第28話(マッハサイド):敵意と金属
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【オリジナルBGM】雪山などの洞窟用
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この状況、一体どうすれば良いんだろうか。
どう考えても友好的な人物達には見えない目の前の白い連中を見据えつつ、明はどうやってその異物の元に辿り着くべきかと懸命に頭を回転させる。
「あー、えー……ちょっと待ってくれ。この2人と俺はまず無関係。で、俺はここに探し物をしに来た。で、その探し物を回収したらそっちにもう用事は無い。それで良いか?」
でも敵意を感じるこの視線は、依然変わらぬまま明に突き刺さった状態である。
「えっと、あの……ど、どうすりゃ良いの俺? 帰れば良いの? いやあのな、俺もほら……ここに来たくて来た訳じゃねーよ。だからええとな、俺はとにかくお目当ての物を探したら帰るって言うか、本当にそれだけの事だから……」
凄くしどろもどろになってしまうのが自分でも良く分かる明だったが、実際にこれだけの人数に囲まれてしまえばしどろもどろにならない方がおかしいと自分でも思えてしまうのである。
そんな明の様子を見ていた、先程出会ったばかりの赤い目の男が口を開いた。
「この男の言う通りだ。俺とマーレイはこの男とは何の関係も無い、俺とマーレイはただ、このリースレインの次元が異変を起こしたみたいだから調査に来た。それだけだ」
「そうそう、ゼキの言う通りだよっ! その異変が何だったのかをこっちも調査に来ただけだから。そっちに対して何もするつもりは僕等も無いよ!」
冷静な口調ではあるが力強い赤目の男と、少年らしい顔つきと声色で訴えかけるもう1人の男に対して目の前に佇む集団のリーダー格らしい白い男も口を開いた。
「……とにかく、我等と一緒に御前達は来て貰うぞ。本来であればここで大地に眠って貰う所だが、まずは言い分を聞けと女王から言われているのでな。着いて来い」
敵意は相変わらずむき出しだが、それでも今の状況で何とか殺されずには済みそうなので素直に明とゼキとマーレイは白い集団の後ろを着いて行く事になった。
「あー、何かこう言うの見た事あるわー……」
まさにそこは氷の家……と言うよりも神殿と言うイメージがぴったり。
案内された先に待っていたのは、小さな建物が立ち並ぶ雪の村とその近くにある氷の神殿であった。
そして、その神殿の玉座らしき場所に座っていたのは青っぽい白の長い髪の毛をしている女だった。
『ほう、そなたが我が雪精族の領域への侵入者とな』
何か面白いものを見る目つきで見つめて来る女に対して、明はここの寒さとは別の悪寒を覚えていた。
(RPGに出て来そうな場所だし、目の前の女もそれっぽいキャラだし、そしてこの展開もすっげーRPGっぽいもんだし……)
RPG好きな明は一種の感動を覚えていたが、感動に浸っている時間は無さそうである。
明がまず最初に女王っぽい人間に問い掛けられたし、わざわざ山頂までこうしてやって来たゼキとマーレイも明に答える様に促す。
「……まぁ、そうなんじゃないですかね? でも俺は別にそちらに危害加えようとか、そう言うつもり全然無いですし。ただその、ここに俺の探し求めている物があるってザカタリスって言う国で聞いたもんですから、それを探してここまで来ただけです」
別に戦いに来た訳じゃ無いので、不必要なテンションを作らない様に明は答える。
そんな明の回答に対して女王はこう口を開いた。
『探し求めている物か。それはどう言った物だ?』
だけど、肝心のその内容が良く分からないから明だって困る。
「うーん、それが良く分からないんですよ。ザカタリスで言われたのは、見た事の無い形に見た事の無い金属の集合体で大きな異物って事だけでした。ここにあるって話だから、実際に見る事が出来れば分かるとは思うんですけど……」
実際アバウトな事しか言われていないので、明もこう説明するしか無い。
だけど、その説明で女王はある事を思い出した。
『……そう言えば、村の外れに奇妙な赤い物体が落ちて来たと雪の精霊から報告があったな』
「え?」
「あー、それたぶん僕等の考えてるのと一緒かも」
まさか……と言う顔つきをするゼキの横で、マーレイが納得した様に頷く。
「うーん、やっぱ実際に見てみないと何とも言えないですよ。それ、俺にも見せて貰えませんか?」
『ああ、構わん。それじゃあコノエも一緒に来てくれ』
「分かった」
コノエと呼ばれたリーダー格らしい男に促され、明とゼキとマーレイは雪の女王の後に続いて氷の神殿を出る。
そのまま雪の集落を抜けて、少し進んだ所にある広場の様な場所。
そこに雪が降り積もってはいるものの、明にとっては見た事がある物が存在していた。
『これの事なんだがな』
女王に手で「それ」を指し占められた明は、驚きを隠せない顔で一言呟いた。
「……え、いや……ちょっと待ってくれよ……そう言えばあいつ、今日はこれで来てるから酒は呑まないって言ってたけどよぉ……」
丸っこいボディにロングノーズのそのフォルム、純正カラーのレッドマイカで塗られたボディにヴェルテックスのエアロを装着するそのマシン。
それは間違い無く、兼山信也のJZZ30トヨタソアラ2.5GT-Tだったのだ。




