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第43話(マッハサイド):それぞれの休む場所

(レベル高いな……)

 武道大会の予選を何とか勝ち進んでいる周二。

 今の様に素手で参加する人間は圧倒的に少ない。いや、予選会を見る限りでは彼1人らしい。

 そもそもこの世界にやって来て武器を買う金を持ってないのが痛い所である。

 例えばこれがプロレスの試合であれば、フォークを突き刺したりパイプ椅子を持って場外乱闘に発展したりと言う様にダイナミックかつ流血沙汰になる事も珍しくない。

 ただしそれはあくまでプロレスの中で組まれた台本の中である事が殆どで、この世界にやって来て自分から武器を持って戦いに行こうとは余り考えていなかった。

 あくまで戦う事が目的では無く、情報収集が目的なのだから。


 だから予選で適当に負けて、その後で予選に参加しに来ていた人間達に色々と地球に関しての情報を聞き出そうと思っていた周二だったが、いざ予選会場のリングの上に上がると向かって来る相手に対してそうも行かなくなった。

 だから戦った。

 プロレスのテクニックは非常にダイナミックなので、見ている者にインパクトを残しやすいのが利点であり難点でもある。

 地球であれば難点は別に無いが、ここは異世界らしいので余り目立ちすぎると何か変な団体とかに目をつけられたら厄介だろうと周二は思ってしまった。

(でも、適当にパンチとか打ってもダメなんだよな……)

 だからジャイアントスイングで投げ飛ばしたり、強烈なラリアットを決めたり、ボディスラムをぶちかましたりしてもうその辺りは気にしない様にしていた。


 本線日まではまだ時間がある。

 予選会場を後にして、周二は適当に何処かで夜を明かす事にする。

 今は彼に手伝って貰った店がローテーションで彼に寝床を用意しているのだが、今日は何処も手伝っていないので寝床も当然無いホームレス状態だった。

(何か惨めだな)

 それもこれもあの光が全て悪いんだ、と六本木のクラブで自分達を包み込んだ虹色の光に恨み節を吐きつつ、相変わらずの人込みでごった返すメインストリートから1本入った裏路地の飲食店の裏にある休憩用のベンチで夜を明かす事にした。

(武道大会には騎士団? の連中も出て来るって聞いたが、話を聞く限りではもっとレベルが上がっていそうだ)

 やっぱり適当に負けるか……と考えつつベンチに横になる周二だが、この適当に考えていた事に対して大きな災いが降り掛かって来る事になろうとはこの時の彼は思いもしていなかった。


「こ、ここ……?」

 マーレイに案内して貰った家と言うのは、まさかの大豪邸。

 明らかに一般庶民の家でも何でも無い、それこそ……。

「ニースとかのセレブが住んでいそうな家だな……」

「あー分かる。日本でいったらシロガネーゼとかって奴だよ。要するに金持ってるリッチな奴等の家だろ」

 2人は思い思いの言葉を吐き出す。

 その横には人間の姿になったシュヴィリスが、マーレイに指定された庭の雑木林にソアラを置いてからやって来ていた。

『人間じゃない者が住むには、少し大きすぎやしない? もしかして君……人間じゃないのもそうなんだけどさぁ、実際の所は相当高い身分だったりするでしょ?』

 そのシュヴィリスの問いかけにマーレイの雰囲気が変わる。

「へぇ、何故そう思うの?」


『特に深い意味は無いけど、こんな大豪邸を僕の家って言うにはちょっと違和感があってね。まだ子供っぽいのにこれだけの家に住む事が出来るのは、それは相当なお金持ちじゃないと無理だと思うけどねぇ、僕だったら。それに、この家は1人で住むには大き過ぎる。メイドや使用人が居たって使わない部屋も沢山あるのが見ただけで大体分かるもん。そうなると兄弟が居てその兄弟も一緒に住んでいる、もしくは前に一緒に住んでいた。後は……そうだね、貴族の人間なら誰か別の貴族とかのお偉いさんをこう言う所に呼んでパーティをするとかって言うのがしっくり来るんだよね』

 どうかな? とシュヴィリスは半分魔族の少年? に一気にペラペラと自分の予想を述べてみる。

 問い掛けられた半分魔族の男はニヤッとした笑みを浮かべた。

「ふぅん、成る程ねぇ……竜の考える事もなかなか良い線行ってるよ。でも今は僕の口からは言わない。時が来たら自然に分かるよ」

『その自然に分かる時が、僕等にとって不利な状況だったとしても?』

「かもね。それは君達の出方次第だよ。……それじゃ中に入ってよ。ゼキも休ませなきゃいけないんだし」


 口調こそまだ子供っぽいものの、明らかにマーレイの雰囲気がシュヴィリスが予想を述べる前とは違う。

「……マーレイって奴、何か妙じゃねえか?」

「そうだな。泊めてくれるのはありがたいが、警戒は怠るなよ」

 その様子を隣で見ていたジェイノリーと明は、1人と1匹のやり取りを見てそう言い合ってから顔を見合わせて頷いた。

 とにもかくにも寝床を用意してくれるのは助かった。

 寝床がしっかり用意されている者達と、用意されていない男を平等に月が照らすカイザスタン帝国の帝都マイセンの夜はこうして更けて行ったのである。

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