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第3話:俺、世話になります

あらすじ:焼野原と化した森に近づきましたよ

焼野原と表現すべきか、あるいは、炭となった森だった所と正直に言うべきか。



その森だった所に、俺は飛行しながら来た。

空飛ぶの楽しい。そ~らを自由に……誰だ今「歌うと思った」とか言った奴。

うるせー!文句あんのか!!

こんなファンタジックでメルヘンチックなエキセントリック(適当)な世界で空を飛ばずに何とする!!

俺は飛ぶぜ!!空高く!天高く!


まぁ現実逃避は此処までにしておこう。


爆発して山火事にならなかっただけマシか……若干黒煙は上がっているが。

……火が点いてしまったら、俺の責任だ。消してやろう。森ごと。

証拠隠滅ではないからな?

とりあえず、まだ木々が生い茂っている所へと行こう。



***



少し森の外を飛んでいると、まだ若く萌える木々や草花が生えている所があった。

此処はどうやら爆発に巻き込まれなかったらしいな。良かった良かった。

全く何処のどいつだ爆発なんぞ危ない事しやがったのは。


杖から降りて、此処からは歩きで行こう。人に会っても大丈夫なように。

森に入り、長く伸びた草をかき分けて、人が通行出来るような小道を見つけた。

此処なら堂々と歩けそうだ。

俺は嬉々として歩道を歩き始める……が、重要な事を思い出す。


此処、何処よ。


しまった……事前に地図見とけば良かった……

……見ても、どうせ母さんの後を適当について行ってたし、連れ回されてただけだし、分からんだろうが。

えーと……確かあの俺が置き去りにされた大草原に入る前の国は……確か……

『ルインダゴル大陸』の『ローハン』って所だった。

ユニコーンが居るって言われてて、母さんが大興奮状態で俺を引っ張り連れて行った。

かなり色んな種族が居たな。

ユニコーンとかペガサスが居るって言われてるくらいだし、観光地としての役割を十分果たしてる。

ただ、その物珍しいユニコーン達を欲していて、貴族の間での睨み合いが凄いのだとか。


話が逸れた。どうも俺は話を逸らしてしまうな。

ルインダゴル大陸を抜けて、今は『ギルイシル大陸』なのは分かる。其処まで分かる。

ただ現在地は分からない。一番重要な所が分からない。

ちゃんと地図を覚えておくべきだったか……いや無理か。

前世でも地理苦手で都道府県覚えられんかった程の俺が覚えられるわけないな。うん。




「……どうすっかな」


今の状況が悲惨と言うよりも、危険と言うのは分かる。

母によると、未だに詳細不明の国もあるのだとか。

それ故に、危険地域だと「暗黙のルール」のように人々は指定している。

もし、此処が詳細不明の国だったら……



絶滅危惧種の俺。ピッチピチの9歳の少年。少ない手荷物。



こんな3連コンボのフルコンボだドンだなんて……これは狙われるぞ!

出来れば、獣族で巨乳で姐御肌なお姉さんに狙われて拉致されたいものだ!!舌なめずりされたい!!

いやそんな欲望を正直に表している場合じゃない。

このままじゃ、奴隷商人だの盗賊だのに襲われ、あわよくば体まで狙われるぞ。

その時はお決まりの「くやしい……!でも、感じちゃう……ッ」って言おう。初めてだから優しくしてね。


早く行こう。冗談じゃない。

確かにお姉さんなら良いが、お兄さん♂だったらどうする。俺嫌だよ。そっちは卒業したくねえよ。

青ツナギを着たお兄さんにアッー♂されたかねーよ!!



杖と革製の鞄を力強く握り締め、俺は少し足早に歩き出した。


早く行かなきゃ、という考えが強すぎたのかもしれない。



忘れてた。夜、急に雨が降る事を。

















***






「あークソッ!」


母譲りの凛とした顔立ちだと自負しているが、その高貴な見目に似合わぬ口調である。

仕方あるまい。俺は現代っ子なのだ。

いやそれはどうでもいいのだが、俺はかなり苛立って来ていた。

元々ゲームが少しでも上手くいかなかったり、バグったり詰んだりしたらすぐ切れた。

その為、『短気は損気』を胸に刻み、此処まで生きていたつもりだが……無理だ。切れたい。


歩いても歩いても、森。森。正に森。すんごい森。

さっきから景色が変わってない気がするぞ……変わったと言えば、空くらいだろう。

疲れた……一旦フードを取ろう。誰も来る気配ないしな。


「あーあ……お月様こんばんはしてんじゃん……」


この異世界の月は凄い大きく見える。白く、淡く輝いていて、前世の月よりもロマンチックだ。

真ん丸で今日はやけに綺麗だな。

そういえば、あまり夜空を見上げた事がない。星が綺麗に感じる。

前世では都会で暮らしてたし、空を見上げる暇さえなかったからな。何となく気が休まる。


……




……ん?




「やっべええええええ!!」



俺は急いでローブを目深に被る。

やばい、やばい、やばい!!

すっかり忘れてた。


『常識ガイドブック(母作)』に書いてあったのを。



―――満月には、当たらない事。



ああああああチックショー!!

