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第10話:俺、少年と出会った

今回は、リーフの父親・ローレル視点です。


「それじゃ、行って来まーす!」

「ちょ、ちょっと!待ってよぉ、ティナぁ~!」


今日も元気良く扉を開けて、駆けて行く。子供達は朝からとても元気で活発。羨ましい限りだ。


元々俺達夫婦の子供は一人だけだが、最近もう一人増えた。


ティルフィーネ・エンドレス。

銀と金のグラデーションの髪、同じく銀と金の両目。更には、整った端麗な顔立ち。大きな目は、人形のようだと感じた。『生ける芸術』だと、カメリアは呟いていた。


――少年は、プラチナム・ミルディンという……幻、いや、居るかどうかも怪しい人種だった。


知っている人も少なくはないだろう。恐らく、冒険者かもしくは研究者、王族くらいだろう。

勿論、俺も知っている。話のネタ程度の認識だったが、まさか本当に居るとは思わなんだ。


そんな珍しき人種の少年が来てから、早半月が流れた。




そう、あの日は酷い土砂降りだった。




***




俺――ローレル・グリフォンは、元々冒険者であった。



強く恐ろしき魔獣の住まう森、通称『ディスペアの森』に行ったのだが、今思えば愚かしき若気の至りだ。

それなりの腕前を自負していたが、到底歯が立たなかった。強かった。戦場に駆り出された方がマシだと思えるくらいに。

まぁ情けなく負傷したものの、何とか魔獣を倒した俺は、すぐに気絶。気が付けば、何処かの家の中。


助けてくれたのが、カメリアだった。


はっきり言おう。一目惚れだった。

美しい、というよりも愛らしいという言葉の方が相応しい容姿と、その気立ての良さ。こんな人相の悪い俺を必死に介抱してくれる健気さ。

コロッと恋に落ちた。俺、20代でようやく初恋である。


その時は恥ずかしさと緊張で何を言ったか覚えてはいないが、顔を真っ赤にして怪我の痛みなんて忘れていた。


その後、冒険者を辞め、その村の村長に用心棒でも何でもいいから雇ってくれと言った所、あっさり承諾してもらった。

村に住んでからは、カメリアにアピールしまくって、半年後に交際。そしてそのまま結婚、という流れだ。


数年後には第一子・リーフィも誕生し、俺は非常に晴れやかで幸せで有頂天になっていた。




それから、数年後。


リーフがまだ人見知り発動していた頃、ヴィスタリオンという女剣士が村にやって来た。

負傷していた彼女は、まるでかつての俺を見ていたようで、カメリアに言い、介抱する事にした。

酷い怪我だったが、幸いにもカメリアが≪治癒(ヒール)≫を使えたおかげで、何とか事なきを得た。てか、使えたんですね、魔法……。


すると、ヴィスタリオンもまた俺と同じく、用心棒として雇い入れて貰い、村に住む事にしたそうだ。人手は沢山あって苦しい事はないし、心強かった。




それから、更に数年後。


いつものように見回りがてら、村長の家でお茶をすすってたら、突如森が爆発した。

村は一気に大混乱に陥る。当たり前だ。あんな大きな爆発、一体どんな魔獣が暴れたらああなるんだ。

俺はヴィスタリオンや、少しでも腕に自信がある男達を呼び寄せ、森に向かおうとした。

すると、またしても森は爆発。一体何があったというんだ。


森に行くと、燃えてはいないものの、真っ黒で炭だらけ。森という原型を留めていない……焼野原と言うのが一番良い例えだと言える姿となっていた。

正直、呆然とした。

どんな魔獣が、何があって、森を一瞬でこんな無残な姿にしたのだろうか。

恐ろしくて、身震いをしそうになった。だが、震えてはならない。脚がすくんで動けないなんて、以ての外だ。

家族が居るんだ、俺には。カメリアが、リーフが。


ヴィスタリオン達も、緊迫した雰囲気を漂わせている。無論、俺も同じだ。

一先ず、森だった焼野原を警戒しつつ探索。所々に、魔獣の死体があった。……此奴、俺が昔苦戦してやっと倒した魔獣と同種だ。まさか、あの爆発一つで命を落としたのか。あの爆発に、これ程の威力があるとは……恐ろしい。


