異世界への時限旅行
嗚呼、コーラが旨い、現代日本にはドクペやコーラがある、これは神が与えた至高の特権だと俺は思う
俺は蔵元 銑次、年は現在24才、職業は何てことはないただの営業、趣味は植物の採集なんかが好きだ、現在俺は机に向かい、コーラを飲みながら植物の標本を作っている、部屋の中は薄暗く、アパートが故に広くはない部屋だが、男独身が過ごすのであれば余裕で足りる大きさだ。
標本作りに一区切りつけると俺は椅子の後ろ側にある押入れから布団を取り出しそうと押入れの前まで行く、そして押し入れを開けると押し入れの中にはブラックホールのような空間が広がっていた、しかし吸い込まれたりすることはなく、ただ黒い空間が押し入れに広がってい、、、
俺は考えが終わると押し入れを閉めて、冷蔵庫からドクペを取り出して、押し入れの前に座り込んで缶に口をつけた、そして少し落ち着くと俺はボソッと一言言い放った
「あれはなんだ」
ここに来て意味の分からない状況が発生した、俺は考えを整理する、こういう緊急事態というのは案外冷静さが出るものだ、俺は現在考えられる状況をまとめた
・ただの見間違え ・光の屈折
・幻覚 ・オカルト
以上が今考えられる状況だ、俺は現在状況の整理し、恐る恐るもう一度押し入れを開けた、押入れの中には何処までも続く黒い何かが渦巻いている、この時点で見間違えは消えた、押入れ以外には何もない以上幻覚もないであろう、となると光の屈折か、、、オカルトということに、俺は携帯のライトを付けて黒いそれを照らした、すると!!
黒いそれがはっきり見えるようになった、もう光の屈折とかありえない状況になった、オカルトしかもう考えられない、携帯で調べても無論出てこない、むしろオカルトなことばかりが出てくる、異世界の入り口という検索結果、確かに近日の小説では異世界に行く話が多い、その中でも異世界の入口が現れるタイプも多々ある、引きこもりがオタク文化の伝導師になったり、自衛隊が異世界交流をしたり、しかし、、、
「なぜ、押し入れなんだ?」
押入れというものは遠未来型の青い猫ロボがいるぐらいで、異世界の入口があるものではないであろう、しかも入り口が禍々しすぎる、これ誰も普通は入らねえだろ、、、
俺は脳内でこの不可思議な事態にツッコミを入れ終わると、ネットで布団を注文した、そうして台所から小さめの鍋を取り出し、ひざ掛けを巻いて枕にして床で寝た、
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朝起きると頭が痛い、腰も痛い、やはり床で寝るのはあまりよろしいことではない、俺は押し入れの中を見て今だ健在の黒いそれの存在を確認した、すると黒いそれから花びらが飛んできた、その花びらは桃色、桜のような色形だが、光に当たると緑色に光りを反射している、
「初めて見た花びらだな、、これはなんだろう」
そう呟くとと俺は黒いそれに身を乗り出した、今思えば正気の沙汰ではないが、あまりにもその花びらが気になって、ついついその闇の中に落ちてしまった、闇の中はまるで夜空のように、光の粒が散らされていてとても綺麗であった
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気づいたら黒い世界を抜けて、見知らぬ土地にたどり着いていた、空には赤と黄の突きが2つ浮いていて、俺は大きな桜の木によしかかっていた、その桜の花びらは月の光を反射して緑色に光る、部屋で見た花びらはこの花弁である。
俺は立ち上がって桜の木を見上げると、満開に咲いた桜の木が一本あるだけであり、周りには何もなく俺のいる場所は小高い丘であった、桜の木はラベンダーのような香りを放っている、花びらには匂いはない、俺は花びらを口に入れてみた、すると、、、味はしない、そしてもう一度空を見上げると理性が戻ってきた
「やっばい、、、どうやって帰ろうかな」
なんといっても近くにあの暗がりはもう無い、どうやらあれは片道専用だったらしい、前の世界に戻る云々の前にまずどうやって生きていくかすらわからない、
