第47話(マッハサイド):決勝トーナメント1回戦
バトルBGM
Break up! 宮崎歩
https://www.youtube.com/watch?v=s0LrJa0izgQ
決勝トーナメント1回戦がスタート。
相手の壮年の男、ドロン・ルータはどうやら棒術使いの様である。
周二は口数も少なく自分の意見を言う事も滅多に無い性格ではあるが、試合となればその体格に物を言わせてガンガン攻め込むタイプである。
なので普段の彼からはイメージ出来ない攻めの姿勢に圧倒される人間も少なくない。
ちなみに武道大会にはきちんとルールがある。
相手を殺したら殺してしまった相手(加害者)が負けになる。
相手を落としたら(リングアウトの場合)はそこで試合終了で落とした選手の勝ち。
相手の武器を落とす、もしくは破壊した場合も勝ち。
制限時間は1試合30分。判定による勝ち負けは無く、引き分けの場合はその両者とも敗退となり、次戦の相手は不戦勝。
失神等で意識を失くした場合も負け。
他、審判が競技者の負傷等によりこれ以上の続行が危険と判断した場合は、レフェリーストップで強制的に敗退させられる。
事前にこうした武道大会のルールを聞いていた周二だが、武器を持っていても恐れずに攻めるのが彼のやり方なのである。
どう出て来るかを待つよりも、相手に対して攻めて攻めて攻めまくる。
下手に守りに入って悔いが残ったまま終わるよりは、1人の格闘家として限界まで攻めてそれで負けた方が本望だからだ。
なのでドロンに対しても棒術使いだからと言って臆する事は無い。
2年前と去年行われた、ヘルヴァナールへトリップしたメンバーの35人全員を集めてランキングを決定する「仲間内ランク付けバトルテスト」では1年目が35人中第22位、35人中第18位、と稲本明に続いて丁度半分位の位置になった。
だけどそれでも半分まで行けた、と考えればまずまずの成績である。
上位の10人は武術経験が30年以上あったり、複数の武術や格闘技のインストラクター資格を1人で取得していたり、現役の軍人や元傭兵と言う「実戦」の経験が豊富な人間ばかりだからである。
ヘルヴァナールに居た時も今目の前に居るドロンの様な、本物の武器を持った連中と戦わなければいけない事もあった。
だから向こうで武器を持った相手と特訓させて貰い、それからトップランク10の人間達の中で同じチームに所属している人間も何人か居るので、地球に戻って来てからもプロレスや総合格闘技以外に武器を持った相手に対しての護身術だったり武器を奪い取ったりと言う事をトレーニングさせて貰っている。
それからこの体格からして周二は動きがスローモーだと思われがちなのだが、プロレスのテクニックではアクロバティックな動きもあるので、ボディビル体型からはイメージ出来ない前方へのハンドスプリングやバック転等も習得している。
そうした経験から今回のドロン相手でもビビる事なんて何も無い。
予選は確かにレベルが高かったが、それでも勝ち抜く事が出来たんだから自信を持って良い筈だと自分に心の中で言い聞かせる。
それに今周二が立っているこの石舞台、外は砂地になっているのでこの立地条件を上手く使えば行けると彼は踏んだ。
ふーっと息を吐き、一直線に突っ込んで行く周二。
それを見てドロンは棒を構え、周二の向かって来るルートを読んで迎え撃つ。
明らかに直線的な動きだと思い、まっすぐ棒を突き出してそのみぞおちに食らわせて悶絶させてやろうと思ったのだが、周二は棒が突き出されるのをドロンの動きでタイミングを見計らった。
「すっ!」
パンっと棒を腕で弾き、そのままの勢いで屈み込みながら腕を伸ばす。
その伸ばした腕でドロンの右足を掴んで足首を脇腹に押し付ける様な体勢をとってから、素早く内側に身体を捻って錐揉み回転しながらドロンを投げ飛ばす。
「ぬお!?」
幸いにもリングアウトはしなかったものの、体勢を立て直して起き上がる前に周二の足が顔面に迫って来る。
名前の通り、サッカーボールをキックするかの様に足の甲で相手をキックする事から名付けられた「サッカーボールキック」がドロンの胸に2発、顔面に1発ダイレクトヒットした。
ちなみにサッカーボールキックは総合格闘技でもプロレスでも使われるテクニックであるが若干の違いがあり、総合格闘技では頭部を主に狙うのに対してプロレスでは背中や胸をメインに狙うのだ。
「ぐへぇ!?」
顔面を抑えて悶絶したドロンに対しても容赦はせず、マウントポジションをとって自分の体格で抑え込みながらドロンの顔面にパンチのラッシュを叩き込む。
「そ、そこまでっ!! 勝者、シュージ・マツバラ!!」
それを見ていた審判の青いマントを羽織っている騎士団員がストップをかけ、この瞬間レフェリーストップで周二の勝ちが決定した。
ドロンは起き上がれる様な状態では無い。だけど起き上がれる様な状態にまでしなければ試合続行になってしまい、自分がやられる展開に繋がる……と周二は考えていた。
「……」
そんな相手を冷めた目つきで見下ろし、周二は無言で観客席のどよめきとざわめきと視線を感じつつ石舞台から降りて行った。




