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転生した僕は物語を知らずに生きる

作者: 紅矢

ご都合主義注意です!

一応、妹の~とお話がリンクするような、しないような…そんな曖昧なお話です。(おそらく読んでなくても伝わるお話だと思います)


妹の~の続きが読みたいと言って下さった方が複数いらっしゃったので嬉しすぎて書いてみたのですが…。多分皆さんが思っていたお話とは全く別物になっていると思いますのでさらっと読み流していただけると嬉しいです。

 生まれ変わった僕は、姫路ひめじ由依子ゆいこという名の女の子になっていた。


 この事実に気が付いたのは、僕が小学2年生の頃。

 風邪を拗らせた僕は40度近い熱を出して寝込んでいた。


 意識が朦朧としている中で、僕は僕ではない誰かの記憶を夢に見た。


 夢に見た男の子はいつも狭くて白い部屋にいた。腕には幾つもの線が繋がれており、口元には呼吸を助ける為のものであろう医療器具が着けてある。


 彼の日常は代わり映えのしないものであった。

 白い部屋にいつも一人。日に何度か白衣を着た男性とナース服を着た女性が彼の様子を確認し、少し話すと去っていく。

 そして毎日両親が仕事の合間に会いに来ては、少し話して帰っていく。そんな毎日を過ごしていた。


 彼の毎日の楽しみは、今日あった出来事を話してくれたり、綺麗な景色の写真を撮ってきては見せてくれる医者や看護師、両親が自身の病室を少しずつ訪ねて来てくれることだった。


 生まれつき身体の弱かった彼の1日は睡眠時間が大半だったため、とてつもなく短く感じられた。そして、只でさえ短い1日は夢での時が進むに連れて更に短くなっていき、終には何も見えなくなった。



 目覚めると、僕は白い部屋にあるベッドに横たわっていた。

 一瞬、夢の続きかとも思ったが、目の前に居るのは彼ではなく僕の両親と、僕に良く似た双子の妹だった。


 どうやら僕は一週間も夢を見ていたようで、意識の薄れていく娘を心配した両親が病院に連れていきそのまま入院になったらしい。


 目覚めた僕を見た妹は目を見開き固まって、母はたくさん涙を流して喜んだ。父は目を真っ赤にしながらも必死にナースコールを連打する。


 ……お父さん、そんなに連打しなくても聞こえるよ。



 目覚めて直ぐは変な夢を見たな程度にしか思わなかった。

 けれど、退院して初めて外の景色を見た時にいつも見ていた景色が何故だかとても美しく見えて、不思議と涙が溢れてきた。

 

 あぁ…あの夢は僕の前世の記憶だったのかもしれない。

 彼があの狭い世界の中で感じてきたこと、考えていたことが僕の中にも確かにあることを実感し、自然とそう思うようになった。


 とはいっても、僕が前世を思い出してからの生活はこれまでと特に何かが変わったわけではない。変わったことと言えば、心の中の一人称が僕になったことと、これまでの容姿を変えたこと位だ。


 例えば、これまで妹と色違いの双子コーデをしていたが親に言って下をズボンに変えてもらったり、腰まで伸ばしていた真っ黒な癖のない髪を肩辺りまでばっさり切ったり…。

 決して男の子になりたいとかそんな気持ちでやった訳ではない。一応、自分が女の子だということには納得しているし。身体が自由に動かせるだけで万々歳だ。


 ただ、僕は気付いてしまった。


 これまでのように妹とお揃いのスカートを履けば裾が捲れ上がって何だかとっても歩きづらい。母に櫛を入れてもらったサラサラな長い髪は、風で舞い上がると直ぐにぼざぼさになってしまう。


 「あ、女の子らしい格好向いてない」と即座に思った僕は親に言い髪型や洋服を変えて貰った。決して過去の記憶が思い出されたせいではなく、由依子が元々鈍くさかったせいである。

 記憶が戻る前からこんな感じだったしね。


 僕の服や髪型が変わった当初、妹はとても驚いたようで何やらぶつぶつと独り言を言っていた。まぁ、いつものことなので気にしないことにする。







 それから数年、僕が入院して以降は特に大きな事件もなく姫路家は平和に暮らしていた。

 数ヶ月前までは。



 事件が起こったのは僕、姫路由依子が高校1年の冬休みの時だった。



 最近の妹は特に落ち着きがなくソワソワしている。

 時々、僕に対して「何か変わったことはない?」と嬉しそうに聞いてくるので、外で撮った写真を見せながら季節の移り変わりの話をするとつまらなそうな顔をして去っていく。


 女心って難しいと最近特に感じた出来事だ。



 この日もいつも通り、外に出て一人でふらふら散歩をし、気がすむまで写真を撮って帰宅した。ただいまと声をかけながらリビングの扉を開けると、妹のよく通る明るい声が聞こえてきた。


