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第20話(マッハサイド):パワースタイルvsテクニックスタイル

バトルBGM

Eternal Ring Music - 28 - Soulus

https://www.youtube.com/watch?v=oY5aVL83s8Q

 力強さが自慢らしいそのロングソード捌きでジェイノリーに襲い掛かって来る男。

 ジェイノリーも12歳から実に29年の武術経験を生かして、そう簡単にはやられないと決めて迎撃する。

 ロングソードの振り下ろしを回避し、がら空きの脇腹にミドルキック。

 でも、鎧を着こんでいる男相手にはそのミドルキックも全くと言って良い程効果が無いのだ。

(くっ、まずいな)

「そりゃあ!!」

 男の薙ぎ払いがジェイノリーの横に積まれている木箱を粉砕する。

 見かけ通りのパワー戦法らしいが、それでもなかなか狙いは的確だ。

 転がってそれを回避して、そこからカポエイラの動きで足を斜め上に向かってぶん回すものの男もバックステップで回避。

 それでもジェイノリーは攻撃の手を緩めず、地面に手をついたまま上手く足と手を使って移動し、何とか男に足払いをかけようと食い下がる。


 更にはそこから側転に繋げて立ち上がり、さっきの積まれている木箱を足を使って男に向かって蹴り飛ばした。

 しかし、それもギリギリの所でかわされてしまう。

「だっはっは! なかなかやるじゃねぇか!」

 楽しそうに男は笑う。

 だけどジェイノリーは全然楽しく無い。

(大きな体格の割には、なかなかの動きを見せる男だな)

 熱血漢な性格ではあるものの、割と策士な一面もあるのかもしれないとジェイノリーは男の性格を読む。

 かなりの実力が相手にある事が分かっても、ここで負けてしまえば今までの逃走劇が全て水の泡になってしまうだけだ。


「なーるほどなぁ、素手でそこまで戦う奴なんて初めてだぜ。それに見た事の無い動き……こりゃあ、尋問のし甲斐があるってもんだぞ!?」

「お断りだ」

 少しだけ距離を取ったジェイノリーに対して、倉庫の奥の広いスペースを存分に生かしたダイナミックな動きで男は再びジェイノリーに向かって来た。

 打撃が余り効果が無いとなれば、後は投げ技か関節技位しか出来るテクニックが無い。

(危険だが、やってみるだけの価値はありそうだ)

「こっちは紅蓮の騎士団として、逃がしたら上からドヤされちまうんでね!!」

 ブンっと大きく回転斬りを繰り出す男の攻撃をバックステップで回避し、「振り切った」その隙を突いて一気にジェイノリーは男の懐へ飛び込む。


 そして少しだけ知っている「ミャンマーのムエタイ」と呼ばれている、頭突きありの格闘技ラウェイからその頭突きを拝借し、男の顔面目がけて頭突き。

「ぐお!?」

 後ろによろけた男に全力でタックルをかまして、ジェイノリーはマウントポジションを取った……のだが。

「甘いんだよ!!」

「がは!?」

 男の頭突き返しがジェイノリーの顔面に炸裂し、マウントポジションを解除されたジェイノリーが反対にマウントポジションを取られる。


 そしてそこに新たな来訪者が。

「音はこっちだ!!」

 バタバタと慌ただしい足音が幾つも聞こえて来て、倉庫の中に幾つもの人影が飛び込んで来た。

「隊長っ!!」

「おお、カイン。遅かったじゃねえかよ?」

「隊長が先走って神殿に行ってしまうからじゃないか。おかげで散々探したんだよ、私達は……」

 疲れ切った表情と声と肩で息をするそのリアクションで、かなり疲弊しているのがジェイノリーにも見て取れるその男は、どうやらこの隊長と呼ばれた男とは知り合いの様である。

「いやーすまねぇすまねぇ。でもほら、この男をようやく捕まえたぜ」

「えっ? あ……」

 マウントポジションを取られているジェイノリーに、そのカインと呼ばれた男が気が付いたのはすぐの事である。

「全く手間をかけさせてくれる男だ。大人しく捕まっていれば、我々もこんなに走り回らなくて済んだのだぞ」


 その声に、ジェイノリーは無言で目を逸らす。

「おいおい、副隊長が直々に話しかけてくれてるんだからよぉ? 目を見てやったらどうなんだ?」

 隊長の言葉にもジェイノリーは無言で何も答えようとはしない。

 そんなジェイノリーの様子を見て、カインは深いため息を吐き出した。

「仕方が無い。「色々と」尋問をしてやれば何かを吐いてくれるだろう。後……この男には何故か魔術が先程効かなかったのだ。原因は不明だが、特異体質の類である事には違いが無さそうだからな。全員で用心して城まで運ぶぞ」

 カインが取り出した荒縄で、ジェイノリーはまるでミノムシの如く抵抗が出来ない様に担がれて運ばれて行く。

(こんな事なら、本当に最初に大人しく投降しておけば良かったか……?)

 そう心の中で呟きながらも、今更後悔したってもう遅いのはこの今の自分の状況を見て明らかなのである。

 せめてこんなミノムシ状態で運ばれるのは身動きが全く取れないので窮屈だし、町中の人間に「ミノムシの人」と呼ばれてしまいそうな程に目立つ格好だし、せめて普通に運んで欲しいと懇願してみる。

「……なぁ、隊長。この格好と運び方はどうにかならないのか」

 返って来た答えは楽しそうな口調だ。

「んん~? それはどうにもならねえな。何せあれだけ素手で暴れられる実力だからな。こうでもしなきゃ何時また逃げられるか分からねぇ」

 こうして申し出をむなしく却下されたジェイノリーの身柄は、首都のボンベックにそびえ立つ王城へと目立ちながら連行されて行くのだった。

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