第19話:俺、合否発表に緊張します
あらすじ:入学試験でやらかしたティルフィーネが合格発表を見に行くようです
・前回の話では少々見る人によってはショッキングな内容(主に勇者の件)がありました事を伝え忘れまして申し訳御座いませんでした。
色々と騒ぎ(入学試験で何かミルディンが出たらしいよ)があったが、そんな騒ぎからもう三日も経った。その三日間は全て引き籠って過ごした。
元々インドア派だし、引き籠りたいし寝たいしゴロゴロしたい。大分疲れてたのか、ずっと引き籠っても退屈さも感じず、宿所のベッドの上でゴロゴロ寝転んで本でも読んでりゃ一日が過ぎる。
リーフやリリアは俺が何かショック受けてるとか、種族バレするのが怖いって思っていると勘違いしている為、何も言わなかった。レアヴロード?彼奴は俺の意見尊重するから、無視しておk。
そんなわけで、ずっと引き籠り。まさにヒキニート。素晴らしきかな、我が心の文化。
ただ心残りがあるとすれば、リーフやリリアも俺に付き合ってほとんど引き籠っていた事だろうか。
二人で出かけて行ってもいいのに、二人とも遠慮した。俺が心配らしい。おいおい、何歳だと思ってんだ?ガキんちょども。
レアヴロードは古い知り合いに会いに行っていたとのこと。
特に、俺らが試験受けた学校……レアヴロードにしてみれば母校なのだが、其処に足を運ばせていたと。
……俺の件もあるのかな、などと思うと、一番の功労者はレアヴロードなんだろう。有難う、聖女の祝福を与えん(適当)。
まぁそんな適当でグダグダな三日間であり、その間に本読んだりして何とか予備知識を蓄えておいたので、学校生活に大きな損傷はないと信じたい。
まず合格している事を信じたい。
何を隠そう、この日。三日ぶりに外に出たこの日こそ、合格発表日なのだ。
正直、胃痛がマッハ20である。某殺せない触手先生と同等の速さの胃痛である。
おうちかえりたい。
あのゆっくりな火球が、目を瞑ると瞼の裏側から蘇る。ゆったりのんびり。ある意味トラウマとなるべき魔法であった。恐ろしい。
合格発表。あの学校に再度足を運び、学校の出入り口付近の大きな提示版に行かねばならない。
行きたくない。学校行きたくない。
ネットはないのだろうか。ネットで合格発表するのは最早定番中の定番であり、それくらい出来なければ学校として生きていけんぞ。
第一俺は高校の合格発表も何もかもネットで見たから、現地に赴いた事ねえし。赴きたくねえし。
早朝から、リーフとリリアに叩き起こされたが、ギリギリまで粘った。落ちてたら怖いという情けない本音を言いつつ、布団にずっと潜り込んでいた。
しかし、リリアによって、我が要塞はいとも簡単に剥がされるのであった。
外出たくない。俺はニートになるのだ。
だが、俺の抵抗空しく、リリアに引き摺られて俺は戦場へと運ばれるのであった。
レアヴロード。リリア止めろや、おい。
***
「ティナ……いい加減、覚悟を決めなさい。男でしょ!」
「男にも譲れない戦いってのがあるんだ……!」
「いや、合格発表見るのが怖いって大した理由にならないわよ」
大した理由になるんだな、これが。俺にとっては。
校門まで来たものの、俺は未だ入れないでいた。ワイワイガヤガヤと校門前にも関わらず騒がしかった。校門を出る少年少女の中には、泣く者や落ち込む者が居て、余計に入れない。
だが、妙に今の俺に視線が集まっている気がする。居た堪れない。その視線の中で、冷ややかな絶対零度な視線を送っているのはリリアだが。
まぁ理由としてはローブを被って居る事と、杖だろうな。試験最中は杖を宿所に置いといた。邪魔だし。
今日は置くの忘れて来た。てへぺろ。
「ほら!腹括って行くわよ」
「え、あ、ちょ、待て。待てぇぇぇぇぇ~……」
情けない声を出しつつ、リリアに再度引き摺られて俺は学校内へと向かうのであった。
おい、リーフ。その憐みの視線やめろ。
~
提示版には人がうじゃうじゃいた。まるで、ごみのようだ。
それは兎も角、これじゃあ見えんな。何やら、AだのBだのに分かれてるのは見えたが。
「Aクラスなどと分かれているようですね」
