストッとシュヴィリスの背中にキャッチされて事無きを得た。

 いや、寿命が10年はこれで縮まったかも知れないのでやっぱり何事も無くは無さそうだった。

 ともかく無事に紐無しバンジーから生還した2人は、シュヴィリスの向かう先を見据える。

「あ、あそこか!?」

 地面に近付くに連れて下の光景が大きくなって来る。

 そうすると下の光景も分かる様になるので、周二が居るのであろう人影の多い場所へと真っ直ぐ向かうシュヴィリス。


「おい、周二を撥ね飛ばすなよ!?」

『分かってるよー』

 何処かのんびりと受け答えしながらも、スーッと上手く荷重の乗る様なブレーキングの如くスピードダウンしながらその乱戦状態の中にシュヴィリスは突っ込んだ。

「なっ、何だ!?」

「うわああっっ!?」

 いきなり現れていきなり突っ込んで来たドラゴンの姿に、カイザスタンの警備隊員と騎士団員達はそのまま突っ込んで来たシュヴィリスの姿を見て、一瞬動揺した姿を見せた後に慌てふためいて逃げ惑う。

 その中心には周二がシュヴィリスの方を見上げて、分かっていたかの様に手を伸ばして来たので手足の長いジェイノリーがシュヴィリスの背中の上から手を伸ばしてその手をまるでサーカスの様にキャッチする。

 そのままだと周二との体重差で落ちてしまうので、明がジェイノリーの腰を掴んで一気に力を込めて落ちない様に踏ん張る。


「ぬぐおおおおおっ!!」

 ブラーンブラーンと周二が揺れつつ明とジェイノリーに引っ張り上げられ、何とか塔からの脱出を成功させると共にカイザスタンからの脱出も成功する……予定だったのだが。

「はぁ……これで何とかこの国からも脱出出来そうだな」

「後はトオカッタ……だったか、そこに行って船に乗るだけだ」

 このカイザスタンからもこれでようやくお別れ……かと思いきや、まだこの世界は地球人とドラゴンに試練を与えるらしい。

 脱出した後に、帝都マイセンの外に隠しておいた30ソアラを回収して再び夜空へと飛び上がるシュヴィリス。

 ホッとする明と周二だったが、そのシュヴィリスの手綱を握っているジェイノリーがシュヴィリスの異変に気が付く。

「どうかしたのか、シュヴィリス?」

『……スピード上げるよ。追っ手が来てる』

「追っ手?」


 一体それはどんな奴なんだ、と周二が聞くと、シュヴィリスはとんでもない答えを返して来た。

『……ドラゴンだよ。僕と同じ……それも、あの闘技場のトイレで周二が出会ったって言う緑の奴の可能性が高い!!』

「何だって……何で分かるんだ!?」

 いきなり何を言い出すんだこのドラゴンは……と明が声を上げるものの、シュヴィリスの焦りは止まらない。

『竜の気配とは人間の気配とは違う種類なんだよ。人の気配で人気ひとけなら竜の気配で竜気りゅうけって僕は呼んでるんだけど……ヘルヴァナールの竜気とこの世界の竜気は凄く似てる。全く同じって訳じゃ無いけど僕には分かるんだ!!』

「そう言われてもこれからどうするんだよ!?」

 どちらかと言えば冷静な性格の周二も、焦り気味の口調でシュヴィリスに問い掛ける。

『だからスピードアップする。しっかり掴まってなよっ!!』


 そのセリフが終わると同時にシュヴィリスは一気にスピードアップ。

 カイザスタンの首都マイセンが後方にあっと言う間に遠ざかって行くのが見えるが、今はそんな事を背中の3人は気にする余裕は無かった。

 しかし、このドラゴンが運んでいるのは人間3人だけでは無い。

 足で握っている30ソアラは1500キロ弱の重さがあるので、そのソアラを置いて行けばまだまだスピードアップ出来るのだが地球へ帰る為の重要なアイテム故にそうも行かない。

 何かを握り締めながら飛ぶと言うのはかなりのペースダウンに繋がってしまうので、スピードアップしたとは言えどもたかが知れていた。


 そしてそんなシュヴィリスと地球人一行の耳と目に、明らかにその「追っ手」の姿が見えて来るのにそうそう時間は掛からなかった。

「お、おいあれは……!?」

「本当にドラゴンだ……!!」

「ちっ!」

 明とジェイノリーと周二のリアクションはそれぞれ違うものの、3人に共通して言える事は「何でこんな時にドラゴンが追い掛けて来るんだよ!?」と言う気持ちだった。

 そのドラゴンとのスピード差はかなりある様で、あっと言う間にシュヴィリスは追い越されてしまい一行の目の前にその緑のドラゴンが立ち塞がった。


 ……しかも良く見てみると、ドラゴンの背中に誰かが乗っているでは無いか。

 そのドラゴンの背中から飛び降りて来た人影に対して、真っ先に反応したのは明だった。

「……えっ、あ、あいつは!?」

「どうした?」

「あいつだ……俺がさっきの帝都で戦ったドゼウスからの追っ手だよ!!」

『何だって……!?』

 明のセリフに驚く一行の目の前で、その追っ手は何処か優雅に見える動きで腰からロングソードを引き抜いた。

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