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俺、裏ボスになろうと思います  作者: 現実逃亡者
第二章:10歳in学校
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第22話:俺、親友に恐怖を覚えます

あらすじ:親友リーフがダークになったらしいですよ


※遅れまして申し訳御座いませんでした。

ハァーイ☆皆サン☆昭和のアイドr……いや俺平成生まれだわ。平成のアイドル、ティルフィーネで御座いマス☆


早速ですが、今現在……すんげえ気まずいです。「凄い」とかじゃない、「すんげえ」。

寮の自室に籠っております。勿論同室者のリーフも居ます。

先程この親友であるリーフは、俺の腕を引っ張って部屋に連れて行った(といより、投げ入れた)という少女漫画のイケメンも真っ青なほどの男前な行動を致しました。


そして、俺に雑な扱いをしつつ助けて下さったリーフは何だかドス黒いオーラを放ってベッドに横たわっている。


どうしよう。なにこれ怖い。

こんな真っ黒なダークマターを放つ親友と一緒に居るくらいなら、ブルーベリー色をした全裸の化け物が出て来る某フリーホラーゲームの方が怖くない。

リリアが居てくれたら、まだ俺は精神を保てただろう。だがしかし、リリアは居ない。

藁にも(すが)る思いでジェイドに助けを呼びたい。ジェイドも話し合いをすべく来てくれるだろう。しかし、恐らくこの部屋の外の廊下まで放出しているであろうダークマターに圧倒されててノックの音すら聞こえない。

誰か助けろ。誰でもいいから。

助けてくれるなら、己の顔を分けてくれる某パンのスーパーヒーローや青い狸そっくりな猫型ロボットでもいい。むしろ、そっち希望。アンパン食いたい。


「……あの、リーフ?」

「…………なに?」

「えーっと……あー……」

「『魔女の愛し子』の事?」

「へ?」

「あの人……寮長が言ってた事が気になるんでしょ?」


確かにそう言われればそうだな。

基本ミルディンの呼称といえば、聖女信仰者から『聖女の御使い』。蔑称として『奴隷種族』。多くに呼ばれている無難なものといえば『魔女の一族』なのだ。

『魔女の愛し子』なんて使う人は本当に少ない。それこそ……魔女信仰者……だけ。


……って事は、ミラは……


「魔女、信仰者?」

「あ、何だ。気付いてたんだ」


ようやくベッドから体を持ち上げ、顔を向ける。いつもと同じようにニコリと微笑むリーフに内心冷や汗をかいた。怖い。笑顔が怖い。


「僕、すぐに気付いたんだ。『魔女の愛し子』って呼ぶのは魔女信仰者くらいだもん。つまり、寮長は魔女信仰者……魔女の怒りを買ったって言えば、もしかしたら今頃恐怖してるかも」

「あ、あぁ……そう」


だから、あの発言か。しかし、全て計算だったとは。恐るべし、リーフ。

まさか腹黒属性持ちか貴様。天然装って腹が黒いという……此奴、侮れんな。


「……でも、魔女信仰者や聖女信仰者にとっては、魔女や聖女は神様みたいな存在だから……もしかしたら、凄い気にしてるというか……凄い罪悪感が芽生えてるかも」

「お、おう……」

「…………いくら、怒っていたとはいえ……悪い事しちゃったかな」


腹黒いかと思いきや、やはり純粋(ピュア)なのか。どうなんだ。畜生、此奴の性格(キャラ)掴み辛い!!

俺は戸惑いつつも、自分専用にしているベッドに座り込んだ。さっきまで、リーフのダークマターに圧倒されてて床に正座だったから足がヤバい。

しょんぼりと落ち込むリーフに何も声がかけられない哀れな俺は、どうフォローしようか足りない脳みそをフル回転させて考える。なるほど、分からん。


「まぁ別に気にしなくとも……!」


コンコン



……。

元コミュ障による、一世一代のフォローはたった一つのノックによってかき消されるのであった。完。

じゃねーよ!!ふざけんなよ!!俺が考えてたフォローの台詞返せよ!!


苛立ちながら、ドアノブを捻ろうと手を伸ばすが、リーフが両腕で大きくバツを作って駄目だと告げる。


「何でよ」

「いいから」


態々ベッドから立ち上がり、俺をベッドへ誘導させた。つまり、応答はリーフに任せていいって事か?

