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第33話(マッハサイド):駆け上れ黒竜の塔

 茨の茂みがこの塔の周りを覆っている為に、人が通れるだけの道が余り無さそうなのもこの塔の周りに人気が無い証拠だろうか。

 しかしそれが逆に、ジェイノリーとシュヴィリスにとっては探し物がしやすい事に繋がっている。

 余計な邪魔が入らないならそれで良いからだ。

 最初にこの塔に入った時の感想は『かび臭い』。

「何か臭いな……」

『多分この塔、誰かが住んでいたみたいな感じだけど……それなりに年月経ってるからやっぱり臭うんじゃない?』

 人気ひとけが微塵も無いこの塔の内部は螺旋階段状になっており、何処までも伸びるその螺旋階段の脇には幾つものドアがあった。

『全部開けるしか無さそうだね』

「ああ……何かその、アイテムの波動とかは感じないのか?」


 すがる様なジェイノリーの問い掛けに、力無くシュヴィリスは首を横に振った。

『そこまで万能じゃ無いよ、僕は。この世界の人間じゃない連中なら分かると思うけど、僕はこの世界の龍族じゃ無いからね』

 じゃあやっぱり全部見るしか無いか……とジェイノリーは落胆しつつ、明の事もあるのでさっさと全てを見て回るべく手近なドアを開ける所から探索がスタート。

 かび臭い、ホコリ臭い、その臭さによって1人と1匹の気持ちも辛気臭いと3拍子揃った中で、元の世界に戻りたいと言う気持ちだけを原動力にして探索を進めて行く。

 高級そうなシフォニエや、年月は経っているが明らかに仕立ての良い絨毯等が部屋に置いてあるのでその1つ1つを開けたり捲ったりしながら進まなければならない。

 地道で骨の折れる作業である。

 あのカラと言うザカタリス王国の騎士団長が言っていた事が本当ならば、ここの何処かに次のアイテムがある筈。

 そうで無かったらこんな所には来たく無いのがジェイノリーの本音だ。


 そんな探索作業も少しずつ上に上にと進んで来たのだが、どうやらこの世界の神は1人と1匹に対してまたもや敵に回る様だ。

『……えっ?』

「どうした、何かあったか?」

 何か見つかったのかと言う意味で聞いてみたジェイノリーだったが、シュヴィリスはどうやら違う意味に捉えたらしい。

『大有りだよ。ここに誰かが入って来た!』

「え?」

 別の意味で修羅場を迎えそうな予感をさせるそのシュヴィリスのセリフに、ジェイノリーも耳を済ませてみる。

「……何も聞こえないが」

『まだ下の方に居る。でも確実にこっちに来てるよ!』

「数は?」

『1人……だけど、殺気が凄いよ』

「まずいな。このまま調べていたら確実に追いつかれる。身を隠せる様な場所も無さそうだし……」


 突然の侵入者情報を告知したシュヴィリスに、ジェイノリーはこうなったら……とこんな提案を。

「俺が最上階まで上る。その間に探索を続けてくれ」

『えっ!? 無茶だ、幾ら何でもジェイノリーだけじゃ……』

「このまま何か見つからない可能性が高くなるよりは、少しでも何かを見つけられる可能性が高くなる方が良いだろう。一緒に元の世界に帰るって気持ちは同じ筈だろう?」

 冷静にそう説得するジェイノリーに、シュヴィリスは渋々と言った表情で頷いた。

『……分かったよ。だけど無茶しないでね。駄目だと思ったらすぐに引き返して下に下りるんだ』

 しかし、ジェイノリーはここで意味深な頼み事をして来た。

「分かった。それなら、その事で保険を掛けさせて欲しいんだけど……」

『保険……?』

 何だそりゃ、と思うシュヴィリスに対してジェイノリーはその『保険』の内容を手短に説明し始めた。


「……それじゃ、そう言う事でよろしく」

『無茶するね……一応頑張ってはみるけどさ』

 保険の相談も終わり、シュヴィリスはその場にまずは留まる。

 ジェイノリーの耳にはまだその足音は聞こえて来ないものの、ドラゴンであるシュヴィリスがそう言うのであれば今はそれを信じるしか無いと頷いてから螺旋階段を上に向かって駆け出した。

 格闘技のトレーニングでは階段の上り下りのメニューもあった。

 4階建ての建物の階段を1階から4階まで10往復したのはもう遠い過去の記憶。

 そんな記憶が一気に頭の中にフラッシュバックしつつ、ジェイノリーは階段を駆け上がる。

 だけど全力で駆け上がりたい気持ちを抑えて、今は全力一歩手前のハイペースで「流す」様に駆け上がる。

 いざと言う時に体力を残しておかなければ何があるか分からないからだ。

(螺旋階段じゃ無いけど……確か、タイの映画でこうやって上に向かってタワーみたいな場所を上りながら敵を倒すシーンあったよな……)

 しかもそのシーンは4分間のワンカット長回しシーン。

 今の自分にとっては敵が居ないだけまだマシであるとちょっとだけ安心していたが、後ろから確実に上に向かってやって来ているであろう相手に対しての不安と恐怖に対してはやっぱり安心出来そうに無かった。

 それでも今は上に向かって進んで行くしか無い。

(この世界は俺達に対して試練を与えるのが常識になっているのか?)

 そうだったら恨んでも恨み切れ無いと悪態をつきながら、ジェイノリーは一定のペースを維持しつつ階段を駆け抜けた。

https://www.youtube.com/watch?v=RRBrPNKYlA8

ノーカット4分長回しシーン。

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