プロローグ:俺、裏ボスになろうと思います
白い光に包まれる。
LEDなんて目じゃない程の白く眩い光だ。
その光を発する主が、俺を優しく抱き締めた。
「あぁ、愛しき我が息子。しばしのお別れ、どうか許して」
サラッと長く綺麗な銀髪が俺の頬に触れる。
抱き締められた感触は柔らかく、懐かしさがある。いつ以来だろう。抱き締められたのは。
人肌だけではない温もりが、身体に、いや体内にまで流れている気がする。
しばらく抱き締められたのち、そっと俺から離れる。
「……母さん?」
「ごめんね……ごめんね」
謝り続ける女性――俺の母は寂しそうな笑みを浮かべる。
何故、そんな笑みを浮かべるのか。いや、何故別れねばならぬのか。
……いや、俺が聞きたいのはそんな事じゃない。
「……どうして……」
「何も聞かないで、ティナ。私の力を全て貴方に注ぎ込みました……」
「え?」
「あの人から捧げられた力。私が捧げる力。貴方の中には私達夫婦の力が込められている……」
俺の父は……幼い頃に何処かへ旅立った。その時、俺に「全てを捧げる」と、力を与えた。
――全ての。父の全ての力を。
だが、俺が聞きたいのはそんな事ではない。
「いや、」
「私はあの人を捜し出します、必ず。そして貴方の元に絶対に……戻ってみせる」
「あの、」
「ああ!!愛する息子を此処に置き去りにしなければならない!!私も辛い!!でもこれも試練よ!!頑張れ私!!」
「おい、」
「さよなら!!我が愛しい愛しい息子よ!!可哀想な私!!未だ幼き息子を置いて旅立たねばならぬなんて!!」
幼いっつっても、もう9歳ですけど。そんなに幼いですかね。幼いですか。そうですか。
「あのさ、何でそんな演技を、」
「あのバカ亭主を捜し出して必ず連れ戻す!!その時は二人でボッコボコのメッタメタにしましょう!!」
すんげえ物騒な事を言うな、オカン。むしろ、オトン逃げ延びてほしい。
まぁ父さんは逃げたわけじゃない。実際旅立ったのだ。何処かに。
目の前で白く淡い光を発しながら宙に浮いている妙齢の女性は、俺の『第二の』母だ。
簡単に言うと、若作r……不老の母はとうとう痺れを切らし、父さんを捜しに行くらしい。
それはいいんだ。それはいいんだが
「俺、置いて行く必要ある?」
「ないわね」
「ないわねじゃねぇよ。連れてけよ。何でこんな大草原の真ん中で俺捨てられんの」
「捨てるとは失敬な。何かねぇ、お母さん歩くのも飽きたし、そろそろちゃんと捜そうかなって」
「今までちゃんと捜してなかったのかよ」
マジかよ。俺、6歳の時からずっと旅して来たじゃねぇか。父親捜しに。
「だって国中見たいじゃん」
「観光気分か」
ふわふわ浮きながら、脚を組んでリラックスムードに入りやがってるこのオカン。
どうやらマジで俺を置いて行くつもりらしい。酷い。
広漠とした大草原のど真ん中。俺と母以外の生き物は見つからんのだが。それでも一人で行くと。
「それじゃ、ティナは一人で何とか生きていけるでしょ」
「いやいやいや。9歳児の俺を見捨てるのか、我が母よ」
「だまらっしゃい。アンタ、世渡り上手だからヘーキヘーキ」
俺はヘーキじゃないんですけどね。
あれ?マジで置いてかれるの?俺ぼっちになんの?
何そのエイプリルフール。クッソ笑えない。
「それじゃ……コホン。我が愛しき息子、ティナよ……貴方は貴方の人生を、自由気ままに歩みなさい……」
「今更何良い感じに締めくくろうとしてんの」
「おだまり。そんじゃ、お母さん行くわねーバイバーイ」
「へっ?」
徐々に母は空へと飲み込まれるように上へ上へと飛んで行く。遠退いて行く母の姿。
不思議と涙は出てこない。もしかすると今生の別れになるかもしれないのに。
だが、呆れと諦めは出てきた。母の自由奔放さは今に始まった事じゃないが……
「……マジかよ……」
オカ――――――――――――ン……!!
あんたって人は……!!
まさか本当に大草原のど真ん中に置いてかれるとは思わなかったよママン……
畜生……肉食獣の餌になってしまったら、体内で溶けながら恨むぜ……
手元にあるのは、愛用の杖と直前に母から貰った謎の本。
空を見上げるが、母はもう既に居ない。父の時と同様に何処かへ消えた。
そして、頼る人居らず。
この広々とした大草原。遠目に見える山々と森。町の気配も生物の気配もない。
つまり、俺ぼっち。分かり易い結末である。
どうするか。それが今の俺の行動を決める最重要項目だ。
母は言った。『貴方は貴方の人生を、自由気ままに歩め』と。
父母から譲り受けし(譲られたんかな)この強大なる力。
圧倒的な魔力と幼い頃からの英才教育、そして……人生経験。
これほど揃っていれば、俺は何にでもなれるのではないか?
例えば、世界を救う勇者に。
例えば、世界を導く英雄に。
例えば、世界を滅ぼす魔王に。
例えば、世界を動かす神に。
――否。俺がなりたいもの……それは、
勇者にとっても、魔王にとっても、神出鬼没の謎の助言者。
その不可解な行動に振り回され、世界が危険に晒されようと、傍観者として存在する。
誰の味方でも敵でもない存在……
俺は、
「おれは、海賊お……」
ミスった。間違えた。危うい。これは危うい。
そんなわけで、Take2
「俺は、裏ボスになるぞォォォォォォ―――――――――――――――――――――――!!!!!!」
静寂に包まれた、広いだけの大草原の中心部では、俺の叫びだけが轟いた。
一人でも多くの方に読んで貰えるよう精進して行こうと思います。
宜しくお願いします。
※年齢を変更致しました。12歳→9歳




