告白は突然に
私は何度も手のひらをクリーニングしたばかりのスカートにこすりつけた。
落ち着け、落ち着けと小さく咳払いを繰り返す。
まずは話し合わなければ。
「ゆか。」
目の前に立っているゆかは私と目を合わせようとしない。
「ねえ、ゆかってば…。」
「うるさい!」
彼女の頬は真紅に染まった。
指先がすーっと冷えていくようだ。
「なんで最近うちを避けるん?うちのこと嫌いなん?」
「ち、ちが、」
「やっぱ、女の子に告白されるのなんか嫌やったんやろ?」
ゆかは背中を丸め、顔をこちらには見せてくれない。
鼻をすする音が二人きりの教室に響く。
「こんなふうになってまうんやったら、うち、すき、なんて、言うんじゃ、なかった…。」
「ゆか!」
二人の間の空間が消失する。
私はぎゅっとゆかの身体を抱きよせた。
「え…?」
彼女の身体がこわばっているのがわかる。
私は、ゆかの頬をそっと両手で包んだ。
涙でぐちゃぐちゃになった顔がこちらを見つめた。
「私ね、ゆかに告白されるずーっと前から、あなたのことがすきだったの。」
ゆかの頬の温度があがる。
彼女は濡れた目を私からそらした。
「逃げないで。」
手に力をこめる。
彼女の目はふたたびこちらを向いた。
「両想いなんだって思うと、どきどきして、なんだか恥ずかしくなったの。だからつい避けちゃった。それがゆかをこんなに傷つけてしまった。」
口がからからに乾く。
喉がひっついてうまく声がでない。
だけど、伝えなければ。
「私と、付き合ってください。」
先ほどまでの苦しそうな顔はどこに行ってしまったのだろうか。
彼女はほっとしたような笑顔を浮かべていた。
「あんた、そんなん、ずるいわぁ…。」