第24話:俺、話を聞きます
あらすじ:色々話を聞きます。
※遅くなりまして申し訳御座いません。これから少しずつ遅れて行くと思われますが、どうかお付き合い下さい。
【速報】俺氏、美少女(十歳)に子作りに誘われた件について。
オーケイ。落ち着け、俺。俺のマグナムも落ち着け。十歳に何て事言わせてるんだ犯罪じゃないか全く……ふぅ……じゃねえよ、馬鹿。
え?今なんつったこの子。エライ事言わなかったか?色々大問題になる事言わなかったか?
後、俺牛乳臭いんだけど。何でこんな目に遭わなきゃいかないの俺。
牛乳を噴出した張本人・ジェイドも、口を開けてポカンと間抜け面晒している。恐らく、俺もそんな表情だろう。
「……えと、サラ」
「なぁに?」
「意味分かってる?」
「うん」
オーマイガッ。ギャルゲーではこんなイベントなかった。少なくともいきなり「子作りしましょ♪」とか言うようなキャラクターは居なかった。
考えろ、考えるんだ。考えるな、感じるんだって今言うと絶対生々しい気がする。
俺は頭を抱える。重苦しい頭だ。
「……どうしたの?ティルフィーネ君」
―――ふと、頭に浮かんだ。
これはもう、一か八かだが……―――。
「……サラ」
「なぁに?」
「“子作り”って具体的に何すると思う?」
何か隣から牛乳噴出したヤツが再度「ブッフォ」って噴出してる気がするけど無視。
一か八かの賭けである。最初に俺の名誉にかけて言っておくが、これは変なプレイではない。それだけは言っておく。
十歳である事と、彼女自身に恥じらいが無い事を考えれば恐らく、
「手を、繋ぐこと?」
ビンゴだった。
~
簡潔にまとめると、彼女は『子作り』という行為を全く理解していない。それはもう純粋無垢清廉潔白と言えるほどに。
ジェイドは知っているようだが、まぁ十歳で保健体育もしてないのに理解してる方が驚きだよな。
サラ曰く「兄様に教わった」と言っていたので、後でミラはぶっ飛ばす。
全くこの純真なるサラたんに何たることを教えているのか。俺が前世からの年齢を足してたら、エライ光景だったぞ。俺、この手首に金属製の輪っかがはまる所だったぞ。危ない。
「サラ、あまりその言葉は使っちゃ駄目だよ」
「仲の良い異性なら良いって言ってた」
「駄目だ。それは、あれだ。身体的にも心情的にも仲の良い異性だけに……」
「何かよく分からないけど、生々しいのは分かるぞ!」
おだまり、ジェイド。
とりあえず、サラの頭を撫でながら間違いを正す。何となく納得いってなさそうな顔だったが、子作りを説明するのは俺には無理だ。いつかハァハァブヒブヒ言いながら説明してくれるオッサンが現れるさ。
俺は一息吐いて、己を落ち着かせようと試みる。そして、気になる事を口に出す。
「……で、いきなり何でそんな事を?」
「……ミルディンは魔力が多いから、そうやればもしかしたら魔力貰えるかと思ったの」
「根拠なしか……」
つまり、藁にも縋る思いだったわけだ。
彼女はしょんぼりと伏し目がちな目を沈める。俺は悪くないはずなのに罪悪感半端ない。
「兄様にずっと頼るのも良くないし……私、“出来損ない”って呼ばれるの嫌」
「…………出来損ない?」
「うん。母様と父様に呼ばれるの。“お前は出来損ないだ”って……兄様が優秀なだけに、私……いつも……」
……。
絶句したが、正直心のどこかで納得した。
この世界は、前世とは違う。戦争もあるし、魔力もある。絶対王政な世界であり、弱肉強食の世界だ。
彼女の様な魔力の無い“異端児”が、この世界で生き残れるかと聞かれれば難しい。第一、家自体も後継ぎである長男以外どうでもいいという考えを持ってるなら、尚更難しい。
