表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モフと不思議な動物たち  作者: 雪野湯
1/4

大きなネコさんと鳥さんとトカゲさん

 くろいかげ……。

 こわい……だけど……。




 


 彼は、形の伴わない虚ろな世界で微睡んでいた。

「モフ、モフ……」

 名前を呼ぶ声が聞こえる。声は、少しずつ遠ざかっていく。

 とても寂しい。

(ご主人様……)





「おい、大丈夫か?」

「う、う~ん」

「おいっ?」


「うん?」

(誰かぼくの身体を揺すってる……ご主人様かな?)

 

 微睡の中にいた彼は、目を開けて起き上がり、身体をブルブルとさせる。そして、辺りをぼんやりと見回した。

 周りは見たこともない緑の景色。たくさんの木々が生えており、どこかの森のようだった。



「ここどこ?」

「ここどこ、じゃねぇよ。寝ぼけてんのか?」

「ん?」

 声が聞こえた方へ振り向くと、そこには見たこともない動物がいた。



 その動物は、真っ黒な毛に覆われた、見た目は猫のような動物。

 見た目は猫であったが体格は普通の猫とは違い、近所に住む猫よりも何倍も大きく、彼とさほど変わらなかった。

 だが、動きは彼とはまるで別物。

 でんと構える彼とは違い、大きな猫はとてもしなやかそうな動きを見せている。


「キミ、だれ? ネコさん?」

「ねこさん? なんだそいつは? それに誰かと聞きたいのはこっちなんだが……まぁいい。俺はシゼルのトーマだ」

「シゼル?」

「そうだ。風のように地を駆け、空を走るように木を登り、魚のように軽やかに泳ぐ。このシーラスの森一番の戦士の一族だ」

「ふ~ん」

「なんだ、その反応……それで、お前は? ここらでは見かけない獣のようだが」

「ぼく? ぼくは秋田犬のモフだよ」

 


 モフと名乗った秋田犬は、身体が大きくがっしりとしており、ピンと張った三角の耳と、くるんと巻いた尻尾を持っていた。

 背中の毛は茶色で、胸からお腹にかけては真っ白。

 丁寧に手入れしてあるのか、モフの毛はふわふわであった。

 

 トーマは聞き慣れぬ獣の名前に、片耳を折りながら訝しんでいる。


「あきたいぬ?」

「そ、いぬだよ。名前はモフ」


「いぬねぇ……聞いたこともない獣だな。どこから来たんだ? 何しにこの森に?」

「何しに? 何だっけ、どうしてここに居るんだろう? 何かあったような?」

 

 モフは首を傾げて、何があったのか思い出そうとする。だけど、記憶は霞がかっていて捉えどころがない。


「ん~、覚えてないや」

「はっ?」

「あの、ぼく、おうちに帰りたいんだけど、ここどこ?」


「いや、だからシーラスの森と……いまいち、要領を得ない奴だな。図体はでかいし強そうに見えたんだが。ただの間抜けなのか?」

「まぬけはひどいよぉ。それより、ご主人様知らない? 勝手に出歩いてると困らせちゃうから、早く帰らないと」


「ご主人様? お前、誰かの御付きなのか? そのご主人様とやらは、どんな獣なんだ?」

「ご主人様はにんげんだよ」

「なっ!? 人間だとぉっ!?」

 

 トーマは、急に大きな声を上げてモフに牙を剥き出す。


「ウウゥ~、貴様! 人間の回し者かっ! 事と次第によっては容赦しねぇぞっ」

「ど、どうしたの? なんで怒っているの?」

「何故怒ってるかだって? 当然だろっ! 人間は俺たち獣の敵だからだ!」


「そ、そんなことないよ、にんげんはいいやつだよ」

「ふざけた事をぬかすな!!」

「ひゃっ」

 

 トーマの大きな声にビックリして、モフは耳をパタリと下げた。

 トーマは牙を剥きだしたままでしゃべり続ける。

「俺だって、弱肉強食の掟は知っている。弱き者は食べられる……だけど、人間達は違うっ! 俺らを食べるわけでもなく、ただ狩りを楽しむだけっ。そのためだけに俺たちを殺すっ!」


 モフは勢いに押されて、ずっと黙っていた。

 でも、モフの知るにんげんは、そんなことはしない。

 

 とっても優しくて、おいしいご飯をくれる良い人たち。だから、トーマの言うようなひどいことは絶対にしないと思っていた。


 だけど、トーマが嘘をついているようにも見えない。

(ここに住むにんげんは、わるい人たちなのかな? わるい人……?)

