第6話:俺、学びます
あらすじ:魔術について学ぶそうです
オッス!オラ、ティナ!!
昨日まで野郎ばかりで人妻しか居なかったのに、いきなりダブルヒロインが出て来たんだ!!
これからどのルートを攻略するのか オラ、ワクワクすっぞ!!
と、いうわけで、ヒロイン①のリリアとヒロイン②のヴィスタ(とリーフ)と一緒に授業します。
くるくると髪の毛をいじるリリアは、午前中にどうやら授業を終えたようだ。
むーっと頬を膨らませている。可愛らしい。
「ずるーい!私が授業出れなかった時はしてくれなかったのに!」
「そう言うな。今日は魔獣の気配もなく、落ち着いているんだ。恐らく、昨夜の謎の爆発音に恐れて逃げたのかもしれんな」
ヴィスタは拗ねているリリアを宥めるように、頭を撫でながら言った。
ごめんなさい。爆発の原因知ってます。本当にごめんなさい。態とじゃないんです。
ヴィスタは、授業をする為に、広く落ち着いた草原まで行った。
リーフやリリアはいつも授業をする場所らしく、先頭を切って走って行った。俺?あんなに若くねえよ。
村の敷地内の為か、俺が置いてけぼりにされた草原よりは広くない。当たり前か。
近くには森もある。焼野原じゃない森がある。全く誰だ自然の恵みを焦がしたヤツぁ。
「さて、午前中は算術をしていたんだが、午後は何しようか」
「算術、ですか?」
「ん?あぁ、今時算術が出来ないと、冒険家として中々苦しむ羽目になるからな」
「ヴィスタさんは冒険家でしたか」
「呼び捨てで構わんよ、ティルフィーネ君。そうだな、あたしが冒険家だった頃は算術どころか、文字も読めなくてね。何度も騙されたものさ」
ヴィスタは遠い目をしながら語った。
算術が出来ない為に、高い金を払って安物を買わされ、文字が読めない為に、ガラクタばかり買わされたそうだ。
このままでは貧窮で倒れてしまう。
そう焦りを感じ、時間の合間に少しずつ勉強をした。独学だった為、時間もかかったがスムーズに覚えられたそうだ。
文字は人語しか話せないし、算術も金の計算くらいだが、これだけでもかなり助かったんだと。
冒険家の中には、そういう人が多いらしく、文字も読めて算術も出来るヴィスタは、色んなパーティーからお誘いを受けたらしい。
ま、俺は出来るけどね。前世の経験と、両親の英才教育のお蔭で。
「それに、冒険家にならないとしても、それは良い経験となるし、損はしない。あたしが教えられる事には限りがあるが、一応覚えておいてくれ」
「はーい」
「む。良い返事だ、ティルフィーネ君」
普通に返事したつもりだが、ヴィスタに褒められた挙句、頭撫でられた。ゲッヘッヘ。
とりあえず、何をするのか考える為にも、皆は円形になってその場に座り込む。
座った為にプニッと押し出され、強調されたリリアの太腿に、俺の目は向いてしまう。男の悲しき性だ。いや決してロリコンではない。
「何しよっか」
「そうね……私は体を動かしたいわ。午前中、算術したし」
「ふむ。午後は時間が長い。最初に体を軽く動かすか。その後は……何をするか」
皆々頭を抱えて、真剣に考え込んでいる。
その中で、俺はポケーッと考えるフリをしている。いやだって、算術も文字も分かってますもん。
「そうだ、ティルフィーネ君。君がしたいもので構わんぞ」
「ほえ?」
「初めての授業だからな。どうだ?」
ヴィスタはニコリと口角を上げ、ニヒルに笑う。カッケェ。
どうしよう。この人の事を「先生」よりも、「姐さん」と呼びたい。呼ばせて頂きたい。
で、何だっけ?あ?授業内容だっけ?保健体育じゃ駄目かな?駄目ですか。
……うーん、頭に浮かんでいるものだとすると、やっぱり……
「俺、地理とか……後は歴史を学びたいんですが」
「ほう?」
「いやぁお恥ずかしながら、地図も歴史書も何も持ってなくて……流石に世間知らずだと笑われるのも嫌ですし」
