異世界での毒殺者
大丈夫?、そんなところで寝ていたら魔物に喰われるよ?」
目が覚めると、目の前には碧い髪の毛で、腰短刀を刺した少女が心配そうに俺を見つめている、背丈はそう高くはない、髪の毛はウルフカットと言われる分類であろう。
「ええ、おかげさまで魔物には食べられていません」
適当に返事をした、女神が打ち込んだ杭のおかげで魔物というのが何かということぐらいはわかる、前の世界で言うところの害獣をさらに強化したような感じの物らしい。
「まあそれなら良いけど、あんたどうしてこんな所で寝ていたのさ」
この時俺の脳裏にあることが浮かんだ、このままこの少女と別れれば俺は何処で暮らすか分からぬままぼっちなる、何としてもここは彼女が住んでいるところまで付いていくようにしなければならない
「実のところ旅をしていたものなのですが、迷子になってしまって、、、」
「そうだ!、じゃあ僕の所にきなよ、少しぐらいなら食事も出すよ」
早!!、もう少しう色々会話をしていき、この流れにするつもりだったのだが、彼女はかなり寛容で、すぐに俺のことを助けてくれた
「あ、有難うございます、お名前とかお聞きしてもよろしいでしょうか」
「僕エミリ、君の名前は?」
「俺は蔵元 銑次だ、」
自己紹介を終えるとエミリは白いスカートを揺らして俺を街まで案内してくれた、道中の景色はただの田舎道という感じである、しかし周囲の植物などは知っている植物もあるが全く知らない、おそらくはこの世界特有の植物であろうと思われものもあった。
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しばらくあること小さな集落が見えた、木製の建物が立ち並ぶ集落であり、大きいとは言いがたいもののそれなりに活気はある、街の中には籠いっぱいに荷物を入れた女性や樹の枝を持って遊ぶ少年、肩に大きな荷物を抱える男性の姿など、パット見は文明レベルは高くはなさそうである。
「僕の家はそこだよ、食事ぐらい出すから来な」
エミリに言われるがまま家の中に入り、やはり装飾品などはない、というよりも何もない、衣服であったりなどの生活必所品は一箇所に固められており、まるで引っ越しする前みたいだ。
少したつと食事を出してもらった、パンである、パンが2つ、しかも固い、まあ個人的には固いパンなんて大好きだし構いはしないのだが、嫌いな人は嫌いであろうと思うほど固い
「そ、、その、そんなものしかなくて悪いな」
エミリは申し訳無さそうにしている、食事まで出してもらって文句を言えるほど自分が偉くないと言うことは百も承知だし、不満もない
「食事までもらって文句をいうほど図々しくないし、それにこのパン美味しいよ」
「そ、そうかい、ところで一つお願いがあるんだが、、、」
突然不穏な表情になったエミリは俺に頼み事をしてきた、助けたあげたいのはやまやまだが、俺がこの世界にきてからまだ1日も立っていない、できることなんてたかが知れている
「俺にできることならやるけれども、何をすれば良いのかな?」
そう言うとエミリは少し表情を曇らせて話を始めた
「実はこの集落では毎年一人、女の首を切り落として首を蹴って遊ぶ祭りがあるんだ、、、その、、、その首を切られるのが僕なんだ、、でも、、でも僕死にたくない、、お願いだ、僕を連れだして一緒に逃げてはくれないだろうか」
すぐに折れを招き入れた理由がようやくわかった、しかしながら随分狂気に満ちたお祭りだ、どうせこんな集落に入られない、それならば道案内としてこの世界の原住民をそばにおけるのは凄くいいことだ
「うん、構わないけど、その祭りって他にはどんなことするのかな?」
「えっと、最初に草を積んだ中に球を入れて、最初にその球を掴んだ奴が首をはねる権利があるっていうのがある、、、その後は首や体で遊ぶだけだよ、、」
とは言え今から普通に逃げても無駄であろう、集落の方が馬の数も人の数も上なのだ、鬼ごっこで言えば鬼が数十人に対して逃げるのは二人だ、なんとかして追手が来ないようにしなければならない、、、
「じゃあエミリ、俺に手袋を貸してくれ、あと馬車の確保、馬の運転は俺はできないから任せた、それから逃走先の場所が書いてある地図用意しておいて」
「わ、、分かったけど何をするんだ?」
「任せておきな、神様に頼んでくる」