もしかしたら、彼女もまた、俺と同じく逃げるようにして入学したのかもしれない。
……ん?待てよ。
「魔力ないなら、試験どうしたんだ?」
「……筆記試験。ギリギリだったけど……」
「ギリギリかぁ……」
「うん。兄様みたいに家庭教師居なかったから、独学で頑張ったの」
何と健気な子か。猛毒のような親は俺が滅してやろう。
自我を忘れる前に、彼女のこれからをちゃんと考える事から始めなければなるまい。
魔力をあげたいは山々だが……如何せんそんな方法聞いた事ない。だが、俺も俺で色々知らないこともあるだろう。(6年間は家で引き籠ってたしな)
まだ諦めてはいけない。何か方法が……。
俺が頭を捻って考えてると、申し訳なさそうに彼女は俺に囁くように言う。
「ごめんね、ティルフィーネ君。変な事言って。忘れていいよ」
「絶対忘れん。助ける」
「……えっ?」
「助ける。だが、同情じゃねえぞ、俺が勝手にやるんだ。感謝も何も要らん」
「…………本当?」
「本当だ。絶対助ける!此処に宣言してもいい!」
高らかに声を上げて彼女に言い放つ。何で彼女を此処で見捨てにゃならんのか。
彼女の境遇も悲惨さも知った今、俺は行動すべきだろう。
前世で培った行動力(主にアニ●イトやコミケに行くための)と知識(オタ系)を駆使して彼女を何とか助けてやりたい。天使だし。天使だし。(大事な事なので二度言った)
前世と違って、今世の俺はチートで最強だと言える力を持っている。必ず役に立つはずだ。
しかし、何かと足りず働かぬ俺の頭は既にショートしてパンクしそうだった。弱い。そんな時、チラッと彼女を見る。
彼女は嬉しそうに、何処か目を潤ませて微笑んでいる。何と天使なことか。鼻血が出そうだ。
この彼女を裏切れと、見捨てろと言った奴は人間じゃない。殺せー!ってレベル。
彼女を救う。絶対に助ける。原因解明、原因追究、欲を言えば魔力を取り戻させたいな。そんな魔法陣とかあったかな?
「頼もぉおおおおおおおおおおおうッッ!!!!此処に、ミルディンが居ると聞いたのだが!!!」
……。
神様、俺に何か恨みでもあるんですか。
教室の扉を音を立てて勢い良く開けたのは、担任のマリー先生ではなく、また別の女性だった。
灰色の髪と深紫の目。一つに括った髪は長く艶やかな輝きを放っている。無駄な肉の無いスレンダーな体型と共に何処か幼さ帯びた姿見は、学生だと勘違いされても可笑しくはない美女だった。
モテ期か?と内心喜びつつも、ミルディンって口に出してる時点で絶対違うね。
ああん。ローブが欲しいん。
「君か!」
そしてあっさりとバレて、大きく足音を立てて近づいてきた彼女に肩を掴まれバイブのように揺すられる。あべべべべ。
「た、確かに見ての通りミルディンっすけど……」
「ふぉおおおおおおお!!まさか!!生きてる中で本物に出会えるなんて!!私はきっと紛れもない幸運の持ち主だ!!今生での運を使い果たしたのではないだろうか!!冷めやらぬ興奮を静めたまえ、フォルティア様!!」
「……」
何だ此奴。美人なのに勿体無い。
ハァハァと第三者から見れば色っぽく熱っぽい息遣い。近くから見ればただの変態。誰か助けて。
「君の名は!?ああ、知っている。あの入試の時に騒ぎを起こしたミルディン君だもんな!確か、ティルフィーネ・エンドレス君か!!」
しかも暗記してる。怖い。
「そ、そうっすけど……えと、今サラと話してるんで……」
「あ、私の事はいいよ。協力してくれるだけで嬉しいもの」
