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第5話:俺、生活する事に決めました

あらすじ:レアどころか、滅茶苦茶レアな人種でした

あ……ありのまま 今 起こった事を話すぜ!


「おれは 恩人の父親が髪を売りに行って帰って来たと思ったら いつのまにか土下座していた」


な……何を言ってるのか わからねーと思うが

おれも 何が起こっているのか わからなかった……


頭がパンクしそうだった……冗談だとか洒落だとか

そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ


もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……




……いや、マジで何でこのおっさん土下座してんの?


「すまなかった」

「いやいやいやいや」

「本物のミルディンにも関わらず……笑ったり、偽物だとか言ったり……」

「ごめんなさい。本物なんて見た事なかったから……」


土下座をしながらローレルはさっきから謝罪をしている。

いや、人に土下座されたのは初めてだが、感想としては「う、美しいフォルムだ……!土下座検定一級の持ち主か……!」くらいだ。

カメリアも頭を下げて謝罪しており、リーフもとても申し訳なさそうに謝り続けている。

そんな俺は土下座をしているおっさん……もとい、ローレルの真ん前で正座していた。


別にいいのに……俺のレア度が増しただけじゃない。

たかが人種がチートなだけじゃない。悪いのは俺のオトンとオカンです。


「やはり、君のお父さんは……」

「えーと、ミルディンの種類が分からないんですが」

「金の目だと“ゴールド・ミルディン”で、銀色の目だと“シルバー・ミルディン”だ」

「……あ、俺の父さんはシルバー・ミルディンです。銀色の目でした。母さんは金色の目だったので、ゴールド・ミルディンだと思います」

「……」

「やっぱりミルディンなのね……」


最初に会った時は酷く狂喜乱舞していたが、今のカメリアは疲れた顔でそう呟いた。

べ、別に俺悪くないもん。


「“プラチナム・ミルディン”か……まさか本当に実在するとは……」

「そんなに珍しいんすか?」

「そりゃお前……ミルディン自体珍しいんだぞ?プラチナム・ミルディンは幻の中の幻って言っていいくらいだ」


マジか。幻か……何かポ●モンみたいだな。

自分自身の事だからだろうか。いまいちピンと来ないんだよなぁ。

あえて例えるとするならば……血液型でいうボンベイタイプみたいな感じだろうか。それともアルビノみたいな……?

えっ何それ滅茶苦茶レアじゃん。ヤバいじゃん。俺凄いレア人種。チート人種。


「……とにかく、町に出るのはよそう」

「へ?」

「どうして?」


俺の疑問をリーフが代わりに聞いてくれた。


「……俺、本当にミルディンだと思ってなかったし、しかもプラチナム・ミルディンだなんてもっと思ってなかったから……。普通にオークションに出しちゃって……そこで、専門家に会ったわけだ。まぁ……言い難いんだが、かなりの大騒ぎになっちゃってだな……町中が騒ぎ立ててるんだわ……」


つまり、町にハリウッドスターが現れたような光景だろうか。

そりゃ普通の田舎町に現れたら、目ん玉飛び出るくらいに驚くよな。


「えーっと……それは、つまり……俺、町に出たら危ないんですか?」

「……危ないな」

「拉致されるかもしれないわね」

「髪の毛全部切られちゃうかもね」

「えっ!?ハゲたくない!!」

「そっちかよ」


冷静なローレルのツッコミはともかく、どうしよう。町に出られないどころか、外にまで出られなそうだ。

俺が正座のまま、うんうんと悩んでいると、リーフが良い案が思い浮かんだようで、ポンと手を叩く。


「そーだ!ティナ、僕の家に当分居なよ!」

「……はぇ?」

「あら、いいわね。どうせ、この村は魔獣が住みつく森に近いせいで、あまり人も近づかないしね」

「今更ガキが一人二人増えたところで変わらんしな」


えっ、ちょ、何勝手に話進めてるんですか。

言っとくけど、俺は口八丁なコミュ障ですからね?ちょっと慣れた人にだけしかこんなペラペラ喋りませんからね?