そうして俺は家を出て周囲の森のなかにはいった、魔物に襲われないことを願うばかりである。
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森のなかはまるでジャングルだ、長居したいとは思えない感じではあるが気になる植物は幾つもあった、なんせ異世界だ、見たことある植物もあるが、やはりすごい形のものもある、緑色の花に鮮やかな赤の葉の植物や高さがゆうに数mあるバラのようなものまで、しかし今必要な物は前の世界にあった植物である
しばらく進むとやはり目当ての物はあった、集落に来る前に実は見かけていたのだ、道中は少量しかなかったが森に入れば大量にあると思ったが、やはり沢山あった、目当ての植物は以下のとおりだ
・ギンピ-ギンピ ・イラクサ
・夾竹桃
これらは全て毒草であり、これだけあればまあ逃げられるであろう籠の中に大量に入れると俺はすぐに集落に戻った、暗くなられてはかなわないからである、しかし周辺にある数々のまだ見ぬ植物はとても気になった、欲しいグッツを見つけたのに終電ギリギリで買えないぐらいもどかしかった、、
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集落に戻るとそこには大量の草木が積まれていた、祭りまで時間がないことを差している、しかしこの要らぬ儀式のおかげで今回は逃走が楽になる
《パリン!!!!!!!》
俺は懐に入れていた神様からもらった懐中時計を割った、すると周囲は灰色になって動きが止まる、まるで自分以外すべてが無機物になったかのような状況であった、俺は籠に入っていたイラクサとギンピ-ギンピを積まれていた草木の中に混ぜ込んで、街の馬小屋の馬の餌には夾竹桃の葉を混ぜ込んだ、そうして五分がたつと周囲に色が戻ってまた動き出す。
俺はエミリの元まで行くと、だいぶエミリが震えていた、正直俺ならば一夜で髪の毛が真っ白になりそうな状況だ、まあもう真っ白だけれども
「銑次!!、どうなんだ!、逃げられそうなのか!?」
だいぶ取り乱している、まあ当然だ
「ああ、大丈夫、明日の草に飛び込む奴が始まったらすぐに馬車に乗って逃げるんだ、恐らく追ってはこないから」
「わ、、分かった、信じるぞ!」
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そうして次の朝、祭りが始まった、エミリの家の前には見張りが付いている、俺は見張りにお茶を出すと祭りの様子を見に行った、祭りではすごい人数が草木が積まれた山の前にスタンバイをしている、そうして笑顔で全員が合図とともに草木の中に飛び込んだ、、、
「ぎやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
草木の中からは悲鳴が聞こえてくる、周囲の閲覧者は大笑いしている、恐らく木でもひかかって痛がっているとでも思っているのであろう、しかしあの草木の中には毒が仕込まれている、悲鳴は鳴り止まず、遂には周囲もおかしいと思い草木の中に入っていき悲鳴の数が増えていった
「せ、銑次!、これはどういうことだ!?」
後ろからエミリが走ってきた、見張りは今頃倒れこんでいるであろう、見張りに出したお茶には夾竹桃を煎じたからである
「神様に頼んだんだよ、早く逃げよう」
「あ、、、ああ」
馬に乗り込んで街をでる、しかし誰も追ってこない、追えるはずがないのだ、街の馬はすべて殺した、草木の中はまさに阿鼻叫喚、草木混ぜ込んだ2つの毒草は外傷が出ない、故にこの文明レベルでは毒を混ぜたなんて見つけるのも困難であろう、
街からだいぶ離れるとエミリは落ち着いたようで、少し安堵の顔を浮かべていた、そして冷静になったからであろう、俺に先ほどの事を訪ねてきた
「あれは何をしたんだ?、魔術、、、ってことはないであろう」
「あれは、、、そうだな、、、奇術だよ、」
そうして俺達は新たな街へと歩んでいった、空を見上げると、やはり不気味な月が二つ宙に浮いているのであった。
今回出てきた植物の説明+まとめ
イラクサ 皮膚に触れるだけで激痛が走る、一見すると大葉のような形
ギンピ-ギンピ こちらはイラクサの仲間、触れると自害するものが出るほど痛い
夾竹桃 毒のない部位がないほど毒だらけ、鹿児島市の市の花でもある