第33話:俺、暇です
あらすじ:
学園に入ったティルフィーネ。其処で魔力のない少女・サラと出会う。サラを救う為、国家の前に裏ボス・ゼロとしての姿を現しながらも、サラの魔力を元に戻し、何とか事なきを得た。
そして、あれから1年後―――新たな火種、【勇者召喚】に再度向き合うのだった。
※お久しぶりです。また始まります。何かと不定期更新となりますが、精一杯励みますのでよろしくお願いします。
※16/6/4 誤字を訂正致しました
入学したり、サラ救ったり、何やかんやと忙しい怒涛の一年だった。それ以外にも、試験や試験や試験と……異世界来てまで試験週間に苦しまれるとは誰も思うまい。ぶっ殺す!
赤点は回避し、どちらかといえば優良な点数を手に入れて来た俺にとっては、まぁ其処まで地獄ではなかった。ぶっちゃけ、ジェイドは毎日涙の大洪水だった。
ロイヤルストレートフラッシュな点数を持って来た時には俺は本気で怒った。リーフにも協力してもらい、ジェイドの再試験の為にも、目一杯勉強した。途中でリリアも乱入して来たが、御愛嬌である。
何とか再試験では赤点回避したものの、マリー先生と共に俺はジェイドに説教した。しかし、次の試験に再度同じことをやらかすのだ。大体赤点毎回取る奴って同じことを繰り返す。何という無限ループ。
ちなみに、この世界でも「私、全く勉強してな~い!」っていう女子間で起こる謎のバトルが勃発している。
***
さて、怒涛の一年。大きなイベントもなく、魔法の授業内にて、詠唱を覚えねばならないという苦痛を味わいつつ、俺は何とか二年生になった。
実は、魔力を取り戻してからサラの成績はぐんと上がり―――まぁ、元々筆記に関しては本人の努力で結構な点数を得るようにはなっていたのだが―――俺も一応チートな化け物なので、成績は上位者に含まれる。
その結果、サラと俺は何と、Cクラスに上がれるらしい。
……しかし、それを聞いた時、何ともまぁ世界の終焉が来たのかと思われるくらいの絶望感醸し出した表情を浮かべる友人が居た為、俺らはそれを丁重にお断りし、辞退した。
『宜しいのですか?クラスが上がれば、その分難易度は上がりますが、更に様々な事を学べて、視野が広がるかもしれませんよ』
『いいっす、いいっす……ジェイド心配だし、別に上がらんでもいいんでしょ?』
『そうですが……』
『私も、いいです。ジェイド君、一人に出来ないから……』
『そう、ですか。それも、個人の自由でしょう。私は何も言いません。このままDクラスに在籍するならば、また一年宜しくお願いしますね』
……と、結構あっさり承諾して貰えた。元々マリーは、見た目が厳しそうなだけであって生徒想いの良き先生なのだ。
何処か微笑ましそうな表情を浮かべて、俺らを頭を撫でた。何となくむず痒かった。
ちなみに、今回のクラスが上がるといった事を聞いて、ジェイドは「お前等に遅れは取らねえ!」と言って、勉学にも励むようになった。剣術などの体力に関しては言う事なしらしいので、このまま勉強の方も是非頑張ってほしい。そして、三人でCクラスに上がるのだ。
リリアとリーフは特に上がる事はないらしい、が。
何と、リーフはSクラスに入れるかもしれないと噂されていたのだ。これには、俺もリリアも吃驚。本人は否定してたけど、案外辞退したのではないだろうか……本当に俺がAクラスに上がって来るのを待って。
リリアも剣術の腕前と共に魔法も上達したらしいが、如何せん勉学が苦手らしい。「数式解いてどうなるのかしら」とぼんやり呟いていたのを覚えている。
ミラは無事卒業した。このまま国の魔術師団の所に、入団するそうだ。
『愛し子様ぁ、何かあったらよしなにぃ~』
『何もないと思いますけどね……』
酷くあっけらかんとした表情で、飄々と軽やかに立ち去って行った。―――僅かに、吹っ切れたような顔をしていたのを、俺は見逃さない。長年縛り付けられたものから、解放されたかのように清々しいその表情と、風を仰ぐ自由な振舞いは、彼の本当の姿だと思いたい。
……これは余談だが、俺がゼロとして暴れ回った件は、学園にも伝わっていないらしい。ミラやサラも、先生や学園にはあまり洩らさなかったようだ。裏ボスを目指す俺にとっては助かったが。
***
そして、俺は今―――王城に居る。無論、エルロンドの王城である。
「陛下~へ~い~か~……何をなさってるんですか……?」
「ゼロか。何って、見て分かるじゃろう」
「私の目が魔法や催眠などにかかっておらず、見たままの真実を話すのであれば、土いじりしてるように見えますね」
「土いじりしてるんじゃよ」
土いじりしてるんじゃよ。
―――じゃねえよ!!仮にも(仮にも何も実際に)一国の王がほっかむりして、何でせっせと土いじってんだ!!
