第13話(マッハサイド):意外な手助け
途中で侍達に嫌でも追いつかれたり待ち伏せされていたりと言う展開になるのは仕方が無い事だと明は踏んでいたので、現れた侍達が素手なのを良い事にダッシュからのドロップキック、柔道の背負い投げで相手をそのまま手を離して投げ飛ばし他の侍にぶつける戦法も取る。
更には空手仕込みの前蹴りやダッシュして懐に飛び込みつつの正拳突き。
時には戦わずに、ボクシングで鍛えた反射神経を駆使して侍達の人間ブロックをすり抜ける。
今は戦う事がメインでは無く、この敵だらけの城から逃げ出すのが目的なのだから。
たまに城全体に少し振動が起こる事から、上ではシュヴィリスが暴れまわっているのだろうと思いつつ城の中を駆け回る。
そんな明だったが、やはりここは相手のホームグラウンドの上に人数差では敵わない。
確実に追い込まれている事だけは、本能が警鐘を鳴らす事で理解出来た。
(ちっきしょう……ざけんなよ佐々木!!)
この国の将軍に心の中で毒づいた明だが、目の前に見える交差点を左に曲がった所でグイッと誰かに腕を掴まれて引っ張られた。
「うおっ!?」
何てパワーだと思いつつも、佐々木に待ち伏せされていたのだろうかと明はその手を振りほどく。
しかし、それは意外な人物だった。
「こっちじゃ、とりっぱー!!」
「えっ、あれ……貴方は確か、殿様の!?」
何と明の腕を引っ張ったのは、この陽明の国主である高松だった。
「今は余に着いて来てくれ。ここから出たいのであろう!?」
「……分かりました、お願いします」
高松は佐々木と違って自分に友好的に接してくれていた。
態度の違いが信頼関係の違いとなって現れたんだなー、と明は感心しながら高松の後に着いて隠し通路を通らせて貰う。
その途中で明は高松にどうしても言いたい事があった。
それを言おうと思って口を開きかけた明だったが、高松が口を開く方がワンテンポ早かった。
「あの……」
「おお、そうじゃそうじゃ。とりっぱーに渡したい物があったんじゃ」
「えっ?」
俺に渡したい物って一体何なんだろうかと明が小走りのまま首をかしげていると、丁度隠し通路が終わって1階の正門前へと出た。
つまり外に出たのを切っ掛けにして、明に渡したい物があるらしい。
「これなんじゃがのお……」
ゴソゴソと着物の懐から取り出された物は、何だか何処かで見覚えのある古そうな本だった。
「先程連れて行かれた後に余の勉強部屋で見つけたのだ。もしかしたら稲本殿に関係があるかもしれないと思って、渡せる時に渡そうと思っていたのじゃ!」
「は、はぁ……」
と言われても、明は何処でこの本を見たのか思い出せない。
とりあえず今は貰っておく事にして、改めて陽明の国主に礼を言う。
「有難うございました、殿様。おかげで脱出出来ます! 後……城を燃やして申し訳ありませんでした」
放火をしたのは事実なので、明は素直に謝罪をする。
だけど高松から返って来たのは意外なリアクションだった。
「はっはっは! 良い良い、気にするで無い。もし余の力が必要であれば何時でも言ってくれ。出来る限り力になるぞ」
「はい。でもさっきの俺を引っ張った力、凄かったですね」
ぐいっと引っ張ったあの時の力を思い出して、明は素直に尊敬の言葉を述べる。
「うむ……余も必死だったのだろうな。お主が火を放ったと聞いた時はどうなるかと思ったが、あの将軍には良い薬になったじゃろ」
まさに火事場の馬鹿力じゃ!! と上手く高松が纏めたのを見て、明は煙が至る所から上がっている城を見上げた。
と、その時。
明のポケットが振動している。
「……えっ?」
振動の発生源はスマートフォン。しかもディスプレイには「ジェイノリー」の文字が。
「は、ハロー……?」
まさか電話が掛かって来たのか? と思いつつ明はスマートフォンの通話ボタンを押して返答。
その瞬間、耳にジェイノリーの日本語が聞こえて来た。
『明か!?』
「じぇ、ジェイノリー!? おい、今何処に居るんだよ!?」
『ザカタリスと言う国に居るんだ! 俺達、今とんでもない事になっているらしい。俺は何とかしてここから逃げ……うあっ!?』
「ジェイノリー? お、おいジェイノリー!? ……くそっ、切れやがった!!」
切れてしまったスマートフォンの画面を見つめて明は毒づく。
もう1度掛け直してみようかと思ったものの、向こうも向こうでとんでもない事になっている様なので掛け直すのは躊躇われてしまった。
「な……何じゃこの機械は?」
「これは人と話したり、それ以外にも色々と機能がついてるもんですよ。科学技術は余りバラしちゃいけないんでしょう? だったらこれ以上の事は聞かないで下さいな」
「お、おう……そうじゃったな」
言い出しっぺの人間が約束を破る訳にはいかないので、大人しく高松も口をつぐんだ。
そんな高松に、明は今のジェイノリーとの通話の中で気になった単語について聞いてみる。
「そうだ、殿様。ザカタリスって言う国はご存知ですか?」
「ザカタリスなら、この大陸をずっと東の方に向かうとあるぞ。まさか、そこに今の話し相手が?」
明は神妙な顔つきで頷いた。