何か考えている事があるのだろうと思い、俺は素直にベッドに横たわる。眠くなってきた。ローブ脱ごう。暑苦しい。


「どなたですか?」

「……あ、わ、私です」


誰だよ。オレオレ詐欺かよ。


「ええと、ミラです。ミラ・ボルボレッタ」


ドア越しから、フルネームを弱々しく小声で告げたのはミラのようだ。あの飄々とした胡散臭さがまるでない。これが魔女(オカン)パワーか。恐ろしいな。


「何か用ですか」

「……ミルディンの子は?」

「ショックで寝込んでます」


寝込んでないです。ミラさん、寝込んでないです俺。元気です超元気です。パワフルです。つか、リーフさん目が怖い。


「……すまなかった」

「どうして、あんな真似を。ティナが何でこの学校に入学したか分かってるんですか?」

「……此処はドゥアリンじゃない。その上、ミルディンへの奴隷制度は既に廃止されている」

「それが何だっていうんですか。差別がなくなってるわけじゃないし、もしかしたら闇市場……?って所に売られるかもしれないのに!!だから、だから此処まで来たのに!!」


実際俺が国に売られそうになっていたせいか、リーフの声は荒く、涙混じりの声になっていた。

ミラの顔は見えないが、大体見当はつく。大方苦しそうな、罪悪感で潰されそうな表情でも浮かばせているのだろう。

……リーフの気持ちは分かるし、俺もそう思う。


だがしかし、売られるにしても差別にしても、ある条件下でなければそうはならない。



―――そう、俺が選ぶべき道は……―――



「リーフ、もういい」

「……で、でも!」

「俺にも考えはある」

「え……?」


肩を叩いて、振り向いたリーフの顔は酷く怯えた顔だった。目は潤んでいて、今にも泣きそうな顔。恐らく、俺が売られそうになった時の事でも思い出してしまったんだろう。頭を撫でて、落ち着かせる。


さて、ここからが俺の勝負どころである。


「……ミラさん、話を聞いてくれますか」

「…………うん」

「俺、確かに此処に来たのは逃げる為でもあります。奴隷種族って言われて差別されたくありませんから」

「……」

「貴方がしたことは、間違っています。これじゃあ、俺……外出れませんよ」

「……すまなかった」

「感謝します」

「は?」


俺の言葉にミラはとても素っ頓狂な声を上げた。

隣に居るリーフも目を丸くして、何言ってんのと言いたげな表情をしている。

あん?だって、そうだろ?外出れないんだぜ?つまり、



「俺、引き籠ります!!もう外出ない!!学校外でない!!」


「へ、は、はぁ……?」

「あああああああああ!!!ティナ!!最初から!最初から、それが狙いだったんだね!!」

「フハハハハハハハ!!外出れない!!俺もうミルディンってばれたから、ちゃんとした厳重な警備の下にある学校の外には出れないもんねー!!」



そう、ある条件下とはつまり―――外に出る場合である。


学校内は権力は関係なく、実力主義の場。差別だの奴隷だのとなった暁には……もれなく、ベテルギウス先生に密告される。

ふっふっふ。外に出ない理由が出来たのだ。素晴らしい。素晴らしいぜ!!感謝するミラ!!