「だって、隣国のクソジジイが『お宅んとこ、魔法やら何やら発展してるっぽいけど、所詮作ってる野菜なんてその辺の草みたいなもんでしょ??m9(^Д^)』とか言うんじゃもん」
「もん、じゃないでしょう……いや本当に……」
「なら、自分で作ろうとか思わない?」
「思いませんね、これっぽっちも」
そう、これがエルロンド国の王・パーヴェンの真の姿である。あの日見せた威厳なんてまるでなく、むしろ小刻みに震えていた方がやはり本性といったところか。
ただの土いじりのようだが、彼なりに野菜を作っている……つまり、農業をしているのだ。
エルロンドでは基本、野菜などは輸入が多く、農業よりも本来魔法などの技術に力を注いでいる。その為か、国産の野菜や小麦は少ない。
……なんか、その辺馬鹿にされたっぽいな。隣国―――ガラドリエル国の王に。
同盟を組んでおり、互いに高め合ってる技術力や農作物などを輸出入したり、そういう協力は惜しまないが、何かね、仲悪いの。
ガラドリエル国とエルロンド国の王様同士超仲が悪いっぽくて、会う度に口論してるそうだ。
エクスによると、「喧嘩するほど仲が良い」とのことなので、本気で憎み合ってるなどといったわけではないらしい。
「陛下、またそんな……って、貴様ァアアアア!!」
「え?あ、御機嫌よう、ルイーザ殿」
慌しく現れたのは、初めて王城に来た時、俺にえげつないほどの殺意を向けて来た黒騎士―――ルイーザ・アクバル―――が、俺を見た瞬間に怒号ともいえる雄叫びを上げた。
いつも眉間に皺寄せてるんだよなぁ、ヤクザ顔により一層恐ろしさが増す。
挨拶したのに、こめかみに浮かべた青筋がはち切れんそうになるほど、顔を真っ赤にさせて怒りに震わせている。やだこわい。
「御機嫌ようじゃない!貴様、また無断で……!」
「ゼロ様!!」
―――そんなルイーザのけたたましい怒号は、鈴の様な高く軽やかな声によってかき消された。
編み込みにあげられた可愛らしい薄茶の髪をふわふわ揺らしながら、丸く大きな垂れ目と小さな唇を持った、愛らしい顔立ちは喜びで破顔しており、色白で華奢なその容姿は正に美少女といった姿。
薄紫と薄紅を合わせた豪華なドレスを身に纏った少女が、俺の下へ一直線に走って来る。
「王女様。御機嫌麗しゅう」
「はい!御機嫌麗しゅう、ゼロ様!私の事は、是非ともローゼと呼んで下さいませといつも申しておりますのに!」
「ははは、ローゼ様と呼ぶと、その隣に居る恐ろしい顔立ちをした黒騎士に睨まれてしまうのですよ」
「ルイーザ!」
「も、申し訳御座いませぬ……しかし、ローゼ様、彼は、」
「言い訳は結構!彼は優しい人です!彼を侮辱する人は私が許しません!」
ぷりぷりと可愛らしい顔立ちを台無しにさせる程頬を膨らませる少女は、この国の第一王女であるローゼ・エルロンダ・シュヴェルツァである。齢8つのピッチピチでヤングな少女である。
彼女と出会ったのは、陛下に入城の許可を貰った数日後の事である。
仮面を被った俺を見て悲鳴を上げ、その際、魔力を暴走させてしまった。驚かせたのは悪かったが、目と目が合う瞬間、恋に落ちずに雷を落とすとは、これいかに。
魔力の暴走を抑え、優しく優しく(腫物を扱うように)気を遣ったら、いつの間にか懐かれた。
陛下の話を聞く限り、魔力を上手く制御出来なかったらしい。其処に、それを抑制してくれる俺が現れた。俺が居る限り、魔力は暴走しない=一緒に居ればいい!という結論に至ったらしい。単純と言えば単純。
