表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/100

第29話(マッハサイド):金属の正体

「何この馬車? 堅そうだし馬が居ないのに走る訳?」

「どうやって走るんだ……? 魔獣かこれは?」

 マーレイとゼキが兼山の30ソアラを見て訝しげな顔つきになる。

 この世界ではどうやら科学技術の類はあるみたいなのだが、この辺りの地域ではそうした物は浸透していない様だと明はこの時悟った。

(あー、あの高松って殿様が言ってたのは……こっちみたいに科学テクノロジーが浸透していない地域に伝えちゃうとパニックになるかも知れないからなのかな?)

 実際の所は分からない。

 だけど、こうして実際に見られてしまった以上……そしてこの30ソアラを動かさなければならない以上は口止め付きで説明しておかなければならないだろう。


「説明しても良いけど、この事について口外しないって約束してくれねえか? 俺も口止めされてるんだけど、見られた以上はやっぱ説明しないとそっちも納得しそうに無いからよぉ。特に雪の女王様とそのお付きみたいなあんたはさ」

「我は別に構わん。ただしその分はしっかり説明して貰うからな」

 意外にも最初にOKの返事で口を開いたのはコノエである。

「僕も別に言わないよ」

「俺も約束しよう」

『わらわも約束する。して、これは一体どう言うものなのだ?』

「えっと、これはだな……」


 他の3人からも了承の返事を貰った明は簡単に自動車の成り立ちを説明し、自動車には小さなネジまで数えると3万以上のパーツの数があると言う事や、エンジンを動力にしてそのエンジンのパワーをタイヤに伝えて走る事、色々な自動車の種類があって、このソアラは趣味のジャンルで乗っている高級車のジャンルに分類されるものだと言う事等、元プロレーサーとして活動出来る位に車に精通している明が自分の持てる知識の全てを異世界の人間と精霊に伝える。

「……と、言ってもそっちにとっちゃあ身近な存在じゃ無いから意味分かんねーよな。実際に動かした方が早いだろ」

 とは言うものの、車を動かす為に必要なキーが無ければドアも開けられない。

 どうやって動かそうか……と明がソアラの中を覗き込むと、そこには信じられない光景があった。


「あれっ、キーが差さりっ放し……?」

 何と、キーを差し込むキーシリンダーに鍵が差さりっ放しである。

 しかも……。

「ありゃ? ドアもロックされてねーな。あいつは全く不用心だな。でも、これならこのまま動きそうだな。まぁ、インロック(車内にキー閉じ込め)してないだけ良かったかな」

 ぶつぶつとそう呟きながら、まずはボンネットをガコンと開けて動力源のエンジンを見せる。

「これがエンジンだ。これが動力になってこの車体を動かしてくれる。このエンジンが無かったら自分達で押したり引っ張ったりして動かすしか無い」

 晴れ渡る雪山の空の下でソアラのボンネットを開けたまま説明する。

 それと同時に兼山のソアラかどうかを再度確認。

「あー、1JZーGTEのままだし……しかも愛媛ナンバーだしこのエアロのソアラは間違い無く兼山のだ」

 今の時代、もうワンサイズ上の2JZ-GTEにエンジンを乗せ換えるソアラも多いのだが兼山は「町乗りには別に要らねーよ」と言って載せ替えて無い。

 そして兼山の出身である愛媛県のナンバーから、やっぱり兼山のソアラだと明は断定する。


 しかし、ここでソアラを動かすに当たって明には不安要素が。

「やべーよこれ寒冷地仕様じゃ無いし、おまけにハイグリップタイヤ(公道走行可能なレース用1歩手前タイヤ)だからこんな場所走れねーよ」

 雪山でハイグリップタイヤなんて自殺行為そのもの。ノーマルタイヤでも危険なのに。

 それに唯でさえ雪に弱い駆動方式のFRなので、下手しなくても何処かにすっ飛んで行く可能性しか見えない。

 寒冷地仕様で無ければこう言った寒い場所にこのまま放置しておくだけで、車のバッテリー性能がダウンしてしまいエンジンが掛からなくなってしまう。

 雪が余り積もらない名取出身の明でさえ、自分が乗っている三菱GTOも寒冷地仕様なのだ。

 ちなみにもう1台の愛車EG6シビックには、メーカーの方針で元々寒冷地仕様が設定されていない。


「とりあえずエンジンだけでもかけるか」

 エンジンさえかけてしまえば少しでも理解してくれるんじゃ無いかと思い、バッテリー上がって無きゃ良いけど……と思いながらロールバーで固められた車内に手を伸ばしてキーをひねる。

 その瞬間キュルルルルルと音を立ててエンジンに火花が飛び、無事にエンジンがスタートする。

「うわっ、びっくりしたぁ!?」

「そうか、これが動力源なんだな」

 マーレイは30ソアラのエンジン音に思わず耳を塞ぎ、ゼキは冷静な口調で分析をしてみる。

 だけど、コノエと雪の女王はどうやら不愉快らしい。

「……何だこの風は。汚れに満ちている……」

『者ども下がりなさい。穢れが移る』

 排気ガスは大気汚染に繋がるので、雪の精霊達にとってはNGらしいと明はエンジンを止める。

「……実際走っている所を見せられれば良いんだけど……まぁ、無理っぽいかな」

 走らせられないなら30ソアラをどうやって運ぶか……それが問題だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