「あ!僕も歴史は学びたい!」
リーフも乗ってくれたお蔭か、ヴィスタは快く承諾した。有難う、おっぱい姐さん。
ただ、ヴィスタ曰く「基本中の基本しか教えられない」とのこと。
別に基本中の基本だけでも教わりたいんです。ごめんね、無知で。
午後何するか決まった所で、皆一斉に立ち上がる。お尻についた芝生の草をパンパン叩きながら。
「さて、体を動かしたいんだったな……」
「やっぱり、剣術かしら?それとも武術!?」
「僕、魔術やりたい」
あれ?リリアは意外と武闘派か?対するリーフは魔術派のようだ。意外だ。
リーフは特に、緑の服で金髪でエルフな勇者みたいに剣を使うのかとばかり思っていた。
「ティルフィーネ君は杖を持っているから、魔術師志望か」
「あ、はい」
「杖持ちとは珍しい。良家出身かな?」
「いやぁ~……」
此処は誤魔化す。何か下手に嘘吐いて、後々ボロ出したら大変だもん。経験者は語る。
すると、リリアはそんな俺をじっと見つめ、何か言いたげだ。あまり見るな。照れるだろ。
「……何でローブ被ってるの?そんな目深に」
「えっ」
「そんなに目深に被ってると、目すら見えないんだけど」
不思議そうな表情で首を傾げている。
あっさりと疑問をぶつける辺り、彼女はハッキリとした性格なのか、考えるよりまず行動派なのか。
いやそれはどうでもいいのだが、どうしよう……どうやって誤魔化そうか……
と、悩んでいたら、おっぱい姐さんが助け船を出してくれた。
「何か事情があるのだろう。そういうのは深追いするものじゃない」
「事情?」
「あたしのように、顔に傷があったら隠したいものさ」
ヴィスタは左の頬を撫でながら、そう告げる。確かに薄いが、傷痕があった。
「そう……ごめんなさいね、ティナ」
「い、いいよ。気にしてないし」
リリアは素直な性格のようだ。リーフにそっくりだな。
とりあえず、俺らは多数決で魔術について学ぶことになった。
別に俺は使えるが、まぁ詠唱くらいは覚えておくか。後々無詠唱だとばれぬように。
ついでにヴィスタは元々本業は剣士である為、魔術は初級の一部しか知らないそうだ。残念。
「ちぇー……」
剣術や武術ではないせいか、リリアは少し不貞腐れている。
可愛いな、この子。一つ一つの動作があざと可愛いが、わざとらしさがない。素晴らしい。
そんなリリアを励ますように、リーフが苦笑いしつつ背中をぽんぽん叩いている。
何となく和むなぁこの二人。
***
そんなわけで、早速魔術の授業に入る。
俺は杖を使わずに魔術を行う。
杖は、元々威力を増したり、防壁やその他広範囲の魔法を行うのに便利な道具だ。
また、『付与魔術』というものを、施したり出来る。
付与魔術とは、杖や剣、あるいは盾などの道具に付ける事が出来る魔術の事だ。
『自動防壁』『衝撃緩和』など、ゲームでいうと、武器にスキルとして付け加える事が出来る。
付ける方法は簡単だ。音素文字を杖や剣に刻み込むだけ。
刻み込むと言っても、武器に指先に魔術を蓄え、描くだけでいい。簡単だ。
ま、それなりの魔力を使うので、やらない人も少なくはないが。
俺?この杖にはしてないよ?怪しまれちゃうじゃーん☆
そんなこんなで、授業が始まる。
「基本中の基本といえば、『ファイア・ボール』か『ウォーター・ボール』だな」
「私使えるわ。ティナは?」
「あー……えーと、お手本見せて?」
「ふふ、任せて!」
自信あり気にリリアは鼻息をフンと鳴らして、前に右手をかざす。
リーフはブツブツと唱えているが、何を唱えているのか。
よく聞いたら、詠唱を思い出してるだけだった。しっかりしろよぉ~もぉ~!
其処、「お前は詠唱知らないだろ」とか言わない
「大地の資源よ自然の恵みよ、今こそ示せ。水流の魂、我に宿らん『ウォーター・ボール』!」
ブッフォ
何それ。それが詠唱?