「なるほど……って、レアヴロードさんは入っていいの?」
「卒業生ですし、一応先程許可は頂きました」
ちゃっかりしてんな、此奴。
だが、周囲がほとんど子供のせいか、レアヴロードは頭が余裕で突き抜けている。
背伸びをして頑張って見ようとしているリーフには悪いが、此奴を活用すべきだろう。
「丁度良いや。俺らの番号探して貰えませんかね」
「御意に。失礼ながら、番号をお尋ねしても?」
「6010から6012までの番号を」
そう言うと、レアヴロードは余裕そうに提示版に顔を向け、左側―――Sクラスから探し始めた。
リーフは結構上手に出来てたし、リリアも自信有り気なので二人は上クラスではないかと思っているんだが……あるだろうか。
俺ら三人で不安そうにレアヴロードを見つめる中、彼は少し目を見開いた。
「……ありました。Aクラスに……6010と6011が」
「……!!」
「私!私受かった!!!」
二人の番号が言われ、リリアは大興奮で跳ね、リーフは喜びのあまり声が出てない。だが、潤んだ目を見る限り感涙しそうだ。やべえな。
ただ、俺の番号―――即ち、6012だけ呼ばれていない。
リリアは興奮が冷めやまぬ感じだが、リーフは実際俺の魔法を見ていた。そのせいか、ひどく心配そうだ。自分が受かったんなら良いと思うが、俺も受かってなきゃ此奴はリリアの様に喜ばないらしい。
「何心配してるのよ。ティナだもの。絶対受かってるわ」
対するリリアは興奮しつつも、俺の合格は絶対だと自信持って答えた。だといいんだけどね、うん。
最早心底諦めた俺と未だ希望を手放さぬリーフ、二人だけが提示版で番号を探すレアヴロードを見つめていた。
そして、レアヴロードは静かに目を閉じて、こちらを向く。
「……どうした?」
「……」
「……え」
ちょ、ちょっと待てよ。やめろよ。
「ありました」
「………………へ?」
「ありました。6012……Dクラスに」
アッサリと告げるレアヴロードに拍子抜けしてしまった。Dと言うと……最底辺だったっけ?あーでもあったんか。
「良かったー。一応あるだけいいか」
「う、受かったの!?ティナ、受かったの!?」
「受かった受かった。Dだけどな」
「や、やったああああああああああああああああ!!!!!」
何かいざ言われると、俺は興奮すると言うよりむしろ冷静になった。だが、リーフは大興奮……というより、もう感動しているのではないだろうか。泣きそうな顔してる。
リリアは相変わらず「当然ね」と仁王立ちして笑った。
まぁそれから、リーフを宥めるのにも時間がかかったわけだが。リリアよりも興奮してた。
***
その後、制服と教材を貰いに行く。まさか今日中に全て貰うとは思わなんだ。手提げ袋持ってくりゃ良かった。
制服は持ち主に合わせてサイズが変わるらしい。いいね、成長期にうってつけだね!俺、これからもっと身長伸びるからね!!おい、誰だ今鼻で笑った奴。
でもサイズが変わるのか……女の子とか胸のサイズが変わるからね、ゲッヘッヘ。
チラリとリリアの平らな胸を見る。今は平らでも、あそこには彼女の希望と俺らの夢が詰まっている。将来が楽しみだ。そんな俺の視線に、リリアは凄い怪訝な顔してたけど。
男の制服は青と白が基調とされていて、何処か軍服っぽい雰囲気があった。銀色に縁取られてて格好良い。ただズボンやブレザー(?)が七分丈って所がダサい。
女子は赤と白が基調とされた、同じく軍服っぽい制服だった。金色に縁取られており、スカート丈は各々で決めて良いらしい。ロンスカも良いのかな。ただこちらもブレザー(?)が七分丈でダサい。
靴は何でもいいらしいが、大体はローファーのような革靴で登校している人が多いらしい。
あとジャージのような戦闘訓練など外で体を動かす場合の服は後程配られるそうだ。デザインが楽しみだが、七分丈だったらどうしよう。ダサそう。
ついでに、ジャージと共に靴も配られるそうだ。一応それなりに防護出来なければ意味ないらしい。まぁ魔法とか使うのに一々燃えちゃあ困るもんな。
そんな感じで、重い荷物を担いで俺らは帰路に就いた。本格的に学校に通うのはこれから約一週間後だ。また引き籠ろう。