だが、完全に置いてけぼりのようで、俺が放置されたまま、どんどん話が進んで行っている。


……よし、話題を変えよう。


「あーあのー」

「リーフと一緒の部屋でいいよな?」

「あ、はい…って、そうじゃなくて、俺の髪っていくらでした?」

「……」


あ、あれ?何か凄い顔してる。ローレルさん凄い顔してる。何か苦い薬でも飲んだような苦い顔してる。

……そういえば、白金貨が沢山入ってたもんな。そりゃ凄い顔するわ。

すると、ローレルは無言で麻袋を俺の目の前に突き付ける。ジャランという金属音が響く。

だが、麻袋は一つではなかった。


……何たることだ!!


麻袋計四つ。どれも沢山詰まっている。中身を確認すると、案の定全部白金貨だった。


「……おいくらで売れましたか」

「貴族がなぁ……目の色変えてなぁ……」

「いや、だから、おいくらで?」

「一つの麻袋に二千枚の白金貨が入ってる」


とてつもなく単調に淡々とローレルはその驚愕のお値段を口にした。

えーと、白金貨一枚=日本円で一万円。それが二千枚入った麻袋×4……八千枚……




……日本円で……八千万円!?!?!?




何それ家買える。いや、この世界の相場とか知らないけど、かなりお高いんでしょう?

チラッと周囲を確認すると、ローレルは憔悴したように真顔で、カメリアは値段を把握してないようで混乱しており、リーフは最早目を丸くして口が開いたままだった。

……ですよね。俺、内心ドッキドキのハラハラですもの。全く理解してませんもの。


「……まぁ、ミルディンって信じ切れなかった貴族も居たしな。もっと高かったかもしれん」

「と、なると?」

「……一万枚超えてたかなぁ……」


大分遠い目で答えてくれた。つまりは、あれですね、一億円ですね。

マジかよ……たかが髪だぞ?嘘だろ?

宝くじじゃないか。ロ●6じゃないか。いやあれは一億円どころじゃなかったわ。


「何でそんなに高いんだ……」

「ミルディンの特徴の一つに、満月の光を浴びせて水をかけると髪が輝くんだよ。それが、貴族の女性の間では凄い人気らしくてな。昔、髪しか欲しがらなかった貴族も居たらしい」


あっそれ特徴だったんですか。

俺は髪をふと見て、なるほどと頷いた。

話を聞く限り、ローレルやカメリアは髪が輝く原理は分からないらしい。


「とりあえず、お前の髪を売って出た金だ。ほれ」

「え?いらないです」

「は?いや、何言って……」

「確かに俺の髪ですけど、そんな大金貰っても困るし……第一、此処で当分お世話になるみたいですから、その生活費として……」

「お前の生活費高すぎるわ。ガキがそんな事考えんでいい」


チッ!素直に貰っとけ!!

だが、大金目の前にして俺に渡そうとしてくる辺り、やっぱりこの村の人優しそう!!