ちょっと小馬鹿にしていたら、リリアのかざした右手には、軽く風が起きて拳くらいの水球が生まれた。
そしてそのまま、水球は直進して放たれる。
ぱしゃん。
そんな音を立てて、水球は地面に落ちた。
リリアはドヤ顔してこちらを見る。ああ凄かったよ。普通の威力で。俺には真似出来ん。
「ふむ。すっかり覚えたようだな」
「えっへへー!」
「リーフィはどうだ?」
「えーと……大地の……今こそ……よし、いけます!」
褒められて、顔が緩んでいるリリアに続いて、次はリーフのようだ。
楽しみだぜ、リーフ。
だが、もしリリアよりも好成績を残したりして、リリアが傷ついたりしたら、貴様を最大限の力の炎で燃やす。
友人と認めてくれた事は感謝している。前世では上っ面だけの友人関係しか築けなかった俺にとっちゃ、正にリーフは救世主。
だがしかし、これとそれとは話が別だ。
いいか?リーフ。フラグを折ってはならない。幼馴染という重要ポジションを無下にする気か貴様。
リーフはそんな怨念籠った俺の目に気づかなかったようだ。
俺の努力は虚しく、リーフは自信満々に右手を目の前にかざした。
「大地の資源よ自然の恵みよ、今こそ示せ。火炎の魂、我に宿らん『ファイア・ボール』!」
ぼわっと小さな爆発音と共に、リーフの手の平にはリリアと同じく拳くらいの火球が生まれ、そのまま真っ直ぐ発射される。
それなりの速度で放たれた火球は、途中で爆発して消えた。
ほほう。中々やるな。
しかし、リーフさんや。負けず嫌いらしいリリアさんがむーっと頬を膨らませて可愛らしく怒ってますよ。
「ティルフィーネ君は、やらないのかい?杖まで持ってるのに」
「あ……はい。ええと、詠唱教えて貰えます?」
「はは。詠唱が覚えられないのか。致し方あるまい。あたしも最初は覚えられなかったもんさ」
軽く笑ってヴィスタは一語一句ゆっくりと教えてくれた。有難い。
おっぱい姐さん、有難う。俺、普通の男の子になります。
あ、でも普通に撃てるかな。放てるかな。大丈夫かな。どうすんの、もし村一面焼け野原になったら。俺のせい?
「大地の資源よ自然の恵みよ、今こそ示せ。火炎の魂、我に宿らん『ファイア・ボール』」
二人と同じように右手をかざし、ヴィスタに教わった通りに唱えてみた。
すると、体中の血液や体液が全て右手に集められるような感覚と共に、手の平に熱が帯びてくる。
空気が手の平に集中しているように流れ、小さな爆発音と共に拳くらいの火球が生まれる。
……あるぇ?
何だかあまり疲れない。いつも以上に魔力を使っていない気がする。
んんん?可笑しいな。もうちょっと魔力使わないと威力出ないんじゃないか?
だって、俺魔力が使われた気があまりしないもん。
マジで大丈夫か?こんな火球で大丈夫か?大丈夫だ、問題ない……と、いいなあ。
俺がぼーっとしてたら、勝手に火球は真っ直ぐ放たれた。
熱帯びていた手の平は徐々に冷めて行き、放たれた火球はある程度飛ぶと爆発した。しかも普通に。
……あるぇえ?
可笑しい。何かが可笑しい。いや全体的に可笑しい。
リーフは微笑みながら小さく拍手をし、リリアは内心驚いているようで、口を開いていた。
ヴィスタもうんうんと頷きながら、微笑ましそうに笑みを浮かべていた。
いやいや、あの、あれぇぇん?
何で普通に放たれたん?何で普通に爆発したん?あんな消滅したり吸収したりと、面倒臭い事しなくていいのん?
どうしてだ?魔力・形状・速度・魔法……ちゃんとイメージしたし、体にも覚えさせた。
しかし、威力が恐ろしい。俺の火球はドガーンと森が爆発させたもん。何かフ●ーザ様みたいだったもん。
褒め称えるヴィスタとリーフは置いといて、俺は素直な疑問をぶつけた。
「……無詠唱というのがあるって聞いたんですが、それって本当ですか?」
「おや、よくそんな知識を持っているね。だが、上級魔術師すらあまり使えないとされているんでな。あたしもよく知らないんだ」
「そうですかぁ……」
「原理もよく分かっていないらしい」
ちっ。駄目か。
いやぁしかし、威力がどうも……
……
威力?
……んん?
あっ
威力。
「あああああああああああ――――――――――――――――――――――――――――――――――ッッッ!!!!!!!!!!!」
「どっどうしたの!?ティナ!!」
「な、何かあったの!?」
ハッ!心優しき我が救世主と愛おしき我が天使が心配してくれている!!いかん!!
いやしかし!!俺ってば大切な事を忘れていたってばよ!
とりあえず、此処は口を開いて唖然としているヴィスタにも、ちゃんと平静を装って返事をせねば!!