終始警戒し、緊張しながら見回ったが、どうにもこうにも魔獣の気配は感じられない。死体は極少量ながらゴロゴロしてたけど。



帰宅後、すぐにリーフに「森に近づくな」と釘を刺しておいた。

最近、人見知りもなくなり、しっかりしてきたと思えば、とても好奇心旺盛に育ってしまったのだ。絶対に森に行きたがる。

案の定、「行きたい」とか言って来たが、駄目だと言い続けておいた。厳しく。

だが、この俺の息子の事だ。俺が夕刻・夜の見回りに行っている間に、きっと行くだろうな。一応カメリアにも頼んでおくか。行くなと言っておけと。


……でも、あの爆発のせいか、魔獣の気配が薄いんだよなぁ。警戒、いや恐怖で逃げて行ったのかもしれない。それはそれで喜ばしいが。


何にせよ、今日は雨が降るそうだし、出来るだけすぐに帰るか。


そう思いつつ、夕刻を迎えた。





***





予想以上の土砂降りだった。地面は水浸しで、洪水でも起こるんじゃないかと冷や冷やしてしまった。


ヴィスタリオン達と共に、水生の魔獣が暴れていないか見回り。やはり、あの爆発のせいか気配が感じられない。

……あぁ、リーフが外に出てないか心配だ。外出てないかなぁ。ちゃんと留守居してるかなぁ。

多分していない。俺の息子だから。


早めに帰ろう。どうせ雨酷いし、魔獣居ないし。




其処からが、俺の修羅場の連続だった。


帰宅後、見知らぬ少年が居た。初めて見た時、息を飲んだ。


――すっげぇ美少年……。


銀髪と金髪が混ざり合っているのですら珍しいのに、その髪をしていても違和感のない端麗な顔立ち。

だが、それに似つかわしくない庶民服。……リーフのだな。脚の丈が余ってるのが悲しい。

軽く会釈する少年は、リーフよりも幼く見えるが、どうやら同い年くらいのようだ。大人顔負けのしっかりした雰囲気が漂っている。


カメリア曰く、“ミルディン人”らしいが、俺は真っ向から否定。

当たり前だ。俺の親父、祖父はおろか、何百年と存在が知らされていないのに。今更純血のミルディンが出て来るはずがない。

第一、銀髪と金髪のグラデーションなんて聞いた事もない。

色んな説を混ぜ合わせつつ、俺は否定。カメリアとリーフはしょんぼりと落ち込んでいたが、当の本人である少年――ティルフィーネは、何処か安堵した表情を浮かべていた。


そのまま、二人は寝に入った後、カメリアと話す。


「……あの子の、両親は……」

「……居なくなっちゃったって。父親はもっと昔に……」

「そうだったのか……」


まだリーフと同い年だと言うのに、もう両親が居ない。

俺がリーフと同じ年だった頃は、両親を困らせる程に元気な悪ガキだったのに、あの子には困らせる両親が居ないのか。


何だか無性に寂しく、そして悲しくなった。


出来る限りの事をしてあげよう。




そう思いつつ、夜が明けた。


ティルフィーネ――ティナは髪を切りたいと、売りたいと言い出した。

俺は快く承諾し、競りへと急いだ。

お金は彼にあげよう。足りなかったら、俺の小遣いでも何でもいい、少しでもあげよう。


そんな軽い気持ちで居た事を、後悔した。




“プラチナム・ミルディン”



そう告げられた時、俺は呆然として、頭が真っ白になった。

何を言っているのかさっぱり分からない。だって、その人種は噂どころか、作り話の人種じゃないかと言われるくらいなのに。


専門家は慌て、競りにいた客は俺と同じく呆然とし、貴族は我先にと金額を提示していく。

とんでもない金額に途方に暮れていたら、貴族共は俺に「プラチナム・ミルディンに会わせてくれ」と懇願して来た為、全力疾走で逃げた。





***





そんなプラチナム・ミルディンであるティナは、今や俺らのもう一人の息子である。


いつもちゃんと目深にローブを被り、そして外に駆けて行く。

幼いのにしっかりしており、礼儀も正しい。杖や身形を見るに、何処かのお偉いさんの息子なのかと思う。

だが、両親を失ったというのに、悲しさを感じる素振りを見せず、いつも笑顔を浮かべている。我慢しているのだろうか。凄く心が痛む。


そんな彼は天才のようだ。

ヴィスタリオン曰く、「文字も読み書き出来て、魔術も普通に熟せる。剣術に至っては、型がしっかりしていて、何も言う事はない」と舌を巻くほどだった。


あの爆発が起こった日に出会った少年。もしかしたら、神様の使いかもね……と、カメリアは微笑ましそうに言っていた。


俺もそう思う。あの天才児は、何かしら不思議な“力”を持っている気がする。

まるで、親馬鹿のようだ。ん?まぁいいのか。あの子は、もう一人の息子。それでいいじゃないか。

心配は要らない。あの子はいつも元気で、リーフともリリアとも仲が良い。村の人にもちゃんと挨拶していて、模範的な良い子だ。



だが、そう感じる一方、不安もある。


そう、彼がミルディンだと言う事だ。

村長には訳有りだと説明し、村長も何か察したように理解してくれた。


問題は、副村長である。

副村長のゲールは、欲深で目上に媚びるような奴だ。

かつて、村に一頭だけ居たユニコーンを、国の姫様が「欲しい」と言ったが為に、あっさりと売り払った。

ユニコーンを飼っていた親子は、国の命令だと言われ、泣く泣く手放さざる得なかった。

「ユニコーンが居る」と告げ口したのも、売る様に言ったのも、ゲールだった。彼奴は最低だ。村全てを支配しようとしている。


もしだ。もし、国が「ミルディンが欲しい」と言ったとしたら。ミルディンが居る事にゲールが気付いたら。


――恐らく、売られるだろう。


絶対にそれは阻止してみせる。


月に一度の『騎士団の視察』。

村人全員が騎士団を出迎え、現状報告するというものだ。

その時、ティナは家の中に居させよう。

ローブを被ったままならいいだろうが、あのお堅い騎士団の事だ。「ローブを脱げ」とか言い出すかもしれない。


すると、ティナがミルディンだという事がばれる。


騎士団はそれを報告し、姫様が「欲しい」と言い出すかもしれない。

その時、ゲールが手引きして、騎士団が「国の命令だ」と言い、連れて行かれるかもしれない。



ティナは、もう一人の息子だ。


俺は“父親”として、絶対に守ろうと決めたのだ。





読んで頂き有難う御座いました。


次回からはティナ視点に戻ります。

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