しかし、(当時)7歳で暴走し易いって中々危ないな。そう思った俺は、度々王城に赴いて、彼女に魔力操作の手解きを教えていた。3年後には恐らく学園へと入るのだろう。今のうちにどうにかした方がいいと判断した。何か、陛下って愛娘に弱くて甘いみたいだし。溺愛するのはいいけれど、魔力を操作出来ずに入学出来るかよ……出来ても、Dクラスだと思われる。
まぁ、そんなこんなで、優しくしてたら懐かれたわけだ。
兄が居るらしいが、学園に在籍して居る為、最近滅多に会えないらしく、俺を兄として慕ってる部分が垣間見える。同い年らしいし、俺も悪い気はしないので、其処は放置。
そうそう、ローゼにビビられてから、ゼロとしての服装を少し変えた。
まず、シークレットブーツにした。これは元々のブーツを改変したのだ。どうやったのかと尋ねられれば、内緒。ヒントは靴屋です、はい。暇だったので、ちょっと魔法を施したりして遊んだけどね……。
しかし、シークレットブーツにしたので、若干身長高くなったし、今まで以上にばれにくくなっただろう。チビって呼ばれずに済むだろう、うん。
ローブも中の服も黒一色にし、マフラーは白に変えた。赤褐色はどうも悪役臭くなってしまう……裏ボスって悪役なんか知らないけど。若干白マフラーの方が長く、金色に縁取られている為、高級感と上品さがある。
一番大きく変わったのは、仮面である。ローゼにビビられるわ、お茶会でお茶もお菓子も口にしない俺に、そろそろオルフェストが切れそうなのだ。だが、顔を出すわけにはいかない。
其処で考え付いたのは、目元だけ隠れる仮面である。以前から使っていた狐のような面を口元だけ取った。流石に店で頼むのはちょっと警戒感無さ過ぎかなと思い、創造系統の魔法を使って自分で行ったのだが……難しかった。とりあえず、上手くはいったが、あんな細かい作業は二度としたくない。
そしてなんと、ゼロの時の俺の髪の色は黒いのだ。
これは、染色石という魔石を使った。以前にも説明したが、これは元々は「布地に色を染める為の魔石」である。色を染めると、その染色石は無色透明となる。つまり、色が入っていない状態となるのだ。
しかし何と、試してみると髪にも色が付く事が判明した。勿論、後で色の入っていない染色石に魔力を込めて、髪に触れさせれば髪に付いた色を吸い取り、原色の髪に戻る。
染髪しても染め直す必要もない。この世界の染髪はとても楽だ。……前世の俺は地味な男だったし、染髪したことないがな。
染色石というのは希少価値も高いし、あまり流通はしていない。ばれる事も少ないだろうと高を括っている。
「さぁ、ゼロ様!今日も訓練を……!」
「あ、今日は顔を見せに来ただけですので。ちょっと寄る場所がありまして」
「……」
「ローゼ様、またの機会に」
「……ふ、」
先程の花が咲いたような笑みが一転、くしゃりと愛らしい顔を歪ませ、白い肌が見る見る内に赤くなる。丸い大きな目は徐々に艶が出て潤んで行く。
あ、これヤバいやつ。
「ふ、うっ、」
涙が浮かび、少しずつ水の含んだ声が漏れる。周囲の人間も流石に異変を感じ、こちらに目配せをして来る。親馬鹿な王はおろおろと分かり易い程に焦りだし、ルイーザは最早俺の事は眼中にないようにローゼの側に駆け寄り、必死に宥めようとしている。だが、その努力は全く意味を為していない。何を言えばいいか分からず、言葉を詰まらせ、行き場のない両手をローゼの前に出していた。何のポーズだろう。
さて、俺はどうするかというと。
「……では」
「は!?待て、貴様ァアアアアアア!!!」
戦略的撤退。
賢い選択だと自負している。俺は杖に飛び乗り、一定飛行を続けたら転移しようと模索する。