 


 霞みがかった記憶の中に、くろいかげが浮かぶ。

 そのかげを思い浮かべると、何だか胸がざわつく。

 しかし、それが何故なのか分からない。


(ま、いっか。わるい人もいるだろうし。でも、いい人だってたくさんいる)

 

 モフは胸のざわめきについて、さほど気にする様子もなく、トーマに自分の知るにんげんのことを知ってもらおうと思った。



「ねぇ、トーマ」

「なんだっ」

「トーマの知っているにんげんはわるい人かもしれないけど、ぼくの知っているにんげん、ご主人様はいい人だよ」


「……は?」


「だから、ぼくもいい犬。いい動物だよ。だから、心配しないで」

「はぁ……?」

「もう、怒るの止めようよ。悲しくなっちゃうから」

「はぁ~、なんだコイツ……」

 

 モフが一生懸命に説明をしているのに、トーマは呆れた様子を見せる。

 モフはその態度に、ちょっとムッとした。


「むぅ~、失礼しちゃうなぁ」

「失礼しちゃうって……あ~あ、それは悪かった悪かった」

「あ、そうだ。ところでトーマ」

「あ~、なんだ?」

「僕のおうちどこ?」

「そんなもん俺が知るかっ!」




「ねぇねぇ、トーマ待ってよ」

「…………」

 トーマはモフを無視して、森の中をズンズンと進んでいく。 

 モフは何か気に障るようなことをしてしまったのだろうか?

 だけど、怒っていたとしても、なにがなんでも帰り道を教えてもらわないと、モフは困ってしまう。


「ねぇねぇ、トーマってば」

「うるさいなぁ、なんでついてくるんだよ?」

「他にどうしようないから」

「はぁ~、変な奴に関わっちまったなぁ。もう、どっか行けよ、しっし……ん?」

 トーマは途中で言葉を止めて、モフのお腹の部分を見ている。

「おい、お前、腹を怪我してるのか?」

「え?」

 

 トーマに言われて、モフは自分のお腹の部分を見る。

 すると、真っ白なはずのお腹の毛の一部が赤色に染まっていた。

 モフはその部分に顔を近づけてみる。そこには傷があったが、それは小さく、出血もすでに止まっているみたいだ。

 モフには、その傷がいつできたのか覚えがなかった。

「なに、この傷……? あれ、これって……ううう」

 その傷を見ていると、ズキリと頭に痛みが走った。

 霞が掛かる記憶の向こうにいる、くろいかげ。それが揺らり揺らりと近づいて来る。

 そのかげは、とてもこわいもの。

 モフはブルブルと身体を震わせる。

 


 様子のおかしいモフを見て、トーマが怪訝そうに声を掛けてくる。

「どうしたんだ、おい?」

「えっ?」

「大丈夫か?」

「うん……たぶん」

「おかしなやつ」

 

 トーマの声で気が逸れて、モフの恐怖心はすっかり消えてなくなっていた。その代わりに、家に帰らなきゃいけないことを思い出す。

「そうだ、おうち。トーマ、ぼくはおうちに帰らないといけないんだ」

「俺に言ってどうする? 俺がお前の家なんか知るわけないだろ」

「じゃあ、一緒に探そう」

「なんでそうなるんだよっ。はぁ~……むぅ」

 トーマは立ち止まって、大きく息を吐いたかと思うと、顔を傾けて難しい顔を見せた。

 だが、すぐに何かを思いついたように言葉を出す。


「あ、そうだ」

「なにっ、おうち知ってるの!?」

「ちがうっ。食いつきがはえーよ。ただ、知ってそうな獣に心当たりがあるだけだ」

「だれ、だれ、だれ?」

「鬱陶しいなぁ……森の守り神様であるデュカット様だよ」

「神様なの?」

「ちがう、守り神って言われている獣だ」

「どんな感じの動物なの?」

「会えばわかる。こっちだ」

 トーマは歩き出して、近くの茂みの中へと入っていく。

「あ、待ってよ~」



 