そうじゃねえんだよ、サラ。そうじゃないんだ。俺はこの場から逃げたいだけなんだ。察してくれ。
苦笑いの俺を他所に、この女性は話を続ける。
「私の名はヴィエラ・ベラトリックス!!この学校では学者も兼ねて教育者として指導している!!異端者と呼ばわれる魔女信仰者だが怖いものは何もない!!さぁエンドレス君!!私と共に“ミルディン”についての研究をしないかね!!」
「しません」
「そうか!!しないか!!……って、ええええええええええええええええええええ!?!?!?君は正気か!?!?」
アンタが正気か。
「何で態々そんな面倒臭そうなもんを十歳児かやらんといけんのですか」
「む。確かに同意見だが、君の精神年齢はその言動から見るに十歳児とは思えんのだがな」
「大人びてるんですぅ~」
「その言動から絶対君は十歳児ではないな」
ヴィエラと名乗った女性は意外としつこい。つーか、サラッと流したけれど“ミルディン”についての研究って何だよ。超どうでもいいよ。魔女紹介するからそっちから聞けよ。
そんな俺の思考を読み取ったのか、ヴィエラは「そうだ」と無邪気な笑みを浮かべて話し出す。
「“ミルディン”についての研究なんだがな。君はある協力をしてもらいたいだけだ。なぁに、痛い思いはせんぞ。ちょっと話を聞いたり、色々採取するだけだ」
「何かその色々が嫌だ」
「別に苦痛な思いも卑猥な意味もない至って普通の研究だ」
『研究』って時点で嫌だ。怪しさしかないじゃん。怪しさ抜群じゃん。
「つか、本当に先生なの?学者が本職っぽい」
「まぁな。元々私は学者兼魔術師として働いていたわけだが、王宮魔術師は至極退屈だったし、学者は尚更だ。国に言われた事しか出来ん。自由に探究・研究をしたい私にとっては学校で教育者をしつつやった方がある程度自由に出来る。此処の卒業生だし、学園長は優しいし、ちゃんと教育者として指導してるから何の問題もない」
フフンと鼻を鳴らしながら得意げに笑う。周囲はポカーンとした顔でヴィエラを見ており、俺も同じくポカーンと間抜け面を晒していた。
「私は魔術・魔力と共にミルディンの研究を重点的にしている。其処で、エンドレス君!君は魔力も申し分ないだろうし、魔術の才能もあると私は思っている。更にはミルディン。もうこれは研究会に入ってもらうしか……!」
「丁重にお断りさせて頂きます」
「ああああああああ何だ君は!!その断固とした拒否の姿勢!!天晴と褒めたいところだが、今の私に君を褒める余裕はない!!『魔女の愛し子』よ!魔女の名に置いて此処に命ず!!私に協力したま―――うぇえあああッ!?」
パーンという風切る良い音と共に激しい衝撃音、ヴィエラは頭を押さえ、涙目になっている。
そして、その背後にはベテルギウス先生が、険しいけれど何処か呆れた顔で立っていた。手元には恐らく彼女の頭を叩いたのに使ったとされる本がある。
周囲の生徒も俺も更にポカーンと唖然とした。唯一粛々と無表情で居たサラも驚いたのか、目を見開き固まっていた。
「~~~~っつぁああ~……!ベル!!毎度毎度頭を叩きおって!!馬鹿になったら責任取れ!!」
「もう馬鹿だろうが……そして、ベルではなくベテルギウス先生と呼びなさい。生徒を怒鳴りつけて何をしているんだ……いや大体察しがつくけども……」
「ベテルギウス先生~!ヴィエラ先生が僕の事を脅すよぅ……」
「貴様!!ベルに色目を使うな!いやその前に何だそのあざとさ満点の涙目+上目使いと震えた声は!!先程の淡々とした十歳児とは思えぬ大人びた口調を出せ!!」
「ふぇぇ……」
