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俺、裏ボスになろうと思います  作者: 現実逃亡者
第二章:10歳in学校
17/40

第15話:俺、試験勉強します

あらすじ:試験勉強に勤しむようです。


遅くなってしまい、待って下さった方々申し訳御座いません。

不定期更新とはいえ、あまり遅くならない様に心がけます。

遂に、遂に辿り着いた。


長かった。長い旅路だった。それこそ、果てし無かった。費やした時間はおよそ二週間近い。

原因は勿論―――リリアの車酔いである。

それはもう、一旦外に出て体内の物を全て吐き出したと疑う程に戻したかと思いきや、それでも尚酔う。酔いまくる。

流石に馬車には商人の大事な積荷もあるというのに、汚すなんて事はしてはならない。

戻しそうになったら、外で休憩。長時間の休憩をし、再度馬車。そして無限ループ。


……本当に、長かった。


吐き気止めとかあればいいのに。酔い止めとかあればいいのに。

そう思った途端、何だかあの日本の情景が頭の中を過る。あぁ……あんなにも素晴らしい世界だったのね。少なくとも人種がレアで売られる事も顔隠す必要もない世界だったわ……。


そんなわけで、予定よりも長引いたものの、何とか入学試験からは未だ一ヶ月近くある。


……ふっふっふ。



遂に、遂に……遂に……―――!






「王都だ――――――――――!!!」





俺は両手を天に向かって上げ、叫んだ。喜びの叫びである!!雄叫びである!!今宵は宴じゃー!!フハハハハハハ!!!!


王都に着くまでの道のりでは、ちらほら道に商人らしき人が乗っている馬車や、冒険者らしき剣だの革の鎧だのを着こんでいた人が見えて来た。

もう少しだ、そう思った瞬間何だかもう耐え切れなくなって爆発した。

人目なんぞ気にしない。クスクス微笑ましそうに笑う冒険者らしき奴らも気にしない。

こちとら、車酔いで死にかけの美少女を連れているんじゃい。長かったんじゃい。


「良かったですね、ティルフィーネ様」

「全くだ!!ああ!!やっと!!イヤッフゥ―――――――」

「喜ぶのは宜しいですが、至極この馬車に視線が集まり、警戒態勢が解けないのですが」

「それはスミマセン」


よく見ると、レアヴロードは腰元に差したままの剣に手を伸ばしていた。あぶなっ。まぁ一重に原因は俺ですけど。

しかし、ノロノロ運転である。叫んだはいいが、待ちくたびれた。

リリアはゆっくりのせいか、先程よりは顔色が良さそうだったが、リーフは逆に待ちくたびれてあまり元気がない。

これは、前世で言う「渋滞」だ。おい、どうにかしろよ。こういう長い列を整えるのは得意なコミケスタッフ呼んで来い。

生憎そんな優しきスタッフは居らず、周囲もコミケよりは騒がしくないが、ざわめいていた。

あーだるい。渋滞は一番嫌いだ。前世も今も。


……王都に入るのに、一体何で混み合っているのかが気になる。

そっと窓から覗くと、何やら騎士らしき人が王都の出入り口で、入る人と何やら話し込んでいた。

世間話なら他所でやれや!




***




やっと王都に入る番が来た時、何故混み合っていたのか分かった。

……身分証明とかしてたんだわ。あー……王都だもんね。怪しい人入れるわけにはいかないもんね。


「はい、次ー」


騎士の割に兜を被っていない男性は、三十路手前ってくらいだろうか。だるそうな目つきで、こちらを見る。

手招きしつつ、商人の身分を尋ねる。

……積荷と一緒に居る我らはどうなるのだろうか。無視しちゃう?しちゃう?


「中に居る人も出て来てくれー」


ばれた。いや、ばれてもいいんだけどさ。ちょっと子供らしくかくれんぼ的な何かな気分だったの。

素直に窓から顔を出す。最初はレアヴロードであり、何かカードのような平べったい物を取り出した。


「どれどれ……!?お、おい、アンタ、隣国の……」

「……騎士団副団長のレアヴロード。身分証明は出来ただろう」

「お、おう……」


目を見開きつつ男はそれ以上深追いはせず、カードのような物をレアヴロードに返した。


「何それ」

「身分証明のような物です。私の場合は『騎士団所属証明書』と言いますが」


いやに長い名前だな。意味はそのまんまだけど。

え、でも俺らそんな物持ってないし。どうするんだろ。

御互い顔を見合わせていたら、騎士の男が俺らに向かって何かを向けて来た。

水晶……と言うより、クリスタルのような形だ。歪ながらも、子供の手を乗せるほどの平べったい面がある。


「この上に手を乗せてくれや。子供は身分証明持ってないのが多いからよ」

「はーい」


最初はリーフが手を乗せた。男は少し頷いたら、「いいぞー」と言って、次を促した。

次にリリアがそっと乗せて、男は先程と同じようなリアクションを取ると、「次」とだけ言った。

最後は俺だが……種族出ないだろうな。ミルディン人とか出て、「み、ミルディンだー」みたいな事叫んで大騒ぎになるのはごめんだ。その時は聖女信者に全員薙ぎ払って貰おう。

そう思いつつ、手を乗せると、男の目が見開かれた。


ま、まさか、本当に「ミルディン」って出たんじゃないだろうな……じょ、冗談だったのに!