小さくなっていくルイーザ達。最後に聞こえたのは、ルイーザの雄叫びではなく、ローゼの咽び泣いた声だった。
***
勇者召喚。
俺がエルロンドの王に接触したのは、元々これが目的だった。
エルロンドは、魔法の技術が発達している。それこそ、ドゥアリンを超すと授業でも習ったのだ。しかし、ドゥアリンは武力も資金力も頭一つ分抜けている。どれほどの武力を有しているかは定かではない。だからこそ、無駄な挑発や戦争を避けて今まで国は保ってきた。
まぁドゥアリンの話は兎も角、だ。
つまり、其処まで魔法に発展したエルロンドが、【勇者召喚】といった異世界に通じる転移術を所有しているのではないかと考えたのだ。
事実、試験勉強で図書館に籠っていた際、ドゥアリンがエルロンドの魔術師を呼び寄せて、【勇者召喚】の禁術を行ったって言われてたし。
それに、此処なら、図書館とはまた異なって、昔の文献も結構あるし、魔法書も歴史書も多い。オルフェストの所は、あまり人国の資料は多くなかったからな。
それで、一年近く書庫に籠ってみたが……【勇者召喚】の資料はなかった。
あったとしても、勇者と魔王の童話とか、勇者は本当に居たのか!などという昔の考察本のような物があった。
【勇者召喚】に直接繋がる手がかりのような物はなかったのだ。
かつての俺は、「テンプレひゃっほい、うっほほーい」とはしゃいだものだが、オルフェストの話を聞く限り、本来なら食い止めるべきではないかと考えつつあるのだ。あまりにも、勇者の扱いがぞんざいで非人道的過ぎる。犠牲者は少ない方が……いや、むしろ居ない方がいい。
しかし、此処で嬉しい情報を思い出した。確か図書館で見た文献では“ミルディン”の多量な魔力を利用していた。今現在ミルディンは居ない―――つまり、【勇者召喚】を行える確率は低い、はず。
文献もなく、ミルディンも居ない。
【勇者召喚】が出来る可能性はほぼゼロなのではないだろうか。
しかし……
「やっぱり、情報が少ないよな……」
俺は今何してるかと言うと―――オルフェストの居城にある書庫に居る。
やはり、古代の文献はこっちの方が多い。だが、人国に関しての情報は多くない。畜生、欲しい情報に限ってないなんて。
バララとマッハのスピードで本を読み進んで行く。速読法なんて何ぼのもんじゃい。
「……ゼロ、何をしている?」
「あ、オルフェスト様、お邪魔してます」
「……最近儂に挨拶せずに無断で書庫を拝借してるな」
「いやぁ、えへへ」
「褒めてはいない」
相変らず厳つく禍々しい雰囲気を持っている。オルフェスト様怖い。しかし、あの顔は怒りではなく呆れである。
俺は背表紙すら擦れた古い本を棚に戻し、無言で歩き始めたオルフェストの後をついて行く。
あれは、「お茶会するぞ」という暗黙の行動である。喋れよ。
***
「また“勇者召喚”か」
「ええ」
心地良い風が頬に触れる。広々とした庭園でのお茶会。
口元に仮面を覆わなくなってから、オルフェストと一緒にお茶が出来るようになった為、オルフェストの機嫌も良い。俺も美味しいお茶と茶菓子を口に出来て、お互い良いこと尽くしである。
さて、そんな優雅なお茶会だが、内容は特段優雅でも何でもない。
「何故そこまで気にかけるのか」
「文献や話を聞いている限り、酷く勇者の扱いが雑で非道なものばかりです。そういった犠牲者を減らすというのも一つなんですが……」
「まだあるのか」
「【勇者召喚】は、魔力量の多い“ミルディン”の多大な犠牲によって行う事が可能だった禁術です。もし、“ミルディン”以外の人種を利用しようとしたら……」