「なななななな何でもないってばよよよよよよ」
「いや明らかに動揺してるよティナ!!平気!?」
「安心せい!!わしは無事じゃ!!」
「全く無事じゃなさそうだけど!!」
ナイスツッコミマスターだなリーフ。お蔭で冷静になってきた。
今更ながらに気づいたわけだ、俺は。
詠唱は自動的に魔力が引き出され、ある一定の魔法が展開される。
それは魔力に合わせて、だと思っていたが、実際は違った。平均的な火球が発生した。
つまりは、詠唱=決められた魔力で魔法が発生する、というわけだ。
例えば、魔力が100であろうと1000であろうと、詠唱で使われる魔力は50と定められている。そんなわけだ。
もし詠唱で、強力な魔法を発したければ、魔力を自身でも集めなければならない。
魔力を自ら集めるには、根気と応用、経験なども必要とか言われている。
……集める方法は、前にも説明したが、体中の体液を手の平や指先に集める感覚だ。
詠唱すると、手の平に吸い込まれるような、何とも奇妙な体験だった。
だが、自ら集めるには、空気の流れに沿って体液を手の平に集中させる。
また、魔力に関しては『流れ』を掴めば、隠したり放出したり出来る。これは凄い便利。是非お試しあれ。
上級魔術師になると、空気中に流れている僅かな魔力でさえ、己のものに出来るのだとか。
その為、魔力量が元々少なくとも、それなりの腕前の魔術師になれるらしい。
……これ、父さんに習ったな。すっかり忘れてた。
俺は魔力を集めず、詠唱で自動的に集め出された魔力だけを使ったから、平均的な火球を生み出せたのか。
無詠唱はどうするのか?俺のように魔力が異常に高かったらどうするのか?
イメージなどの想像力を必要とされる高度な無詠唱。俺は面倒臭い方法で平均的な火球を作った。
そう。イメージ。要はイメージなのだ。
俺はどうやったか?速度・魔力・魔術などをイメージした。頭が覚えていなくても、体が覚えてる。考えるな、感じるんだ。
その結果、森をドッカーンと吹っ飛ばした。反省してますよ、ちゃんと。
だが、今回のでやっと分かった。面倒臭い事をしなくていいのだ。
……俺、『威力』を想像し忘れた。
反省の意味を込めて、あえて短く、そして分かり易く例える言葉がある。「てへぺろ」である。
威力を想像せねば、俺の魔力からしてとんでもないのが生まれるのは分かっていたはずだろう。俺の馬鹿!!もう知らない!!
ま、前世の中学時代で通信簿オール2を取った俺だから仕方がない。主人公向きではないんだよ、俺は。
主人公向きだったら、絶対に「勇者」か「魔王」か選んでるだろ。そんなその辺に転がってる「裏ボス」なんて選ばねーよ、きっと。
そーいや、小説とか漫画の主人公って冷静だし、こういう時もちゃんと対策考えるよなー偉いわー。
話が逸れた。ごめんなさい。
簡潔に述べると、『威力をイメージに含めば良い』。簡単だったわ。
このまま何も知らずに魔法をポンポン出し続けていたら、魔王どころか破壊神だわな。
ふぅ、やれやれだぜ。
俺は人目を気にしつつ、一人安堵の溜息を吐いた。
これで、何とか化け物からチートになったのではないだろうか。
裏ボスでも普段でも、あまり目立ちたいとは思わん。何でって?俺ぁ勇者じゃないんでな。
「今度、私の家にある魔術書持って来るわ。中級まで書かれてるのよ!」
「あぁ、前に見せてもらったやつ?魔術の基礎はヴィスタに教わればいいし、それに加えてその本使えば、結構僕らも成長出来そうだよね」
何ィ!?
リーフ……貴様、リリアのお家行った事あるのか!?な、何てうらやま……いや、あの二人幼馴染だから当然か。
俺が驚愕の表情を浮かべたのち、一人で頷きながら納得という百面相をしていると、ヴィスタが「さて、」と話を持ち出す。
「魔術の基本はティルフィーネ君も使えるようだ。なら、次の段階に行こうか」
「他の魔術ですか?」
「うん?地学と歴史学について学ぶのだろう?」
俺の嫌いな二大教科が現れたようです。
通信簿オール2を取った強者・ティルフィーネ、参ります。
読んで頂き有難う御座いました。
次回『俺、思いつきます』




