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第25話(水都氏サイド):二つの目的地

「それじゃあ…ここの他にも地球から何かが落ちてきたって場所が二か所もあるというわけか」

「ん…?ここにもって、そういや籠手ってなんだ?」


 ジェイノリーの言葉に、明は訝し気に眉を寄せる。


 そう言えばまだ見せていなかったなとジェイノリーは受け取ったグローブを明の前に差し出した。


「この城にはこれが出現したようだ」

「これって…淳のグローブじゃねぇか!」

「ああ、やはり淳のものだったか」


 驚いたようにグローブに手を伸ばす明に、ジェイノリーは己の予想が当たっていたことに満足して一つ頷いた。


「…俺たちと同じようにこの世界に現れた仲間たちの持ち物…、無関係ではなさそうだ」

「すると、これを集めていけばいいってことか?」


 明の言葉に、ジェイノリーはしばし考えるように目を伏せて、それからゆっくりと頷いた。


「それが良さそうだ。何にせよ、手掛かりになるかもしれん」


 ジェイノリーと明の会話を聞いていたカラがそれならばと口を開く。


「…ならばここからならリースレイン連峰が近い。雪精霊の住む氷雪の大地深くにある険しい山だ」

『僕が送っていけばそう難しくもないよ』


 シュヴィリスの言葉に、明の顔が明るくなる。


「おお、それなら俺が行くぜ!雪山とか楽しそうじゃねえか!」

「では、俺はドゼウスとやらに行くか」


 にっと笑みを浮かべた明とジェイノリーは顔を見合わせた。


「決定だな」

「おし、やってやろうぜ!」


 目的も決まり、意気揚々と二人は手を突き合わせる。


「…話はまとまったようだな」


 こつん、カラの杖が床を打つ。

 背後のカインを振り返り「荷を返してやれ」と顎で指示をだすと、カラは二人と一匹を見つめて口を開いた。


「お前たちが目的を達成できるよう祈っている」

「…ありがとうございます」

「ありがとな!」


 頭を下げる二人に、カラはゆっくりと頷いた。

 そうこうしている間に、革袋を一つ抱えたカインが戻ってくる。


 そのまま、ずいとジェイノリーの前に袋を差し出した。


「貴方の荷物だ」

「どうも」


 ジェイノリーは中を確認し、無事に荷が戻ってきたことに安堵する。


 ふとスマートフォンを手に取ってみるが、今は電波が入らない状態のようだ。

 あの時、明と連絡した時は通じたのだが、場所によって電波が入る箇所があるということだろうか。


 冷静になって考えてみると、ずいぶんと不思議な現象だ。

 異世界であるのに電波が飛んでいるなど、普通に考えればおかしいことだ。


 言葉が普通に通じることといい、何か不可思議な力が働いているのだろうか。


「どうかしたのか?」


 じっと考え込むジェイノリーに、明がそう声をかける。


「…ああ、電波がここでは入らないのだと思ってな。電波といい、言葉が通じることといい、何か不思議なことが起こっているような気がするのだ」

「ああっ、そう言えば言葉は通じてるな!」

『あ、そういえば…何でだろう?』


 首を傾げる明に、シュヴィリスもまた唸り声を上げた。

 そんな彼らに、カラが何かを思案するように目を伏せてから一つの推測を口にする。


「…”でんぱ”とやらが何かはわからないが、可能性として次元の壁を越えるときに何か変異が起きたのかもしれない」

「ああ、それで魔術の影響もなくなったのですね」

「あくまで、可能性の一つというだけであるが」


 カインも納得がいったように大きく頷いた。


 ジェイノリーにとっても、その仮説は他にこれといった理由もない中で有力な説のように思われた。

 相変わらず電波が通じることに関しては謎のままだが、ひとまずそういった不思議が起きているのだろうと結論付ける。

 わからないままでいるより落ち着いた心地がして、ジェイノリーは小さく息を吐き出した。


 ある意味、ここで明と出会えたことは幸運であった。

 さらにはシュヴィリスもいる。

 一人でないというのは、気持ちの上でも大分楽になれた。

 何をすればいいのか、目的を得られたことも大きい。

 異物を調べて行けば、いずれ他のメンバーにも会えるのではという希望すら湧いて来る。


 ジェイノリーは改めてカラ達へと向き直った。


「いろいろ教えて頂きありがとうございました。自分たちは遺物の回収へ向かいたいと思います」


 礼を述べれば、レゼーテはふんと鼻で笑った。


「これほどの些事、気にすることなどなくてよ」

「気を付けて行けよ!」


 レゼーテの言葉に、軽い口調でグードリンが手を振って言った。


 自分たちと同じように飛ばされてきた仲間たちが、この世界のどこかにいるのかもしれない。

 どうか無事でいて欲しいと願いながら、ジェイノリーはこのザカタリスで出会った面々に別れを告げて明と共にシュヴィリスの背に跨った。


 翼を広げ、青い竜が大空へと飛翔する。

 それを見送るレゼーテにグードリン、カインにカラに向かい頭上から手を振る明とジェイノリー。

 西へと飛び去ってゆく影を見送りながら、カインは小声で傍に立つ騎士団長に向けて囁いた。


「…教えなくて良かったのですか?リースレインは雪の女王の治める閉ざされた大地。人族が行くには危険があると」

「…それで排されるならそれも一興。我らは道を示したまで。進むかどうかは、彼ら次第さ」


 可笑しそうに口元に笑みを浮かべるカラを見やって、カインは空の彼方へと消えた異邦人たちを思い目を伏せた。

 彼らが無事に故郷へたどり着けるといい、そう願いつつ歩き始めたカラに付き従い、カインは王城へと姿を消した。

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