「お困りのようですね、言葉も分からないこの世界、どう生きていくのでしょうね」
突如俺の目の前に現れた女性は不敵に笑っている、彼女は頬の肉をいやらしく上げて、黒い髪を怪しげに揺らし、長くて白いドレスを指でつまみ上げた、ぱっと見ただけで分かる、こいつは嫌なやつだ
「ああ、しかし言葉がわからないってことはなさそうだ、なんせお前の言葉がわかっているからな」
「嘘ですね、私がこの世界の住民かどうかを探るための発言でしょう」
こちらの発言の意図を即座理解された、しかしこれでそこの女がこの世界の住民でないことは明白だ、住民であればそんな察しは絶対に起こらない、つまりこの事件の関係者、この女は俺が元の世界に戻る方法を知っていると考えて間違えはないであろう
「おれはどうすれば元の世界に戻れる?」
俺がそう尋ねると女は鼻で笑った後、俺すぐ目の前まで近づいてきて、俺の目をシッカリと見つめた、いや、この場合は睨んだと言う表現が適切であろう
「それは無理だ、なぜならあの世界に戻すことができるのは私だけ、そうして私は戻す気がない、どうだい、理解したかね?」
ようやく理解した、彼女が俺を落とした張本人だ、話の進み方と言い、この態度といい、悪意か何かをもって俺のことをこの世界に引きずり込んだのであろう。
この世界に足を踏み入れたのは自分だ、たとえ誘導されたといえども、帰れなかったとしてもこの世界で生きていくぐらいの覚悟は決めなければならない、しかし誘導した本人の名前ぐらいは理解しておいてもいいであろうと、俺は混乱を抑えて女に質問をした
「ああ、理解した、で、お前は何者だ?名前は?そもそも人間か?」
そう言うと彼女は後ろを振り向いて3歩ほど進むと、月明かりの下堂々と俺の問いに対して答えた
「私は女神、クロイデ・クロノ、時間と運命の神だ、覚えておけ」
「そうか、うん、何で俺をこの世界に呼び込んだ?」
俺が続けて質問をするとクロノは懐から木の杭と懐中時計を持って俺の元まで近づいてきた
「貴様には私の信者になってこの世界の異変を収めてもらう、この仕事をやるのであればこの世界の言語と女神の加護を与えてやろう、引き受けなければ野垂れ死ね」
俺に選択肢なんてなかった、このまま行けば俺は見知らぬ土地で死ぬ、なにもできずに死んでしまう、俺は考えるまもなく即答した
「ああ、やらせてもらう、しかしその仕事とは何をするものなんだ?」
「簡単さ、適当にこの世界で生活して、たまたま遭遇した異変があればそれを解決するだけ、それだけでいい、異変の判断は私がやる、異変だと判断すればお前にわかるように指示をするさ」
彼女はそう言うと俺に懐中時計を手渡してきた、懐中時計は金色で、綺麗な華の装飾が施されている
「その懐中時計のガラスを割れば5分間時間を止めることができる、ガラスは10分で再生、つまりこれがあれば貴様は10分に1回は時間を止められるということだ」
「何か弱点らしきものがあるのではないか?」
「あるわけ無いであろう、これは神の加護だ、あとは私が手に持っている杭をお前に刺せばこの世界の言語とちょっとした常識が頭に入る、これは知識の神ユグドラシルのものだが勝手に拝借してきた」
そう言うとクロノは俺の心臓部に手に持っていた杭を勢い良く叩きつけた、胸には杭がグッサリ刺さり、痛みで今にも気が無くなりそうだ、血はどんどんと流れていく、俺の髪の毛はどんどん伸びて、気がついた時には腰らへんまで伸びた、しかも色は真っ白だ
「女神様よぉ、これはどういうことだ」
「痛みはあるけど死にはしないから大丈夫、髪の毛は副作用」
ここで俺の記憶が途切れた、痛みで気絶したのであろう
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「大丈夫?、そんなところで寝ていたら魔物に喰われるよ?」
目が覚めると、目の前には碧い髪の毛で、腰短刀を刺した少女が心配そうに俺を見つめている、この時から俺の異世界での生活が始まった、俺の人生がここを起点に大きく変わったのだった。