と思ったが、どうやら杞憂のようだ。


「……普通に人族なのに、何で顔隠してんだ?坊主」

「え?えっと……」

「……彼にとっては顔に何らかのコンプレックスがあるらしい」

「そうか。まぁ追究する様な野暮な真似はしねえよ。人族なら問題ないしな」


レアヴロードがフォローしてくれたおかげで、普通に通れそうだ。男もそんなに気にした素振りは見せなかったしな。

しかし、「人族なら……」って事は、亜人は駄目な事があるのだろうか?此処、ドゥアリンじゃないよな?間違えてないよな?



「ようこそ、王都へ」



そう言って、歓迎してくれた騎士に警戒心を抱きつつ、俺らは王都へ入って行った。




***




王都は人で溢れていた。ちょっと都会っぽいなって思う所は、道が石畳なのだ。中世風で、店一つ一つもレンガ造りが多く、真新しい雰囲気に包まれていた。

俺は前世でそういう中世風な光景は資料とか画像で見た事あるが……どうやら、リーフとリリアは初めて見たらしく大興奮してた。大人ぶって「やれやれ、子供は」って言ったら、レアヴロードに頭撫でられたので引っ叩いておいた。


さて、最初に探す宿舎。これはあっさり見つかった。

もう少し時間がかかると思っていたら、未だ学生の予約は少ないのだそう。もうじき一斉に予約しにやって来るとのこと。

確かにまだ一ヶ月くらい時間があるって言ってたし、何ら疑問はない。


宿舎自体も大きく、レアヴロードも一番大きく快適だと言って、熱心に薦めてた。何かステマっぽい。

レンガ造りで、中も大きい。食堂らしきところで皆と食事が取れるだけでなく、部屋まで持って来てくれるサービスまであるそうだ。これは人気が高いな。実際人気らしいし。

折角なので三人部屋を一ヶ月くらい借りることにした。お金なら腐るほどあるぜ、持ってけや。

長細く広い部屋には三つベッドが壁際に置かれていた。

窓際から入口付近まで縦三つに並べられたベッドと、テーブルに三人がけ用のソファー。それに椅子。何このVIP待遇。驚きましたわ。

流石のレアヴロードも呆気に取られてた。俺らも驚きだよ。どんな部屋用意してくれたんだよ。


後々分かる事だが、此処の宿舎は大きく広く快適でサービス精神満載な為、料金が高い。だから、学生が借りる事は滅多にないそう。あるとしたら、正しく貴族だけだとか。マジか。

金があるとか言って調子乗り過ぎたわ。反省反省。でも、この部屋に泊まる。絶対泊まる。



お次の目的である。そう、図書館。

王都の図書館。しかもエルロンド国の街並みは美しいと有名である。その王都の図書館。さぞかし美しいに違いない。それこそ美術館みたいな。いや行った事ねえけど。

リリアは無関心そうだったが、リーフは若干嫌そうな顔してた。曰く「難しい本読むの苦手なんだよね」とのこと。何故難しい本だけに括ったのかが分からないが、一先(ひとま)ず本が苦手だと認識して良いのだろうか。認識しちゃえ。


で、行ったわけだ。レアヴロードの案内によって。

途中、俺は話しかけられる事が多かった。そりゃそうだ。ローブを目深に被った子供が居たら誰だって怪しむわ。其処は騎士の栄光(笑)を持ったレアヴロードに助け舟を出して貰い、難なくクリア。

そんなこんなで道中色々食べたり飲んだりしつつ、図書館に辿り着いた。

感想を言うとすれば


「……図書館、なのか?」である。


いやだって、純白といえるほどに白い四角形の建物。入口の真上には綺麗な時計が飾られており、上にある窓はステンドグラス。しかもよくよく真上を見ると、鐘……?が付いてる。


「……レアヴロードさん」

「はい」

「教会じゃないですよね?」

「よく間違われる旅人がいらっしゃいますが、教会はもっと奥にあります」


あ、やっぱり間違える人居るんだ。ですよね。

そう思いつつ、皆で中に入る。


そうそう、レアヴロードに注意されたよ。「館内ではお静かに」と。何処の世界でも一緒なのね。




***




御機嫌よう、皆さん。貴方のアイドル、ティルフィーネです。

早速ですが、俺―――滅茶苦茶暇です。


レアヴロードは元々図書館に用がないので、「夕方頃に帰って参ります」と言って何処かへ行った。

リリアとリーフは勉強タイムである。試験勉強である。

二人とも、どうせやるのは実技なので関係ないのでは……と思ったが、実の所、入ってからが問題らしい。


実技試験で合格した生徒ほとんど……とは言わないが、実技で合格したせいで筆記がまるで駄目って子が居るそうだ。

その為、実技で入る子でも予習復習はしなければ、筆記でクラスを落とされてしまう。

……何だろう、推薦入試で早々合格決まったのはいいけど、一般入試で入った子に比べて学力に差が出てしまうって感じだろうか。推薦入試で入ると、後期は勉強しないで過ごしちゃう子が居るらしいから。俺一般だったけど。