何で忘れちまうかなぁああああああ!!

声に出して叫びたいのをぐっと堪える。急いでフード被ったし、セーフじゃないだろうか……


ん?いやでも……身体に特に異常は見当たらない。


狼にもならないし、大猿にもならない。美少女戦士にも目覚める気配はない。

何で駄目なんだ?


ペタペタと頬に触れたり、髪に触れたりして確認するものの、やっぱり変化はない。



「……まあ、いいか」


再度歩き出そうとしたら、鼻先に冷たいものが当たった。


「ん?」


空を見上げると、先程の綺麗な星空から一変、黒雲が出てきた。


「あー……雨降るんだっけ……」


思わず口から呆れ声が出て来てしまった。

傘なんて便利なもんねーよ。異次元空間に大事に大事に収納しちまってるよ。

今開くか?うーん……人が通りかかったら危ないよなぁ

何だかんだで俺って意外と注意深いな。まさしくK(危険)Y(予知)みたいな能力が……


徐々に地面にポツポツと斑点模様が出て来る。

本降りになって来そうだ。

急いで屋根とか雨宿りになる場所を探さねば。


俺は急いで駆けて行くものの、段々雨の勢いは強まり、地面がぬかるんでくる。




「ああああ!」




地面に水たまりが出て来る。視界が悪く、雨がザーザーと音を立てて地面を叩く。

本降りならぬ、土砂降り。ざけんな。

こんなにすぐに悪天候になるとは……あ、でも母さんの占いによると「今日の夜雨降るわねー」っつってたわ。てへぺろ。

鞄は意外にも防水性だし、杖は元々濡れても大丈夫だし、ローブも耐久性も防水性もあるが……

俺の履いている靴、と言うよりはブーツなんだが、これは革製で防水性はない。速乾性はあるが。

その為、すぐに足が重くなる。無念。


志半ばで、我が野望、燃え尽きるか……


なんて変な武士ごっこしてる場合じゃねえぞ俺。急ぐぞ。



パシャパシャと水たまりを踏みつけるようにして森を駆け抜ける。

だが、一向に外に出られる気がしない。


「あーもう……びしょ濡れだ……」


急いで走ったせいか、顔もローブの中もびしょ濡れだ。

髪も濡れており、水を絞り出そうと、ギュッと握り締めようとする。


が、


その時、俺は髪のある『異変』に気づいた。




「……は?」




髪が、きらきらと、輝いていた。



いや、電球のように煌々と全体的に光っているわけではない。

髪から星屑が生まれているような、先程見た星空のような、そんなポツリポツリとした光が発している。

雨の雫かと思い、急ぎ雑巾を絞る仕草で髪を絞るが……どうにも違うようだ。

髪本体から光を発しているように見える。いや、発している。


小さな蛍が髪に纏わりついているように見えて、見る人によってはロマンチックだろう。

だが、今の俺にとっては迷惑極まりない。

夜で雨も降っており、大分暗い中、ポツポツと輝いている髪を持つ少年が居るんだぞ?一人で。

奴隷商人や盗賊にとっては格好の餌食となるだろう。

こんなラメが降りかかった髪なんぞ、男の俺にとっちゃ何の得もない。

これじゃあ少女漫画だ。

花を散らしてトゥンク...///でもやっときゃいいのか。このラメラメしい髪で。


どうやったら(コレ)消えるんだ?

ゴシゴシ拭いても、絞っても、一向に消える気配ないし、頭上から無遠慮に雨は降り注ぐし。

ローブを目深に被ったところで、髪の輝きはばれそうだ。

畜生……オカン……どうしてこんな大事な事を教えてくれなかったんだ。

恐らく、「面倒臭いから」なんだろうが……おのれ、ママン。一生恨むぞ。




俺が小道の脇で、髪を絞ったり拭ったりと弄っていたら、





パシャ



っという水の音がした。



普通の水の音なら気にしないが、これは明らかに、何か(・・)が水たまりを踏んだ音だ。

動物か?魔獣か?後者なら何となく厄介だな。

だが、その“何か”は徐々にこちらに近づいている気がする。



パシャ、パシャ



水を踏む音は、どんどん大きくなっている。近づいて来ているのだ。

動物か魔獣なら、もう少し足取りは早いと思うが……と、なると……やはり、人間か?