 しばらくてくてくと歩いていると、洞窟が見えてきた。

「この中にいるの? 守り神って動物が」

「ああ、くれぐれも失礼のないようにな」

「大丈夫だよ、ぼく、お手もお座りも待てもできるくらいだし」

「……へぇ~、そうか~」

 トーマは不安そうな表情を見せて、とぼとぼと歩き始める。

 モフはトーマが自分のことを信頼してくれないことが、少し寂しかった。

(ぼくは知らない人や動物に吼えたり、噛みついたりしないのになぁ……)

 


 モフがトーマに案内されて、洞窟に入ろうとすると、頭の上の方から声が聞こえてきた。

「ちょいと、待ちなさい。あなたたち、ここに何用?」 

 モフが何だろうと思って上を向くと、そこには大きな鳥さんがいた。

 鳥さんはモフたちの目の前に舞い降りる。

「久しぶりね、トーマ」

「なんだ、リフォンじゃないか。驚かせやがって」

「あら、トーマは怖がりねぇ」

「んだとっ」

 トーマは大きな鳥さんと知り合いのよう。

 

 二匹の軽妙なやり取りをよそに、モフは見たこともない鳥さんを、興味深そうにジッと見ていた。

(ご近所に住んでいる、南国に住む派手な鳥さんっぽいなぁ)

 鳥さんの背丈は、モフが四本足で立っている状態から、頭一つ分飛び出ているくらいの大きさ。

 頭の方は赤色の羽毛で、胸の部分に白の羽毛を挟んで、胴体は薄い緑色になっている。太陽の光を受けると、羽がキラキラと光って、とても綺麗。


「あの、鳥さんだーれ?」

「あら、これは失礼だったわね。私はグレム族のリフォン。森一番のオシャレさんよ」

「おしゃれ?」

「そう、この煌びやかな羽が自慢なの。それであなたは誰なの?」

「僕は秋田犬のモフだよ。お姉さん」

「やだ、お姉さんだななんてっ」

 リフォンと名乗った鳥は、モフの『お姉さん』という言葉に反応して、照れている様子。

 なんでだろうと、モフが首を捻っていると、トーマがその理由を教えてくれた。


「モフ、そいつは男だぞ」

「え、そうなの。ごめんなさい、きれいだったから勘違いしちゃった」

「綺麗……フフン、いいのよ別に。中々良い子ね。それで、あきたいぬだっけ? 知らないわね。どこから来たの?」

「わかんない」

「ん、それはどういうこと?」

 モフとリフォンは見合って首を傾げる。

 

 その様子を見て、トーマが面倒くさそうにリフォンに事情を説明する。

「こいつが何者で、どこから来たか分からないから、デュカット様にお伺いを立てようとな」

「ああ、それで。じゃあ、私が案内してあげる。ついてきなさい」

 リフォンは身体を左右にひょこひょこと揺らせながら、洞窟の中に入っていく。

 その後をモフは急ぎ足で追いかける。

「うん、わかった。ほら、トーマ。いくよっ」

「ああって、なんでお前が俺に指図してんだよ。全く、調子の狂う奴だな」

 モフはリフォンの案内で、デュカット様という動物に会うために洞窟に入っていった。



 