外出ない!!出たくない!!ビバ引き籠り万歳な俺にとっては夢のような知らせである。


そして、俺は勢いよく扉を開け、その姿を露わにする。


目の前には驚きを隠せない表情だが、何処か情けないミラが立っていた。

他にも野次馬らしき寮生がちらほらと見えたが、俺は気にせず堂々とミラの前に姿を見せる。


「っつーわけで、“プラチナム・ミルディン”のティルフィーネ・エンドレスといいます。以後、お世話になりまーす」

「……プラチナム……」

「ティナぁ!!」

「にっひっひー!引き籠る理由が出来たからな!俺は外に出ない!」


ミラや寮生が唖然としてる中、俺はただ終始笑顔で廊下を駆け回った。


―――皆に、その容姿を誇示させるように。


逃げてばっかりも何だかつまらないからな。思い立ったら即行動。それが俺のアイデンティティ(使い方に誤りあり)。


ジェイドやリーフが何か言っていたり、寮生達の叫びが聞こえる。


俺を蔑むものかもしれないし、驚き騒いでいるだけかもしれない。もしかしたら、感動していたり喜んでいたりするかもしれない。

だが、そんな反応に臆する事はせず、俺はただ駆け回った。長い廊下を、ロビーを、あらゆる所を。


逃げてばかりは、もう嫌なんだ。


この世界に生まれ変われたんだ。もう一度やり直す事が出来るんだ。

それなのに、同じような生き方を繰り返していたって仕方がないだろう。


そう、自分に言い聞かせるように、俺は笑いながら駆け回り続けた。






***






「いやぁ楽しかった」

「僕は全然楽しくなかった!」


清々しい気分でベッドに寝転がっていると、息切れをして苦しそうに呼吸を整えるリーフが眼前で怒鳴る。

何だい何だい。こちとらスッキリしてるんだい。

すると、部屋にはジェイドやミラまで入って来た。何だい何だい。俺を責め立てるつもりかい。


「全く!ティナは何を考えてるの!」

「んあ?だってさぁ、ずっとローブ被るのも辛いし、この学校に何年在学するか分からないだろ。別にいいじゃん」

「別にって……」

「俺が良いって言ってるんだから」


確かに俺はポジティブシンキングで尚且つ適当マスターだが、一応考えはある。引き籠りの理由以外で。

流石に何年もローブ被り続けて在学するのは難しいし、それで他の学生と交流出来るかとなったらまた別問題だ。

誰だってローブ被って顔見えない怪しい奴と友達になろうだなんて思わないだろうし、今年は王族まで居るらしい。それこそ、「無礼者め☆」と言われて首チョッキンされるかもしれん。

そんな恐ろしい事態を考えながらの今回の行動である。決して引き籠りたい一心で起こした騒動ではない。


「……いやぁすみませんでしたねぇ」


怪しげな笑みと共に飄々とした口調で再来したミラは、何処か安堵した表情を浮かべていた。


「べっつにぃ~?アンタを許したわけじゃありませんけどぉ?」

「いやぁ……本当に申し訳御座いませんでしたぁ」


何処か苦笑いで頭を下げるミラを見て、少しだけ爽快感はあった。まぁ其処まで気にしてないし、問題は……


「魔女信仰者なんすね」

「……」

「別に俺は偏見も何もないですけど、今回俺の種族ばらしたのってそれが原因ですか?」


ベッドから体を起こし、俺は扉付近でじっと固まるミラを一瞥する。

状況を良く理解していないジェイドにとっては頭上に「?」が踊り狂う状態だろうが、この際気にするのは後だ。

何も言わないと言う事は、恐らく肯定だろう。

そんな俺の考えを察したか、フッとミラは笑う。胡散臭い口角を上げた笑顔ではなく、明かされたくなかったと言わんばかりの渋い微笑みだった。


「……うん、正解ですかねぇ~。私は魔女・フォルティアを信仰してますよぉ~」

「それで?何で俺の種族をばらすんですか」

「あ、それは魔女信仰の教えですよぉ」

「教え?」

「『魔女の愛し子である一族は、決して姿を隠してはならぬ。魔女の強さを、気高さを全て誇示し、明かさねばならない。魔女は絶対的な存在なり。故に魔女の姿を見せつけねばならぬ』って」


何という余計な教え。


「それで、俺の……」

「もし姿を隠すミルディンが居たら姿を明かさせて、魔女の愛し子の名の下に跪き、その姿を全体に見せつけなければ、魔女の強さを得られないって思われてるんだよぉ」


ニッコリと戻って来た胡散臭い笑みを浮かべてミラは言い放った。何というよく分からない教え。


「チクショウ、教え考えた奴ぶっ飛ばす……!」

「それはやめて下さいね!?」


必死なミラを放っておいて、俺は舌打ちを繰り返す。てやんでい。

ぐれた俺を無視し、リーフはミラの方を向いて問いかける。


「あの、どうして魔女を信仰してるんですか?信仰する人って少ないんですよね?」

「ん~まぁそうですねぇ。聖女信仰者よりも遥かに少ないでしょうねぇ。異端者って言われてたりしますし~」


腕を組みながらミラはすぐに答えた。異端者と言った割に素っ気無く、結構気にして無さそうだ。


「ただ、魔女は古来から『種族本来なる強さを与えん』とされているんですよぉ」

「……強さ?」

「そうです~。聖女は『平和と救済』を。魔女は『強さと粛正』を。粛正というのは、国の不正とか不穏分子などを正そうっていう行動を示しているらしいんですが、近年は結構やり過ぎでしてねぇ。『粛清』になりつつあるんですよぉ」