こんな夜更けだ。

歩いている奴は、大体絞れるだろう。


……盗賊辺りだな。


水を踏み抜く足音は、少し止まった。

こちらに気づいたようだ。

そして、少し早まった足取りで、足音は大きくなっていく。

駆けているようだ。俺に向かって。



前世で平和な国に生まれ育った俺にとっては、“人殺し”とはかなりの躊躇がある。


だが、己の身は己で守る。

この世界は戦争も起こっているし、革命だってある。魔物も居るし、弱肉強食なのだ。

オーケイ、人間とは思うな。ゴリラでも何でもいい。違うものを連想しよう。

俺は杖を握り締める。

隙を見せてはいけない。あちらが何かをする素振りを見せたら、お構いなしに()る。




パシャン




しゃがみ込む俺の間近で、足音はぴたりと止まる。


さぁ早く来いよ。こっちは覚悟出来てんだよ。べ、別にお誘いってわけじゃないからね。


相手が何かを言うのを待っていると、相手は俺の様子を窺うように話しかけた。



「……あの?」



俺は、驚いた。

大きな雨音でかき消されそうになった声の主は、態々大きな声で話しかけて来た。

いや、それに驚いたわけではない。

この声は……恐らく、いや、どう考えても『少年』の声だ。


未だ幼さが残り、声変わりもしていないであろうその声は、俺の同い年か±数歳差くらいだろう。

いや、少年だからといって油断は禁物。

少年の盗賊とかって居るし。漫画では大抵悲しい過去を背負ってるんだよな。あ、何か同情の念が……


「……あの、大丈夫、ですか?」

「……」

「えと、言葉通じますか?魔族の方ですか?」

「……い、や……通じます」


凄い優しく話しかけて来た。油断は禁物だが、俺の心は既に揺らいでいる。

そっと俺の肩に手を乗せて、傘に入れてくれた。

未だ俯き座り込む俺を、大分心配してくれているようで、背中まで摩ってくれている。

何だ此奴。イケメンか。畜生、心が陥落しそうだ。たかがイケメン相手に。

だ、だって……さっきからずっと、「大丈夫ですか?怪我してますか?」って聞いて来るのよ!?

前世ではありえない心配のされ方に、俺の目頭が熱くなってくる。あれ、目から汗が……


「ぼ、僕の家……というか、村、近いんです。此処じゃ寒いし、魔獣も出ます。とりあえず、一旦来ませんか?」

「え、いや、でも」

「此処じゃ、危険です。魔獣だけでなく、野生動物も来たりします。夜だし、変な人だって……」


変な人?痴女か?ウェルカムだが?


「……あの?」

「あ、いや!お言葉に甘えさせて頂いて……」


思わず、現実ではない違う空間へ旅立っていた。

とりあえず、怪しい人間ではないようだ。さっきから献身的だし。

もしも襲い掛かって来たら、容赦なくオーバーキルだ。覚悟しろよ、少年。


俺は、重たい腰を上げて、少年の方を見る。


うお。

口に出そうなほどの格好良さだ。これがイケメン。本物のイケメン。

前世の日本人とはかけ離れてる、外国に居る感じのイケメンだ。

何だろう、スラッというか、鼻筋通ってて、顔立ちが整ってる。

緑と青の入り混じった輝くエメラルドグリーンと、奥深さを感じさせる紫の目。

其処らに居そうなモブ女なら、コロッと落ちてしまいそうなイケメンさだ。

正に人類の敵。駆逐してやる。



……?



さっきから、何故か口を開けて唖然としてる。

折角の美形が台無しだぞ、イケメン君。

それとも何だ?俺の美貌に惚れたか?おいおい、全くモテる男は大変だぜ。


いや、そういう冗談は置いといて。どうした、此奴。



「……」

「……あのぉ?」

「……ミルディン…………人……」





あっ。


こってりすっかり忘れてた。自分の人種。

そうだ。俺は絶滅危惧種。天然記念物。重要文化財なのだ。(今指定した)



「……やっぱり、いいっす」

「……ハッ!えええ!!?」


我に返ったのか、イケメン君は意識を取り戻したと同時に真夜中にも関わらず、叫んだ。

いやだって、危ないじゃん。俺すっかり忘れてたわ。

こんな珍しい人種だもの。ついて行って、拉致されて、奴隷売場にレッツゴーでも可笑しかねーぞ。

確かに雰囲気は柔らかく、見目も温厚で優しそうだが、ついて行く義理はない。さらばだ。


だが、イケメン君は簡単に俺を手放さなかった。

道を再度戻ろうとした俺のローブの裾を離そうとしない。


「……離してくれませんかね」

「いや!あの!ごめんなさい!じっと見ちゃって……」


別にいいよ。見たきゃ見ろよ。ただし、ついて行こうとは思わん。


「でも、此処、本当に危険で……!『ディスペアの森』って呼ばれるくらいで……」


絶望(ディスペア)の森』か。上手い名前を付けたものだ。

しかし、必死だな。このイケメン君。

俺を其処までして(商品的な意味合いで)手放したくないのか、単なるお人好しなのか。

後者がいいな。前者は切ない。


「……」


此処まで必死で鬼気迫る表情で言われると、俺も人としての情が湧き出て来る。

さっき凄い優しくしてもらったしな。何か心が揺らぐ。


……


別に、売られそうになったら、反撃すりゃいいしな。




「……分かり、ました。案内してくれますか?」

「ほ、本当!?じゃあ、行こう!此処本当に危ないんだ!豪雨で視界も悪いしね」





イケメン君は俺の腕を掴むと、引っ張って案内してくれた。



いや、あの、力結構強いんですね。





何だか、攻撃し掛けられたら、勝てる気がしませんよ。



どうしましょう、ママン、パパン。






読んで頂き有難う御座いました。


次回『俺、貴重なようです』

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