第14話(マッハサイド):次の目的地の前に立ちはだかる最強の将軍
「はい。どうも凄いパニック状態みたいでしたので、すぐに行ってやりたいんですけどここからどれ位の時間が掛かりますかね?」
高松はその質問に首を傾げる。
「あの龍と一緒に行くのか?」
「そのつもりです」
「ならば龍に乗った事が無い余にはすまんが分からぬ。ただ、ドゼウスと言う竜の集まる国があるからそこの近くまで行けばザカタリスもすぐそこだ」
と言うよりも、明は別の事が凄く気になっていた。
(この世界って、携帯電話で通話が出来る世界なのか?)
和風、洋風問わずこう言ったファンタジー世界にトリップするお約束の展開であれば、現代から持ち込んだ文明の利器は使えなくなってしまうのが当たり前の話だ。
でもここは違う世界。携帯電話が通じる世界もあったって良いじゃないかと明は強引に自分の中で納得する。
「まぁ……良いか。ええとそれで、ザカタリスは何処ですか?」
「ん……ああ、それならせっかくだから地図を渡しておこう」
そう高松に言われ、明は高松が再び懐に手を突っ込んで取り出した地図を受け取った。
それの一部分を指差す高松に対して、明は場所を忘れない様にドゼウスの場所を差した指の写真とザカタリスの場所を差した指の写真を撮らせて貰った。
「これで良し。何から何まで本当にありがとうございます。殿ならきっとこの国、良い国になると思いますよ」
「そう言ってくれるとありがたいのぉ!! はっはっは!!」
しかし、その笑い声も長くは続かなかった。
城の2階部分から何者かが飛び降りて来た。それと同時に高松の声色が変わる。
「はっは……は……ひっ、あ、あれは……佐々木将軍……!?」
「はぁっ!?」
しつこく自分を追いかけて来たのかと思いながらも、明が逃げ出そうとする前に物凄いスピードで佐々木が追い付いて来た。
抜刀をしていない所を見るとどうしても明を捕まえたいらしい。
「ひゃーはははっ!! とうとうここまでだ、逃げられると思うなよとりっぱーああああああ!!」
だけど明らかに雰囲気が違う。果たして同一人物なのであろうか。
「と、殿はお下がり下さい!!」
「ひぃぃ……!!」
高松は腰が抜けてしまい動けない様である。
一方の佐々木は明の前までやって来ると急停止した。フルブレーキ。
「あんたもしつっけーなぁ!! 部下はどうしたよ?」
「部下なら消火活動中だ。お前の放った火に右往左往しておる。今大人しくこちらに来れば貴重なサンプルだから悪い様にはしないが?」
明の答えは非常にシンプルだった。
「絶、対、嫌です」
「そうか、ならばこちらも実力行使だ」
強硬手段に出始めた佐々木だったが、高松はそれでも止めようとしない。
我慢出来ずに、明は先程言いたかった事を斜め後ろで腰を抜かす高松に言う。
「ってか、殿もガツンと言わなきゃダメですよ!! 言ってやって下さいよ、将軍が人間じゃ無くたって、ここでは貴方の方が立場が上でしょ!?」
だけど、高松はブルブルと涙目で首を横に振るだけだった。
「む、無理じゃ……余は将軍が怖いのじゃ……」
「はぁぁっ?」
明は思わず間の抜けた声を出す。
「将軍は色々と研究をしておってな……とても余が止められるものでは無いのだ!!」
「え、ええー……」
絶句してしまう明。マジで勘弁して欲しい気持ちで一杯だ。
「って事は何、この将軍様はマッドサイエンティストて奴か?」
それに答えたのは佐々木本人だ。
「なかなか鋭いでは無いか。そうだ。私は色々とトリッパーや龍の研究をさせてもらっているのだ。中でも青い龍は希少価値がこの世界では高いのでな。だからこそ、城に向かって飛んで来たあの青い龍もサンプルにしたい。いや、させて貰わなければな」
余りにも身勝手な言い分であるその佐々木のセリフに、明の怒りのボルテージがぐんぐん急上昇して行く。
「さっきから黙って聞いてりゃあ、あんたが実質この城の……いや、この国の実権を握っているみたいだな。それで何だって? 今度は俺とシュヴィリスをサンプルにするだと? 寝言は寝てから言うもんだぜ、将軍さんよぉ!!」
強がってはみるものの、佐々木から感じるオーラはやはりシュヴィリスの言っていた人間の物とは何かが違うと明はその直感で思わざるを得なかった。
「だから俺とシュヴィリスはこの国からさっさとおさらばさせて貰うぜ!!」
だけど、佐々木も貴重なサンプルを目の前にしてみすみす逃がしたくは無い。
「くはははは!! 大人しくその腕を1本寄越せぇええええええ!!!!!」
いきなりテンションを変えて来た佐々木につられて、明もテンションアップしてしまった。
「絶対にやだねええええええええ!! こっちが腕ひしぎかましてへし折ってやんよおおおおおおおおおお!!」
相手が人間だろうがそうで無かろうが、この佐々木を退けなければここから逃げ出す事は出来なさそうである。
勝てないと感じた初対面の時のプレッシャーはある。
こいつは強いと素直に感じたのは間違い無い。
それでも戦わなければならない時があるのだとしたら、まさにそれが今だと言う事になる。




