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第3話(マッハサイド):動き出す軍勢と感じる波動

「マルス、説明してくれよ!!」

「そうだ、俺にも説明してくれ。あの男は竜だと?」

「あの者が竜ですか。それは少し興味がありますね」

 ゴトーにも、現宰相であるオベールにもそれから皇帝陛下であるライゼンにも一斉に詰め寄られるものの、それでもマルスの佇まいは冷静で毅然としている。

 そんな3人に詰め寄られているマルスは、自分が見た事と感じた事を素直に全て説明し始める。

「はい、間違いありません。あの者は竜の化身です。あの人智を超越した力に加えて、あの者より感じた気配は間違いなく竜のものでした」


 その説明に対して、ゴトーとライゼンは正反対に近いリアクションを取りながらも考えている事は一緒の様であった。

「信じられっかよ、んな事!! 今のドゼウスの守護竜は全部で6匹しか居なかった筈だぞ!!」

「しかも言語を操る竜となれば、ますます謎が深まるばかりだな……」

 ドゼウスを守っている竜は全部で6匹。

 しかも、人間の言語を操る事が出来る竜となれば今現在のドゼウスの守護竜以外に考えられないのだが、あの不審者が仮にドラゴンだとしたら一体何者なのだろうか?

「陛下のおっしゃる通り、謎は深まるばかりか……」

 その会話を近くで聞いていたロズバンも、冷静な顔つきで顎に手を当てながら深く考え込む。

「とにかく、あの者を何としてでも捕らえるんだ。捕まえてしっかりと話をして貰わなければ、こちらとしても考えるだけで時間が過ぎ去って行くだけだからな」

「はっ、それでは追撃部隊の編成に大至急取り掛かります!」

「ぜってー逃がさねーぜ、あのやろおおおおおおお!!」

 ライゼンの指示で、6匹のドラゴンが守っている帝国の騎士団が一斉に動き出す。


 その追われる立場になっている筈のドラゴン……シュヴィリスは、実を言うとまだ天窓近くの天井にウロウロしてあたふたしていた。

 ここまで上って来たのは良いのだが、これから一体自分はどうやって行動するべきなのだろうかと言う気持ちがシュヴィリスの足を止めてしまう原因になっていた。

 天窓の下の方からは慌ただしく人間が走り回る足音、それから怒号がシュヴィリスの耳に届く。

【まずいなぁ、さっさと逃げないと……】

 でも何処へ?

 シュヴィリスの見渡す限りの視界には、まるで見覚えの無い景色ばかりが広がっている。

 これでは何処に身を隠せば良いのか皆目見当がつきそうに無い。

 下の状況に似つかわしくない様子でシュヴィリスがうーんと腕を組み、首をひねって考える。

 だがその時、自分の身体に微かに……ほんの微かにだが、前に感じた覚えのある感覚があった。

【あれっ? こ、これって……】

 かつてヘルヴァナールに居た頃、記念すべきファーストコンタクトをした時に感じた……その世界の人間のものでは無い、しかし確かに感じる事が出来てその目で見る事も出来る特殊なオーラ……波動が、方角は分からないけど感じる方向があるのだった。


 もしかしたら、この不思議な場所に来てしまったのは自分だけでは無いかもしれない。

 一旦そう考え始めると、徐々にシュヴィリスの顔が明るくなって来る。

『行くしか無いよね、これは』

 波動を感じる事が出来るのであれば、もしかしたら元々居た六本木のクラブまで辿り着く事が出来るかもしれない。

 いや、そうで無ければ困る。そうであって欲しい。

 自分の希望が欲望に、そして希望に変わるのにそうそう時間が掛からなかったシュヴィリスはパチンと1回指を鳴らした。

 その瞬間、シュヴィリスの身体が激しく光り輝いたかと思うとその身体のシルエットが光の中で徐々に変化して行き、最終的には鮮やかな青いボディを持っている1匹のドラゴンの姿になった。


 そもそも、シュヴィリスにとってはこっちが自分本来の姿である。

『誰だか分からないけど……波動を感じると言う事は真由美か明か、それとも令次かな?』

 シュヴィリスが波動を感じる事が出来る、見る事が出来ると言う人間はあの六本木のクラブに居たメンバーの中では遠藤真由美、宝坂令次、稲本明の3人しか居ない。

 その3人の内の誰かが、自分が今から飛んで行く方向に居て欲しいと考えるのは自然な流れであるだろう。

 この先で何が起こるのかははっきり言ってまるで未知数。何せ、まるで見覚えの無い場所に来てしまったのだからそう考えるのもまた自然な事である。

 一体何がどうしてこうなってしまったのか。

 誰かの悪戯なのだろうか?

 自分の世界であるヘルヴァナールに、今自分が世話になっている地球人がやって来た時も果たしてこんな気持ちだったのだろうか?

 シュヴィリスの頭の中でグルグルと色々な疑問が駆け巡るが、今はとりあえずその波動を感じる方角へと向かってみるのがこの異常事態から脱出できる第1歩になるだろうと考えた。

 伊達にドラゴンとして3200年以上生きて来ている訳では無いのだ。

 そんな3200年分の経験が、自分の不安な気持ちを少しでも和らげてくれると信じてシュヴィリスは鳴き声を大きく1つ上げると、大空へ向かって勢い良く飛び立った。

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