何処か困惑しているような、されど笑みを浮かべたままのミラは言った。

成る程。聖女は壊れた無人島を復活させた―――つまり、救済した。魔女はその無人島を壊した張本人―――強さを示した。それぞれの行動から生まれた宗教って事か。


「だから、魔女信仰者も二つに分けられているんです~。『強さを求め、弱気を助け強きを挫く派』と『不正を明かし、不穏分子を容赦なく潰していく派』と。まぁ私は争いが嫌いだから、強さを求める方かなぁ」

「でも、強いの求めるだけなら、色んなヤツが入っちゃうんじゃねーの?」


難しい話だろうに割って入り、素直に述べたジェイドの意見に俺も同意見だった。

確かに強さを求める奴が沢山入信してそうだが、そうでもないのか?


「あーそれはないねぇ。魔女信仰は聖女信仰よりも厳しくて辛いからねぇ。教えをちゃんと守らなきゃならないし、強さを求めるだけじゃ駄目なんだよぉ。要は信仰する事なんだからぁ」

「ふーん……」

「魔女の存在と強さを信じ、それに伴った行動と信仰が必要不可欠なんだぁ」


上機嫌に笑いながらミラはジェイドに説明するものの、彼奴の顔を見る限り、多分全く分かってない。


「つまり、強くなりたいって気持ちだけじゃ駄目なんだと」

「何で?」

「魔女を尊敬しなきゃ駄目なんだってさ。魔女は偉い!とか、凄い!って心から思ってなきゃ駄目なんだと」

「えー面倒臭い……」

「お前は無宗教のままでいいと思うぞ」


愚直ともいえるほどに素直な奴だからな、ジェイドは。短期間で此処まで人を知れたのはある意味初めてだ。単純なせいか、凄い理解し易い人柄だ。まぁまだ十歳だもんな。


「この学校に魔女信仰者は他に居るんですか?」

「えぇと、私が知る限りなら、私と……ヴィエラ先生と、後は―――サラ、ですかねぇ?」

「……えっ?」

「サラもそうですよぉ?」


口元に手を当てて笑いながらミラは告げた。


……彼女も?


だけど、サラは俺を一瞥するとすぐに視線を戻していた。それこそ、“クラスメートの一人”としか思われてなさそうだった。

もしも魔女信仰者ならば、先程のミラのようにフードを取り外そうと手を出すなり、或いは確認の為に声をかけるのではないだろうか。サラにはそこまで考えがなかったのか?それとも、何か別の考えや俺はミルディンではないと言い切れる根拠があったとか?


……謎だ、サラたん謎過ぎる。


「へーボルボレッタ……じゃねーや、サラもそうなんだー。特に何もしてこねーし、何も言わねーし、全然気付かなかった」

「まぁ宗教は見て分かる様なもんじゃないからねぇ。でも何も言わなかったかぁ。何処か納得~」

「納得しちゃうんですか」

「納得しちゃうんです~。元々サラを勧誘したのは私ですしねぇ」


貴様か、カカ●ット!!


「畜生、この世界にもそんな宗教勧誘があったとは……!」

「何の事かよく分かりませんけど、私は勧誘しただけで入信は彼女自身の意思ですよぉ?」

「そうでしたか」


良かった。安心。

……いや、ちょっと待てよ?


「何で勧誘したんですか!?あまり宗教勧誘を身内にするのは……!」

「彼女、悩んでいたので~」

「……悩み?」

「はい」




そして、ミラは俺らに衝撃を迸らせる事を言い放った。





「サラは、魔力が無いんです」









読んで頂き有難う御座いました。


次回『俺、彼女と友達になろうと思います』

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