金持ち幼女と貧乏高校生
ふかふかのベッドに有名ブランドの服。おいしいごはんにイケメン執事。
それでも毎日何かが退屈。
なにかびびっとくることないかしら。
もしかして、毎日一人でお部屋にいるからつまらないのかも。
…ということで、お屋敷を抜け出してきちゃった。善は急げっていうし。
執事に何度も見つかりそうになったけど、なんとかなるものね。
初めての一人でのお散歩はどきどき。だっていつもボディーガードがいるから、一人じゃ自由に動けないんだもん。
「あら、お花屋さん?」
なるべく人がいない通りを歩いていたつもりだけど、こんなところにもお店があるのね。
店自体は小さいけど、なかなかいい味だしてるわ
きれいな看板に、かわいらしいお花たち。
いいわね、麗しいこの私にぴったりのお店だわ!
「いらっしゃいませー!」
ふんふん、店員もなかなか愛想がいいじゃない。
でもやぼったいわね、この子。髪の毛はぼさぼさだし、でっかい黒ぶち眼鏡。せっかく女の子なのにもったいない。
「ここからここまで全部もらえるかしら?」
「えっ!?」
あら、慌てているわ。このあたりにはあまりセレブのお客はこないのかしら?
って、いけない!今買っても一人だから持って帰れないし、そもそも現金なんて持ってないわ。
「な、なーんて。言ってみたかっただけよ。」
ほっとした顔。顔に出やすいわね、この子。
「お客様、冗談は困ります。電卓で全部計算しなきゃだめかと思いましたよ。」
「うふふ、ごめんなさい。」
年は…私より5つぐらい上かしら。高校生ってとこ?
こんな若いのに、おうちは貧乏なのかしら。
「あの、お客様。」
「なにかしら?」
「こ、これ私が初めて育てた花なんですけど、よかったらもらってください!」
顔を真っ赤にした彼女が取り出したのは、名前も知らない白い花。
「ありがとう。でもどうして?」
「この花は、お客様が一番似合いそうだと思って…。」
きゅん。
あれ何でしょう今の音。今まで味わったことがないわ。
「そうなの。」
「あ、あの、またいらっしゃってくれますか?」
「…もちろんよ。」
なぜかしら、顔が見れないわ。
それに心臓の鼓動がどんどんはやくなっていく。
「じゃあ、また来るから。」
「はい!ありがとうございました!」
お店を出て、またぶらぶら歩く。だけど、さっきのあの子が頭から離れない。
「…知っちゃいけない刺激だったのかもね、これ。」
お屋敷にこっそり帰ってからも、どきどきがとまらない。
また、会いに行きたくなっちゃうわ。
「はぁー…。気が強い系幼女たまらんです…。」
私のお花もっていってくれたし!嬉しさ極まれり。
「また、来てくれるかなあ…。」
名前でも聞いておけばよかった。