 モフは洞窟内部が興味深いのか、首を上下左右に振りながら、落ち着きなく歩いている。

 洞窟の中は薄暗く、外の地面とは違いでこぼこしていて、とても歩きにくい。それに外よりも、気温がずっと低かった。

「ねぇ、リフォン。洞窟の中、少し寒いね」

「そうねぇ、寒いの苦手?」

「ううん、雪好きだし。暑い方が苦手。リフォンは大丈夫なの、洞窟の中?」

「私は寒いのも暑いのもへっちゃらよ」

「そうじゃなくて、鳥って暗いところだと目がよく見えないって聞いたことあるけど」

「まーね。でも、グレム族は上級種だから、普通の鳥族と違ってその弱点は克服してるわよ」

「じょうきゅう? 暗いところでも目が見えるから、フクロウさんなのかな?」

「ふくろう? あなた、何を言っているの?」

「二匹とも、おしゃべりはそこまでだ。広間に出るぞ」


 

 歩きにくい道を抜けると、大きな空洞に出た。ただっぴろい空間の奥には、背の高い大岩があって、そこのてっぺんに何か大きな動物がいる。

 トーマは岩の上を見上げて、大きな動物に丁寧な口調で話しをかけた

「デュカット様、失礼いたします。少々、お時間をよろしいでしょうか?」

「おお~、その声はトーマか」

 大きな動物がのそりと首を上げると、モフはちょっとびっくりした声を上げた。

「ふわ~、でっかいトカゲさん」

 大きな動物は全身が緑色の年老いたトカゲさんだった。背中には普通のトカゲさんにはない、蝙蝠のような大きな羽が生えている。

 

 モフがあんぐりと大きな口を開けて見ていると、トーマとリフォンから怒られた。

「お前っ!? 失礼だぞっ!」

「あなたっ!? なんてことを!」

「え?」

 モフは何で怒られているのかわからなくて、首を傾げてしまう。

 

 その様子を見た大きなトカゲさんが、大きな笑い声を上げた。

「ふぉっふぉっふぉっ、トカゲとは。これはまた、愉快なことを」

「申し訳ありません、デュカット様。誇り高き龍族に対して、このような非礼をっ」

「ええ、本当に申し訳ありません。この子、ちょっと変わった子でして」

 トーマとリフォンは慌てた様子で、龍族とかいうデュカットに謝っている。それを見て、モフはちょっと不安になった。

(怖い動物なのかなぁ?)


 しかし、その不安とは裏腹に、デュカットは怒ったような雰囲気を見せなかった。

「よいよい、その獣は私を知らんのだからな。だろう、異界の獣よ」

「いかいのけもの? ぼくは秋田犬だよ、おじいさん。名前はモフっていうんだ」

「ほう、秋田犬というのか。中々よい毛並みをしておる獣じゃのう」

「うん、いっつもご主人様が手入れをしてくれるんだ」

「そうか、それは良い主人に巡り合えたのだな」

「うんっ」



「ちょ、ちょっと待って下さい!」

「そ、そうよ、何よ今の話!?」

 トーマとリフォンが、モフとデュカットが会話を遮るように、驚いた声を上げてきた。

「異界の獣? 何ですか、それはっ?」

「このモフって子、別の世界から来た獣だとおっしゃるの、デュカット様」

「いかにも。それで、帰り道を探しておるのだろう、モフよ」

「すごーい、おじいさん。なんでわかるの?」

「この森で、起こることはなーんでも、知っておるからなぁ」

「すごいすごい。じゃあ、ぼくのおうち、どこにあるのか知ってるの?」

「もちろんだとも。古城の遺跡の奥深くにある門が、誤作動を起こして動いておるのじゃろう。その遺跡に向かえば、門がお前を家へ帰してくれる」

「ほんとっ! それじゃ、ご主人様に会えるんだねっ!」

「ああ」

「わーいっ」

 モフはとっても嬉しくて、その場でぐるぐるとまわり始めた。


 

