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第74話(マッハサイド):氷とスマートフォン

 北側の塔から強い明の波動を感じるので、裏側からスーッと回り込んで周二と同じルートを取るシュヴィリス。

 とは言っても周二が建物の中にすぐ侵入したのとは違い、シュヴィリスはまっすぐに北側の塔へと向かう。

【……あそこの窓からなら行けるかな?】

 塔の上を見上げ、所々に取り付けられている換気と明かり取り用の窓を見つけてシュヴィリスは頷く。

 右手に握り締めた「道具」を一旦ポケットにしまい、両手を塔の壁にくっつけて細長い氷のハシゴを作る。

 さっきの城壁の時よりも遥かに細長く、細身の人間1人がやっと横幅に収まる位の幅しか無い。

 理由としては、塔と言うだけあってちょっとした楕円構造になっている為にまっすぐのハシゴは作りにくい事と、あまり大規模なものを作り出して見張りの兵士に気づかれでもしたら困るからだった。


 そのハシゴを音を立てない様に、しかし素早くシュヴィリスは上る。

 なかなかの高さがあるが、塔の頂上は丁度城壁を超える高さなので見張り塔としても使われているのだろう。

 それだったら脱出には城壁の外まで氷のスライダーを作り出すか、ドラゴンの姿に戻ってさっさと飛び立てば良いだけなのでシュヴィリスには丁度良かった。

 その為にもまずは自分がこの塔の中に潜り込まなければ、と思いながらハシゴを上って来たシュヴィリスは、再びポケットからその「道具」……30ソアラの中に積まれていたガムテープと緊急脱出用のハンマーを取り出す。

 日本でテレビを見ていた時、ガムテープを使った空き巣の方法を特集していた番組の記憶があったのでそれを実践する。


 まずはガムテープをなるべく幅広い面積で何枚も窓ガラスに貼り付ける。

 そのガムテープを張り付けるのは鍵のすぐ近く。

 そして貼り付けが終了したらガムテープをポケットにしまい、もう1つの道具であるハンマーでガムテープを貼り付けた面のガラスを思いっ切り殴る。

 こうする事で「ガラスが飛び散る」のを防ぎ「ガラスが割れる音」も最小限に抑えられるので一石二鳥のやり方なのだ。

 パキンッ、とガラスが割れる音とは思えない様な小さな音しか響かず、シュヴィリスは窓を開けて悠々と塔の中に侵入。

【兵士の気配は少なめだけどそれなりにある……。でも、明の波動は結構近いね】

 明の波動がかなり感じ取れる場所まで上って来てから窓を割ったので、後は兵士の気配に気を付けながら急ぐだけだとシュヴィリスはハンマーを握り締めて歩き出した。



「あのアランって奴は帰ったんだっけ?」

「そうらしい……ニルラインって男が俺達の所に来て、今後は私とヘインズが尋問するからなって言い残して帰ってったしな……」

 食事を持って来たニルラインにそう言われたのを思い出しながら、明の質問にジェイノリーが答える。

 ニルラインのその話に「何で帰ったの?」と質問すると「アラン達警備隊は帝都の警備が任務だから、ここが本業では無いのだ」と冷たい口調で返された。

 残っているのはニルライン、それから唯一警備隊のメンバーでそのトップであるヘインズ、ニルラインの協力役でロイス、後はあのカールとロックヒルとシュナイダーだけらしい。


「今頃シュヴィリスと周二はどうしてんだろーな」

「俺達はここを動けないのだから確認する術が無い。何か……あ、何か?」

 そう言えば持ち物検査をされなかった気がする、とジェイノリーがガサゴソとスーツのジャケットのポケットを探ってみると……。

「あった、スマートフォン!!」

「え、あ、そっか!!」

 明も自分のポケットを探り、スマートフォンを取り出して電話が掛けられるかどうかを試してみる……が。

「あれ、ここじゃアンテナ立ってねーぞ!?」

「俺のも駄目だな」


 そうそう都合良く物事は進まない様だが、明がある事を思いついた。

「いや、待った。まだこれを有効に使える方法があるぞ」

「えっ?」

 ゴニョゴニョとジェイノリーに耳打ちして、扉の前に立っている見張りに聞こえない様にする明。

 その説明を聞いて納得した表情を見せたジェイノリーも、それならばとさっそくスマートフォンを弄って準備を始める。

 そして部屋の中央にスマートフォンを置いて、ドアのそばの壁に2人が張り付いて準備完了。

「3,2,1……」


 明のカウントダウンが終わった瞬間、大きな音量で音楽が部屋の中に流れ始める。

「なっ、何事だ!?」

 音楽に驚いた警備隊員がカギを開けて部屋に飛び込んで来た所で、素早く明とジェイノリーが警備隊員を両側からの頭突きでノックアウト。

 明は素早くスマートフォンの音楽を止め、ジェイノリーは部屋の外の気配を探る。

「……こいつ以外に気づかれたか?」

「いや、オールクリアだ」

 そう言いながら警備隊員の腰に取り付けられている、ドアのカギとは違う種類のカギを手枷と足枷を着けられている状態ながら器用に手に取り、そして明の手枷にまずは上手くはめ込む。

 その瞬間、カチャっと音がして手枷が外れた。

「や、やった……!!」

「俺のも外してくれ」

「待ってろ、まずは俺の足枷だ」

 明は足枷を外し、ジェイノリーを縛る手足の枷も外して警備隊員の手足にそれぞれ2個セットで着けておく。


 だがその時、バタバタと誰かが走って来る音が聞こえた。

「げっ!」

「兵士か!?」

 再びドアのそばの壁に張り付いて様子を窺う2人だが、明の方から見えたその人影に「大丈夫だ」と小さく呟く。

 何故ならその人影は……。

『い、今の音は何!?』

「シュヴィリス、無事だったのか!!」

 そう、ハンマーとガムテープでここに忍び込んだシュヴィリスだった。

「お前こそどうやってここに入ったんだ?」

『話は後。まずはここから脱出……ってあれ、周二は?』

「え?」

「は?」

 何はともあれ、さぁ脱出だ。

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