「今からお昼ご飯の支度するんでしょ?私手伝うよ!!」


 その言葉を聞いた瞬間、母と僕の顔は青ざめた。

 普通であれば、娘が御飯の支度を手伝ってくれるということは大変喜ばしい行為である。

 普通であれば。


 …つまり、何が言いたいかというと、妹の手伝いは普通ではないのだ。


 妹の料理は毒物と言っても過言ではない。

 妹が調理実習で習ったというハンバーグを初めて家で作った時の我が家は地獄絵図のようだった。

 火が通ってないとかそういうレベルではない。母も一緒についていたのに何がどうしてこうなったのかと問いただしたいレベルに酷いものだった。


 父のあの時の勇姿は今でも鮮明に覚えている。母は頬を赤らめながら惚れ直したと父に抱きついていた。その時の父の顔色と言ったら…思い出すだけで鳥肌がたつ。


 ちなみに、こんな評価を妹にしている僕の料理の腕も妹とそう変わらない。自覚があるかないかの差、それだけだ。

 だからこそ、手順も材料もあっているのにどうしてあんな料理が出来上がるのかが自分でも不思議でしょうがない。


 ただ、僕が一言言えるのならば、僕と妹に料理は向いていないと断言しておこう。


「ゆ、結衣香ゆいかちゃん…、気持ちは嬉しいわ。だけどね、料理はお母さんのお仕事だから……。」


 どうにか断ろうと冷や汗をかきながら言葉を紡いでいく母。

 苦しそうに何か良い案がないか頭を働かせては、何かを思い出したようにわざとらしく手を叩いて結衣香に言う。


「そうだわ!今、洗濯機の中に洗濯機物が入っているのだけど、良ければお外に干してきてくれないかしらっ!!」


 名案だとばかりに嬉しそうに頼む母とは対照的に妹は嫌そうな顔をしている。


「えぇー…。私はご飯を作りたいんだけど」


 渋る妹に対し、強引に洗濯物を頼む母。

 さすが母だ。母は強し。


 妹との決着がつき、僕の帰宅に気づいた母はお帰りなさいと声をかけてくれた。

 …妹は気分屋だから、今日はきっと話しかけて来ないだろうな。


 不機嫌そうな顔をしながら浴室へと向かう妹を見送って、リビングのソファーに腰かける。


 え?

 洗濯物干しは手伝わないのかって?