 浮かれ、はしゃぎまわるモフを見ながら、トーマが何やらぶつくさと言っている。

「全く、騒がしいやつだなっ。人間の主の何がいいんだか……?」

 その言葉に、リフォンが耳を疑うような態度を表した。

「人間の主? どういうこと、トーマ」

「ああ、言ってなかったな。モフのご主人様とやらは人間らしい」

「人間が? もしかしてこの子、私たちの敵なのかしら?」

「あれが、そう見えるか?」

 モフはまだぐるぐると同じ場所を回っている。


「ああ、そうね……」

「それにあいつは、別の世界の獣なんだろ。敵も何もないだろ」

「そうだったわね。信じがたいけど……」

 二匹は呆れた様子で言葉を交わす。

 そこにデュカットが会話に加わってきた。


「あの子には、人間の主がいるのか?」

「え、ええ、そうみたいです。馬鹿げた話ですが」

 トーマが言葉を返すと、デュカットは目を細めて、優しげにモフを見つめた。

「そうか……あの子のいる世界では、まだ人と獣が共に暮らせているのか……」

 デュカットは、はしゃぎまわるモフを通して、何かを思い出しているようだ。

「フフ、つまらない感傷か……モフよ」

「うん? なに」

 名前を呼ばれたモフはようやく回るのを止める。そして、首を傾げてデュカットを眺めた。

「お前は珍しい異界からの客人だ。せっかくだから、わしから加護を授けよう」

「かご? 何それ、おいしいの?」

 モフは加護の意味が分からず、首を捻るばかり。


 そんなモフとは違い、トーマとリフォンは驚いた表情を見せる。

「デュカット様、何もそのようなことを」

「そうよ、異界の獣だか何だかわからないけど、そんなことしなくても」

「よいよい、懐かしい良き記憶を思い出させてくれた礼だ。これ、モフ、少し前へ」

「うん? 何かくれるの?」

「ああ。まぁ、大したものではないがな。むぅ……」

 デュカットが小さくうなり声を上げると、モフの頭上にキラキラした光が降ってきた。

 光はモフのふわふわの毛にくっつくと、弾けるように消えていく。


「何これ? きれーい」

「ま、お守りみたいなもんじゃ。トーマ、リフォン」

「はい、何でしょうか?」

「なにかしら?」

「今からモフを遺跡まで案内してやってくれ。門がいつまでも開いているとは限らんし」

「え……ま、まぁ、いいですけど。なんでリフォンまで?」

「なによ、私に何か文句でもあんの?」

「移動するのに、鳥のお前だと邪魔だろ」

「やだ、それって嫉妬? だから、地べたをはい回るしか能のない獣は」

「なんだとっ?」

「なによっ?」

 

 トーマとリフォンは、お互いに顔近づけて睨みあう。それをデュカットが諌める。

「これこれ、よさんか」

「ぐぬぅ~」

「むぎぎぎ」

 二匹は互いに納得のいっていない様子だったが、デュカットに間を入られては、これ以上争うわけにもいかず矛を収めた。

「それでよい。獣同士、仲良くせんとな。トーマ、お前はモフの道案内と護衛を頼む」

「はい」

「リフォン、お前は彼らの目になってやってくれ」

「私が目に? ということは……」

「うむ、人間が森の中に侵入しておる」

「やーね、性懲りもなく。わかりました。人間と鉢合わせならないように心掛けます」

「頼んだぞ。それと、お前たちは異界の門へ近づくな。あれは、我らにとっては危険な代物だからな」

「わかっています。俺たちはこの森以外では暮らせませんからね」

「そうね、気を付けるわ」




 みんながモフを家に帰してあげるべく話をしている。しかし、そのことを理解しているのかいないのか、モフは彼らに催促してきた。

「ねぇねぇ、早く行こうよ。ご主人様に会いたいんだからさぁ」

「はぁ~、どんだけ人間の主が好きなんだ、こいつは……」

「異界だか何だか知らないけど、ホント変わった子」

「はやくはやく~」

 モフは広間の入口部分を左右に行ったり来たりしている。

「わかったわかった。それではデュカット様、あの間抜けを案内してきます」

「私も、失礼しますわ」

「うむ、くれぐれも人間には気を付けてな」

「はい」

「ええ」

 二匹はデュカットに返事をすると、モフの元に向かう。

 モフは自分に近づいてくるトーマとリフォンを、尻尾を激しく振りながら出迎えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