「楽しみだね、ティナ!」
「あぁうん……ソウダネ」
「女子寮と男子寮で分かれてなければ良かったのに……」
棒読みな俺とは違い、本当に楽しみを露わにするリーフと、何処か落胆したリリア。
そうなのだ。俺らは必然的に寮生活なのだが、男女で寮が分かれている。レアヴロード曰く、昔寮で行為をしていた輩が居たそうな。行為は深く言うつもりはない。リリアとリーフの頭上に「?」が見えるが、言うつもりはない。いつか分かる。
そう悟りつつも、リリアはどうも俺らと離れるのが嫌らしい。まぁ当たり前だよな。ずっと一緒だったし、リリアも仲の良い幼馴染と一緒の方が安心出来るからな。
其処は致し方ないので、何とかフォロー。生憎、異性の寮には行き来出来ないのだ。理由は先程述べたように、けしからん輩が居たからである。
「リリアは社交性があるし、すぐ色んな子と仲良くなるだろ。俺なんか一人でDクラスだぞ」
「そ、それはそう、だけど……うー!」
「まぁまぁ、二人とも……」
「「お前は黙ってろ」」
「う、うう……ご、ごめんなさい」
リーフはAクラスでもリリアが居るし、寮でも俺が居る。一人ぼっちにならん奴は黙っているがいい。
俺は前世から生粋のコミュ障である。内弁慶である。なめんなよ。空気と同化して存在感を無くす事が出来るのだ、俺には。某バスケ漫画の影の薄い主人公並みにな。
「……ん?レヴィか?」
「……あ、ベテルギウス先生」
レアヴロードが足を止める。何だ何だと俺らも目を向けると、其処には入学試験で渋い声を荒げていたおじさまがいらっしゃった。
おじさま、いつぞやは御迷惑おかけしましたてへぺろ。
「また来たのか?騎士の職務をそんなに休職していていいのか?」
「そろそろ帰らねば部下が泣く頃でしょうね」
「お前は……はぁ」
頭を抱えながら溜息を吐くおじさまはベテルギウスというらしい。そういえば、レアヴロードはこの先生を頼れって言ってた。成る程、顔は覚えた。渋い声の割に、其処まで年は取って無さそうだ。近くで見ると意外と若く、30代前後ってところか。壮年でもないな。
顔には斜めに横断した大きな傷があるものの、さほど恐ろしさは感じない。灰色っぽい髪はあれだろうか、苦労してそうだからだろうか。だから、年取ってそうに見えたんかな。
「……ん?確か、君は……」
「あ、入学試験ではどうもすみませんでした」
とりあえず、謝罪しておいた。ごめんなさい。頭を下げる。見よ、この九十度。
「いや……こちらも申し訳なかった。大層嫌な想いをしただろう。その荷物を見る限り、合格出来たのか。それはめでたい」
「有難う御座います。どうも宜しくお願いします」
「礼儀正しい子だな。失礼、私はベテルギウス。入学式に再度挨拶しよう」
くつくつと静かに笑いながら、そのまま一礼してベテルギウスは去って行った。おじさま、凄い好い人そうだ。俺の中で、オルフェストよりも好い人だと思う。
~
宿所に帰るとすぐにレアヴロードは国に帰ると言った。何でも、流石に一ヶ月以上休んでいると部下が泣くらしい。何故かは知らないが。
一週間もしたら、入学するし大して困る事もないだろうと思って、三人で見送った。リーフは凄い寂しそうな顔してた。いや、多分またすぐ来ると思うよ、俺目当てで。
さて、貴重な一週間ではある為、俺は引き籠りを続行しようと試みた。
だがしかし、何という悲劇か。リーフとリリアの手によって、町へと繰り出されてしまったのだ。あぁ、外気が嫌だ。日光が嫌だ。人混みが嫌だ。
俺の苦しみは二人には分かってもらえそうにない。腹いせに道中凄い食ってやった。王都の飯美味い。
リリアは「アンタ、存在が嫌味」だと辛辣な言葉を頂いた。ごめんね!太らなくて!!成長期だからね!!
そんなこんなであっという間に一週間を失ったわけだが。
学校行きたくない。今から帰りたい。
そんな気持ちでいっぱいな入学式にいざ、参らん。
読んで頂き有難う御座いました。
次回『俺、入学します』
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