「じゃあ、半分貰います。残り半分は貰って下さい」

「全部貰っとけよ」

「いえいえ。半分は生活費に充てるなり好きにお使い下さい。そんなに大金貰っても、実際困りますしね」

「あのなぁ……」

「俺、ミルディンなんですよ?今から沢山迷惑かけるんですよ?」

「……」

「お願いします。そうでもしないと、俺、恩感じ過ぎて出て行っちゃうかも」

「……ったく、分かった分かった!ただし、この金はお前の金だ。お前の生活する金として使うからな!」


どうやら根負けしたようだが、俺に使う気満々らしい。

カメリアも優しく微笑んだまま、ローレルの意見に賛同といった姿勢を見せている。

うむ。これでいい。

あまり迷惑かけたくないし、実際此処に当分住むわけだし。そうでもしないと、息詰まり過ぎて辛いからな。

満足気に俺が微笑んでいると、リーフが無邪気な笑みを浮かべて顔を覗き込んでくる。


「……当分、居るんだよね?」

「え?あ、うん。リーフ達がいいなら……」

「やったっ!!それじゃ、外に行こう!!僕、村を案内するよ!まぁ村自体そんなに大きくないけど」

「うーん……でも、俺あまり外に出ちゃ……」

「ローブ目深に被りなよ。髪隠してさ!結構ばれないよ?」


ずっと外に出たかったのか、体を小刻みに揺らしてウズウズしている。

リーフは俺を急かすが、あまり乗り気はせんな……いかんせん、俺は目立つ。ローブ目深に被った少年がいきなり現れたらそりゃ目立つ。

まぁ本音としては、元インドア派なので、外に出たくない。家でゴロゴロしたい。

そんな俺の様子を察したのか、本音は察していないのか、ローレルが立ち上がって、俺に言い放つ。


「あまり外の目は気にすんな。元々この村は色んな奴が現れたりして、たまに住み着いたりするんだ。ガキが増えたところで、誰も気にしねーぞ」

「でも……」

「ま、一応住民が増えたって村長には伝えとくわ。だから、リーフに案内でも何でも好きにしてもらえ」

「そんなわけで、ティナ!行こう!」


くっ……八方塞か……

致し方ない。今日、俺は外に出る。いや元々外には沢山出てるわけだが。

つか、リーフはあの八千万という大金を聞いていた割に、切り替え早いな。何故だ。俺は内心もう焦りまくりだぞ。

まぁ9歳だし、恐らくあまり大金だという事を把握出来ていないか、現実逃避しているか、楽観的なのか。

羨ましい限りだ。俺なんか既に現実逃避してる。大金から目を背けてる。

皆さん、大金が目の前に出て来たら、まず混乱して目を背けたくなるという事を覚えておきなさい。

ざわ…ざわ…っていう展開にはならないのだろうか。




……どうでもいいが、ごろ寝したかったなぁ



















***




自分の背丈より若干高い、いつもの愛用の杖を持って、外に繰り出した。

勿論ローブは目深に被っている。

これなら、一安心といったところか。


「僕の家、村と森の出入り口付近だからさ、よく迷った人を保護してるんだよ」


そう言って指差す方向には、俺が迷ったらしき森があった。なるほど、だからリーフは様子見に来たわけか。家に近いもんな。


「何かね、昨日爆発音がしたから心配だったんだ。ティナは怪我無さそうで良かったよ」


ごめんなさい。

その爆発させた人、俺知ってる。ごめんなさい。


それは置いておこう。いや、決して時効だとかそんな事は言わない。多分。

この村は見る限り、森に囲まれているようだ。四方八方に木々が(そび)え立っている。

村自体、確かに小さいようだ。だが、畑や草地もあり、それなりに資源が豊富だった。

果実の木や牧場などがある。

自然豊かで、まるで田舎町。いや、まぁ、村だもんな。


日差しが照りつける。ローブで遮光してると言えど、暑さは感じる。暑い。

思わず、その紫外線から逃れるべく、地を向く。

俯いても、後頭部から紫外線を浴びている気がする。つか、この世界に紫外線はありますか。



「見つけたっ!」



―――突如、甲高い声が響く。

だが、俺は暑さに負け、地へと視線を傾けつつあると、俺の視界から人の形をした影が入り込む。

流石に気付いた。俺達に話しかけていたのだと。

慌てて、顔を上げると、其処には


美少女が居た。


緑に近い水色の長い髪を二つに結った少女。ロングカーディガンのような物を羽織っており、ショートパンツから出ている健康的な太腿は、俺の心を躍らせた。

その容姿から、「しっかり者」だと判断出来る程、キリッとした顔立ちだった。

二次元から飛び出てきたような美少女は、リーフにビシッと指差す。


「朝方外に出てなかったから、てっきり風邪でも引いたかと思ったわ」

「あ、リリア~!色々立て込んでてさ」

「……あぁ、何となく察した。また旅人さんを保護してたわけね」


少女は俺をチラッと見て、ニコリと微笑む。年相応の無邪気な笑みだ。


「初めまして。随分と小さな旅人さんね」

「あー……どうも」

「よく此処の村は迷うもの。エゼル村って『アラゴルン』の隅の方だからね」


……アラゴルン?

何それ名前の響き格好良い。え?俺のセンスが悪いって?オーケイ、一発殴らせろ。


「……えーと、此処ってギルイシル大陸だよね?」

「え?そうよ……って、もしかして今何処に居るかも把握してないの?」

「面目ない」

「はぁ……お父さんとお母さんは?まさか、私達と同い年くらいの子が一人旅してるわけじゃないでしょ?」


少女は溜息を吐き、やれやれといった感じで頭を抱えた。

年の割に落ち着いた子だ。健康的な太腿が輝く。良いおみ足をしておりますな。

そんな彼女の発言に、リーフが過敏に反応した。


「……リリア、その、えっとね」

「?何よ」

「あー……俺の、母さんと父さんは……えーっと……居なく、なっちゃって」

「……あ……ごめんなさい……」


目を見開いて驚きつつも、すぐに頭を下げて謝罪する。

や、やめろ!!罪悪感がメリメリと俺を蝕んでる!!でも嘘じゃないんだ!!居なくなったんだ!!