 僕は自分がどれだけ鈍くさいのかを理解している。

 僕が手を出すともれなく洗濯物が泥だらけになって母の苦笑いと妹のお叱りを受けること間違いないので、大人しくしているのが一番なのだ。


 ほら、母も僕の行動に頷きつつ、ニコニコしながら野菜を切っている。



 妹が洗濯物を干すために庭に出て、僕がテレビをつけ父が録っていたバラエティー番組を見ながらのんびりしていると、キッチンの方から「痛っ!!」という声が聞こえてきた。


 一時停止ボタンを押してから、母のいるキッチンへと向かうと指を押さえて血を垂らさないように流しへ手をやる母がいた。


「由依子ちゃん~、ティッシュ取って!!」


 母は心配をかけまいとにっこり笑って僕に言うが、かなり深く切ったようで指先からは結構な量の血が流れていた。


「だっ大丈夫!?えっと…ティッシュ!絆創膏っ!!」


 焦りつつも、とりあえず近くにあった箱ティッシュを抱えて持っていき、数枚抜き取って母の傷口へと当てる。…が。


「……あれ?」


「…あら?」


 おかしなことに傷口が見当たらない。

 母も何故かきょとんとした顔をしている。


 母の手が血まみれだから傷がわかりにくいのかと思い、水で血を洗い流すがやはり傷口は見当たらない。


「??」


「…あらあら!もしかして、由依子ちゃんの天からの贈り物ギフトかしら!!」


 母は自身の手を不思議そうに見つめたあと、何か思い当たる節でもあったのか、僕の顔を見て興奮気味に話し出す。


「ギ、…フト?」


 正直、僕は母が何を言っているかわからなかった。

 僕はただ、いきなり傷が消え失せたという事実に困惑するばかり。


天からの贈り物ギフトよ、天からの贈り物ギフト!!遅くても中学生までには出現するってお話なのだけれど…」


 これまで、由依子ちゃんの周りで変わった出来事あった?と、どこかで聞いたことのあるような問いかけを僕にする母。


「な、無いけど…。えっと、ところでギフトって一体…?」


 一人で話を進めていく母に対して説明を求める。

 ギフトって一体なんなんだ。きっと通常の意味で使っている物ではないと思うんだけど。


「えっ!!もしかして、天からの贈り物ギフトのことはなにも知らない!?…てっきり、結衣香ちゃんが知っているから知っているものだと…」


 …どうやら母の様子を見るに、ギフトとやらは常識的に知っていて当然のもののようだ。


「えっと、ニュースとかでは聞いたことないかしら?」


 母が苦し紛れに聞いてくる。

 ニュースかぁ…聞いたことがあるような、ないような。

 そもそも、あまりニュースとか見ないしなぁ。


 僕に心当たりがないことを感じ取った母は、ギフトについての説明をしてくれた。


 いわく、ギフトとは天からの贈り物と呼ばれるものであり、通常、小学生から中学生までに能力が出現する、謂わば超能力のことらしい。

 人によって出現する能力の種類や強さは様々で、贈り物を授かった者は専門の教育機関で贈り物の扱い方について勉強するそうだ。もちろん、能力の扱い方以外の一般教養もそこで教えてくれるらしい。


「え…。遅くても中学までって。もう高校生なんだけど」


「大丈夫、大丈夫!たった1年遅れたくらいじゃ何にもならないわ!!」


 嘘だっ!さっきお母さんだって少し気にしてたじゃないか!!…と思ったが口にしないでおく。


 なぜなら僕には前世の記憶がある。

 もう既に非現実的なことが起きているのだから天からの贈り物ギフトとやらを授かろうが、能力の出現が他の人より遅かろうが僕は僕。何も変わらないはずだ!!……多分。


「それにしても、由依子ちゃんは治癒能力を授かったのかしら?ほら、お母さんの傷も治してくれたし…」


 母が僕に怪我をした方の手を見せながら尋ねてくる。

 治癒能力か…前世と関係してるのかな。


「違う、違う!由依子の贈り物は治癒能力じゃなくて、時間を操るものだよ!!」


 いつのまにやら、僕の後ろに立っていた妹からやけに嬉しそうな声が聞こえてきた。

 …どうやら機嫌はなおったらしい。


「結衣香…?」


「あら、結衣香ちゃん、洗濯物ありがとうね!!」


 にっこり笑いながら妹にお礼を言う母に対して「違う!!」と怒る妹。

 うん…確かに今知りたいのはそこじゃない。


「どうしてぼ…じゃなくて、私の能力がわかるの?」


 妹がいつから見ていたのかはわからないが、母の傷が治ったのを見ていたら治癒能力かと思うし、何も見ていないなら贈り物については何もわからないだろう。


「えっと、由依子のことを見てたらぱっと思い浮かんで…。多分、私の天からの贈り物ギフトじゃないかと思うんだけど…」


 結衣香の言葉に反応したのは母だった。


「由依子ちゃんだけじゃなくて結衣香ちゃんもだなんてっ!双子の神秘ってやつかしら!!」


 年甲斐もなくきゃあきゃあはしゃぐ母に呆れる僕と、ニヤニヤしながらもぶつぶつ独り言をもらす妹。

 …何だろう、この空間。






 そんなこんなで天からの贈り物を授かった僕と妹は、笑顔の母と家から遠いため、寮で生活することになる娘達を思い悲嘆に暮れる父に見送られ、2年生になると同時に専門の教育機関である国立天ノ宮あまのみや学園への編入を余儀なくされた。


 とりあえず心細いし、一人で編入じゃなくて良かったかな。

妹の~を読み返しつつ書いてみたのですが、自分の表現したいことを文章にするのは難しいことを再確認しました(汗)


最後まで読んで下さりありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 心の中でのツッコミ(?)が楽しいです。 [一言] 初めまして、佐倉奈積と申します。 「妹の~」の続き、楽しく読ませていただきました。 由依子ちゃんが潮くんと出会う機会があるのかな? と、…
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