第49話(マッハサイド):決勝トーナメント2回戦と動き出す色々な人間
バトルBGM
熱くなれ デーモン閣下
https://www.youtube.com/watch?v=2WXH2H5v1Rs
「それでは2回戦第1組、第5試合、ベンノ・エオイン対シュージ・マツバラの試合を開始する!」
2回戦で待ち受けていたのは周二に負けず劣らずのごつい男。
背の高さは周二よりも低いミドルクラスだが筋骨隆々の体躯。以前テレビで地上波放送されていたファンタジー映画に出ていたドワーフみたいに、髭がウェーブしているのが非常に特徴的だ。
その手には片手で振るえる大きな斧を持っている。出で立ちは戦士と言うよりも何だか冒険者みたいな風貌だ。
「開始っ!!」
審判の騎士団員の合図と共に試合開始。
その合図と同時にベンノが絶叫しながら向かって来る。まさにプロレスさながらの試合だが、大体台本があるプロレスと違って今は真面目な試合だ。
だからこそ周二も全力で迎え撃つ。
片手斧が速いスピードで振り下ろされるが、見切れない速さでは無いのでスパッと避けつつベンノの側頭部目掛けてハイキック。
若干そのハイキックでふらついたものの、今度は前蹴りをベンノが繰り出して来たのでそれを両手で受け止めてから思いっ切り押し返し、またふらついたベンノの顔面に頭突き。
「ぐほっ!?」
倒れ込んだベンノの頭を掴んで引き起こし、頭を掴んだまま右の膝蹴りを4発叩き込んで屈んだそのベンノの背中にエルボーを落とす。
「ごへっ!?」
エルボーで地面に倒れ伏したベンノをもう1度首根っこを掴んで引きずり起こし、そのまま勢いをつけて場外の砂地へと投げ捨てた。
「ぬおおぁああああっ!?」
成す術無くリングアウトして行ったベンノを見て、審判の騎士団員が周二の勝利を告げた。
「勝者、シュージ・マツバラ!!」
割れる様な大歓声の中、無言で周二は石舞台を降りる。
トイレで出会ったあの瞳孔が縦に割れている男は、自分にとって何やらまずい気がしたからだった。
そんな周二を闘技場の歓声の中で見つめている人物が数人居た。
「……あれ、間違い無く周二だよな」
「そもそも名前を呼ばれていたんだから間違えも何も無いだろう。でも、まさかこんな目立つ場所に居るとは思いもしなかったな」
『あれじゃあ僕等も迂闊に近づけないね』
明とジェイノリーとシュヴィリスの2人と1匹はマーレイとゼキと一緒に武道大会を見に来ていたのだが、まさかそこで自分達の知り合いが参加していたとは思いもしなかった。
観戦している途中でバッタリ会ってしまったと言うならともかく、まさかの参加者として松原周二の姿を見かける事になるとは思わなかったからである。
「……これからどうする?」
問い掛けて来たジェイノリーに対して、明は当たり前だと言う様な口調で答える。
「どうするもこうするも、俺達は何とかして周二に接触するしか無いだろーに」
『でもどうしよう? 参加者として参加するのはもう無理そうだし、乱入するにも距離があるし……』
「こんな所でドラゴンに戻って貰う訳にもいかない…か」
観客席でいきなりドラゴンに戻って貰ったらそれは大パニックだ。
自分達は追われている身だからこそ、周二が居ると分かればさっさと合流して逃げなければいけない。
ゼキとマーレイは何処か離れた場所に観戦しに行ったらしく、席が分からない位に離れているのが救いだった。
「とりあえず、参加者達の集まっていそうな場所に向かうか?」
「それが良いだろう。ここで待つよりも遥かに出会える可能性が高いからな」
となればさっそく行動開始……と思ったが、ここでシュヴィリスが次の試合の2人を見てぽつりと呟いた。
『……まずい』
「えっ?」
「どうしたシュヴィリス?」
そのセリフを大歓声の中でも聞き逃さなかった2人に対して、シュヴィリスは顎でクイッと石舞台の方を示した。
その石舞台の上には緑色の髪の毛をした男が、その細身の身体から繰り出されるロングソードのテクニックで相手を翻弄しながら戦っている。
「あいつ等がどうかしたのか?」
『正確にはあの緑色の髪の男の方だよ。間違い無い……あれは僕と同じドラゴンだよ』
「え、ええっ!?」
まさかのセリフに明もジェイノリーも驚く。
ドラゴンまでこの大会に参加しているのか? そもそも人間になれるドラゴンがこの世界にも居ると言うのか?
色々と頭の中がこんがらがりつつも、あの男がこのまま勝ち進んだらいずれ周二と対戦する事になる。
『相手がドラゴンなら幾ら周二でも勝ち目は無いだろうね。それに、人の姿になれるドラゴンって言うとドゼウスの回し者って言う可能性もある。このままじゃ周二も僕達も危ないよ!』
「そ、そうだな!」
「ならば周二に会いに行こう!」
焦った様子のシュヴィリスに明とジェイノリーも頷き、観客席から移動を開始した。
そんな一行の様子を見て動き出す人間が1人。
腰にロングソードを携えたその男は、気がつかれない様に自分も観客席を立って移動を開始する。
わざわざドゼウスまでやって来たのだし、一行の中に居るあの青い髪の毛の男はあの時城に落ちて来た……。
「……見つけたぞ」
そう呟いて口元に僅かな笑みを浮かべ、ロズバン・レーセリアは竜に選ばれたドゼウスの騎士団員の顔つきになった。