そう。それこそが俺の気にかけていた問題点である。
今の所、ドゥアリンというのは非人道的だが、何処か合理的な国である。魔族を滅ぼしたいと今でも考えているとしたら、何が何でも大きな戦闘力―――勇者を欲するはず。そこで、【勇者召喚】である。しかし、既に魔力を補える“ミルディン”は滅んだ―――ならば、他の種族で補えばいい。
もし、そう考えてしまったら……。
ミルディンの奴隷制度が、ミルディン滅んだ今でも生きているドゥアリンなら、間違いなく多くの奴隷を利用して行うだろう。
そうなったとしたら……。
「勇者という犠牲者だけでなく、他の種族の犠牲者も増えるでしょう」
「……ふむ、しかし国民を利用するわけではあるまい」
「綺麗事ですが、奴隷と言えど生きていますよ。自ら望んで奴隷になる者なんて居ないでしょう。それに、その火種が他国にも及ぼす可能性もあります。そうなったら、全面戦争どころではありません。もしかすると、魔帝国にも甚大な影響を及ぼす可能性もあります」
「流石に、それはないとは思うがな。人族というのは愚かだ。勝手に共倒れる可能性の方が高いだろう」
「……そうですね。杞憂だといいんですけどね……」
ちょっとネガティブに考え過ぎただろうか……。
しかし、奴隷だからといって多くの犠牲を伴うのは頂けない。あのドゥアリンだぞ?亜人の差別が大きい国だ。もしかすると、今度はエルフ単体を狙って……ってことも大いに有り得る。
他国にもエルフを差し出すように言ってくるかもしれないしな。
俺がうんうんと頭を抱えて悩んでいる姿を見て、オルフェストは呆れの入った一息を吐くと、ティーカップを置いて言った。
「なら、会ってみるか」
「……誰にです?」
俺がジト目でオルフェストに問いかけると、彼は何の躊躇いなく口にする。
「【勇者召喚】にて実際に召喚された者の実子だ」
思わず、音を立てて椅子から立ち上がった。ティーカップに入った紅茶が波打って揺れるが、零れずに済む。もし零れたら、オルフェストに拳で優しく叱られたかもしれない。
しかし、今の俺はそんな事を気にしてられない。今、何と言った?実子?それって、【勇者】の実子か!?
「子供が居ると言ったろう。事実、まだ存命している」
「……ッ!会わせて頂けるんですか……!?」
つい口調が元に戻りそうになったが、間髪の所で何とか敬語で尋ねた。
(仮面で見えないが)慌てる俺が物珍しいのか、オルフェストはじろじろと見ると、何処か満足気に頷き、二つ返事で承諾した。
「文を出す。すぐに駆けつけるだろう」
「いえ、こちらから出向きますよ」
「構わん。王自ら出向くわけにもいかぬ」
何でこの人はちゃっかり自分も付いて行く気満々で言っているのだろうか。別にいいけど。
ベーゼを呼び出し、何か話していると思ったら、すぐにベーゼは城内へと戻って行った。
俺が首を傾げていると、「文をすぐに出させる」とだけオルフェストは告げた。
「どんな方です?勇者のお子さんは」
まだ幼いだろうかと思ったが、あれから何百年と経っているんだっけか。なら、既に大人になっているのだろうか。生憎魔族の成長速度は知らない。無念。
俺の問いかけに、オルフェストは何処か悪戯めいた笑みを浮かべながら、言い放った。
「魔王、アーベント・リンドウこそが、勇者の実子だ」
―――魔王。
俺が呆気に取られた様子を見て、オルフェストは満足そうにお茶を嗜んだ。
読んで頂き有難う御座いました。
次回『俺、魔王と出会います』