「ああああああ何だこの理解し難い憤りはぁあああっぶッ!!また叩いたー!!」
「もう帰るぞ、ヴィエラ先生。そろそろマリー先生も来る頃だろう。そして、あまり生徒に迷惑をかけるんじゃない」
「迷惑はかけていない!!エンドレス君!!また来るぞ!!心変わりしたらいつでも来い!そしてベルに色目使うな!!」
そう叫んだと思うと、ヴィエラはベテルギウスに引き摺られてそのまま教室を後にした。ベテルギウス先生……アンタ苦労性なのな……。最後まで頭下げてたよ……。
さて、騒ぎも治まった(強制)事だし、マリー先生を待つか。背伸びをして欠伸を吐く。
すると、サラはおずおずと申し訳なさそうな表情で俺に声をかけた。
「ごめんね、ティルフィーネ君。本当に大丈夫?」
「ん?何が?」
「私を助けてくれるって言ったけど……無理しなくていいよ。お医者様でも分からなかったんだもの」
サラは落ち込んだ様子で、少し躊躇いつつ呟いた。きっと、俺に迷惑かけまいとした発言だろう。
だがしかし、俺はここでサラたんを見捨てるほど下衆な男じゃねえ。
「大丈夫。ジェイドも手伝ってくれるって言うし、何とかなるよ」
「オレ手伝うって言ったっけ?」
「言った言った」
素っ頓狂な声を出すジェイドを適当に促し、俺はサラの頭を撫でて落ち着かせる。
何とかなるだろう。魔力がない病気……病気かどうか知らんけど、まさか彼女が初めてってわけではないだろう、恐らく。何処かで似たような事案があるはず。
ゼロになって色んな国々で調べる方法だってある。
あ、もしかしたら、魔術師とかに聞いた方が良いのかも。魔力とか魔術に詳しそうな人なら、意外と分かるんじゃないだろうか。
魔術師か……ベテルギウス先生は魔術担当だったっけ?レアヴロードは騎士だから違うし……一番詳しそうな王宮勤めの魔術師に会って話を聞くのは時間がかかり過ぎるだろう。
魔術師で王宮勤めくらいの知識を持った人か……。
―――元々私は学者兼魔術師として働いていたわけだが……
―――王宮魔術師は至極退屈だったし……
―――私は魔術・魔力と共にミルディンの研究を重点的にしている……
「…………あ」
居るじゃん。
「ヴィエラせんせええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」
「えっ?ティルフィーネ君……?」
「ちょっと!?ティナ!?えっ何処行くの!?」
ジェイドの問いを無視して、俺は廊下に飛び出て駈け出した。
~
長い廊下。見慣れた二人が並んで歩いている。
「ヴィ……ヴィエラ先生いいいいいいいいいいいい!!!!!!」
「んむ?……って、うぉああああああ!?!?!?」
「ヴィエラ!?……ティルフィーネ君!?」
ヴィエラの細い肢体に飛びついたや否や、その衝撃で床に倒れ込むヴィエラと支えるのが遅れたベテルギウス。
二人とも酷く混乱しているが、そんな事はどうでもいい。俺は急いだ為に荒れた息を整え、ヴィエラに問い詰める。
「せ、先生!魔力の研究もしてるんですよね!?」
「え?あ、あぁまぁ……しているけど……」
「俺に協力してくれますか!?そしたら、先生の研究に協力してやってもいいっすよ!!」
「え?え?……あ、え?いいの?」
「いいです!その代わり、俺の協力が先です!!いいですね!?」
「あ、あぁ……分かった……?」
「っしゃああ!!言質取ったぁああああ!!!」
俺は倒れ込むヴィエラに跨る体勢のままガッツポーズを繰り出す。
二人とも未だ混乱しているようだが、言質取ったもん勝ちだぜ☆
読んで頂き有難う御座いました。
次回『俺、協力し合います』