その為、リリアとリーフはその勉強である。俺?いやだって……数学は前世でやったし……地学も村に居る間独学で覚えたよ?お父様教えて下さらないんですもの。言語も大丈夫。

魔法学もレアヴロードに聞いてみたところ、ただ単に魔法に関しての知識が筆記になっただけだそう。つまり、魔法陣の形や魔術の理論などを唱える勉学だそうだ。確かそれ似たようなの父さんに教わったな。


で、問題は……歴史である。


両親は何故かあまり歴史に関して教えてくれんかった。ただミルディンが奴隷種族で希少価値が高いって事くらい。

そんなわけで、俺も歴史書などを探して読み漁っているが、如何せん量が多いだけでなく、


「……何か魔族を貶してるのが多いな」


魔族は奴隷の種族だの、魔族は人族を襲う悪魔だの。

なんちゅー本じゃ。魔族は悪っていうのが定着しちゃってる。


「……ん?」


ある本を読み漁っていたら、とてつもなく気になる箇所を見つけてしまった。

古臭い本の黄ばんだページにある文字羅列を指でなぞってよく読み込む。




「……“勇者召喚”……!?」




なん……だと……!?


よく読もう。俺の裏ボス人生の為にも。


『魔族は反旗を翻した。黒き島を手に入れ、魔族の島が生まれてしまった。挙句、魔族は人族を襲い始めたのだ。魔族と呼ばれるだけはある悪逆非道な行為に国々は混乱し、ある者は恐怖で泣き崩れ、ある者は怒りで狂い始めた。ドゥアリン国はこれを良しとせず、ある禁術を施す事となった』


……いや、お前等がやって来た結果だろうと言いたいが、堪えよう。


『禁術―――(いにしえ)より伝わりしその魔術は、世界に多大なる影響と代償が生まれる。それは人としての道を外し、限界を超えた魔術とも言える。ドゥアリン国は魔術の発展したエルロンド国に魔術師を急募し、多くの魔術師を集めて禁術を行わせた。だが、その禁術には莫大な魔力と技術力が求められる。魔術師全員の魔力を足しても足りない。どうすればいいかと考えた末―――奴隷種族であるミルディンを使う事となった』


……。


…………は?


『ミルディン人も抱える魔力はエルフと同等、もしくはそれ以上と言えるほどに多い。ならば、奴隷として使えなくなったミルディンを片っ端から使う方が良い。貴族が欲しがる髪を切り、女は性奴隷として使えなくなるまで、男は手足がもげるまで使ったところで、魔力を全て奪う。そうした所、魔力量が増加し、効率も大幅に上がった』


……。


『魔力が十分に集められた時、禁術は行われた、魔法陣を何重にも丁寧に描き、長い詠唱を延々と唱えた。結果―――見事、一回で成功したのだ。異世界より召喚された少年は、奇妙にも黒髪を持っていた。人々は彼を希望の星として“勇者”と呼んだ』


日本人ですやん。


『並外れた知識と力を持った勇者に、魔族を潰すよう頼んだが、勇者は拒否した』


ですよねー。


『怒り狂ったドゥアリン国の王は、彼を永久追放し、魔族のいる島へと捨て去ってしまった』


えっ何してんの。


『その後、調査によると勇者は魔族によって殺されたとされている。また……』


ここで、ページが切れてしまっている。ボロボロだし黄ばんでいるし、仕方がないと言えるが、俺の感想としましては


「……何してんのドゥアリン……」


馬鹿じゃないの。何してんの、マジで。

ドゥアリンの阿呆さ加減はもうお腹いっぱいだからやめてほしい。これ以上おかわりは要らん。

しかし……予想以上の非道さを御持ちになる国である。ドゥアリン王国はダメ、絶対。よし、心に刻もう。


……勇者召喚、か。この国は実際行ったんだよな。


……。


や、別に何も企んでないからね?

俺は今から歴史の勉強に勤しむのです。あー久々に大魔帝王様とお喋りしたい。最近勉強だの魔術調整だので忙しくて行ってない。心優しく、時に残虐な大魔帝王様に会いたい。

俺、入試試験終わったら、魔帝国に行くんだ。


フラグを建設したところで、俺のすべきことは決まっている。



勉強である。ぶっちゃけ、マジで歴史危ない気がする。






そして、約一ヶ月間。リーフやリリアは勉強したり体動かすのに忙しい中、俺は歴史書を読み漁って勇者探しに必死なのであった。





読んで頂き有難う御座いました。


次回『俺、入試試験を行います』

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