あぁ……心の中の悪魔が俺に囁く。「このまま騙し通して同情させて、夜這いでもかけろ」と……

そして、天使はこう告げる。「9歳で何を求めてんだこのガキ」と……


……分かった、天使。俺は将来の為にもフラグを折らない方向へ行く。


「や、別に気にしなくていいよ。そうだ、名前は?俺はティルフィーネ・エンドレス。ティナと呼んでほしい」

「そ、そう?平気?」

「うん。平気だから、名前は?」

「あぁごめんね。私はリリア・ベリーチカ。リリアでいいわ。宜しく、ティナ」


ニコリと微笑んで、俺に手を差し出すリリア。可愛い。超可愛い。

何この子。口調はしっかりしてるけど、笑顔は子供らしく無垢で愛らしい。ギャップ。これがギャップなのね!!

胸はつるぺただけど、将来有望だ。リーフと仲良さそうだよな。幼馴染?幼馴染なの?

いや、まだ9歳だ。この段階で触れ合っても幼馴染と呼べる。呼べるよね?ね?


俺はそっと、差し出された白い手を握る。柔らかい。

女の子の手に触れるだなんて……何年ぶりかな……うふふ、心成しかいい匂いがする。

慌てて、俺は平常心を保つ。

前世を思い出せ。中学生を見て目を見開いて、不審者扱いされそうになったあの日を。

べ、別にロリコンじゃないんだからね!本当だからね!


「あ、そうそう!ヴィスタの講座終わったからね!」

「えっ!?嘘ー!やだー!もう一回やってもらうように頼むー!」

「もう無理よ!ヴィスタ忙しいもん」

「ヴィスタ?」


何か聞き慣れん言葉が次々と出て来たな。話を聞く限り、人名のようだが。




「あたしの事だよ、少年」

「うぉお!?」

「あ!ヴィスター!もう一回授業やってー!」


背後からの声に驚いて振り向く。

其処には、褐色の肌とバインバインのおっぱい。よくファンタジー漫画や小説で見る美女だった。

赤褐色の無造作な髪を一つに結って、露出度の高い服装。適当に着たであろうジャケット。腰には大きな剣を差している。

ショートパンツだが、リリアのとは違って耐久性や敏捷性がありそうだ。

革製のブーツの踵を鳴らせながら、その茶色の目を俺に向ける。

お、お姉さま……!その豊かなお胸に埋もれたいです!!


「おや、幼い割に顔を隠すとは。さてはお尋ね者かな?」

「うぇえ!?」

「冗談だ。何かと訳有りなのだろう」


フッと大人の妖艶な笑みを浮かべた美女。恐らくは「ヴィスタ」という女性。

ビキニスタイルのようで、肌を露わにした豊かな胸を支えてるようにして腕を組んでいる。

あまり目立たないが、しっかりと筋肉がついているようで、腹筋が若干割れていた。


「あたしはヴィスタリオン・アシュア。ヴィスタと呼ばれている」

「あ、えと、俺は」

「ティルフィーネ君だね?さっきの話を聞いていたよ。盗み聞きするようで悪かったね」


頭を撫でながら、俺に「宜しく」と言った。

その豊かなお胸のせいで、俺の股間がデンジャラスなんですが……何故体は幼いままなのだろう。デンジャラスになろうにもなれない。

ヴィスタは軽く笑みを零すと、リーフやリリアの方にも顔を向ける。


「さて、ティルフィーネ君。どうせ暇だろう」

「暇です」

「村を出るまで、どうだ?あたし達と授業でもしないか?」

「……授業?」

「こんなズボラな格好はしているが、算術と文字くらいなら教えられる。何だったら、剣術や初級だが魔術も教えようか」

「おぉ!!」

「その杖を見る限り、魔術師志望らしいしね」


ニコリと、太陽にも負けないくらい眩しい笑顔でヴィスタは言った。

魅力的なお誘い過ぎた。


俺は、二つ返事で承諾するのであった。

読んで頂き有難う御座いました。


次回『俺、学びます』


未だに魔法シーンがありません。すみません。次の話で書くつもりです。

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