訓練
遅くなってすいません。
さて、待っている間他の班についても見ておこうかな。この班の様に恣意的に集められた班が有るかも知れない。
注意して見るべきは、残りの勇者7人と、ステータスの分かっていない2人、後は極端にステータスの低かった『無能者』位か?
後はA組の面々だな。
良く良く考えると、俺達も含めて要注意人物が43名。半分近くが要注意人物になるな…。これは、帝国に同情せざるを得ない。
そう考えると、この10班も偶々なのかも知れない…が、流石にそれは楽観視が過ぎるな。
とにかく、何か不審な点が無いか見てみるとしよう。
ぱっと見、目につくのは先生連合か? それ以外は普通そうだが……。
先生連合は、A組の先生5人とB組の副担任1人の班だ。
B組の先生は、唯一先生の中で勇者になっている先生だ。熱血漢と言うに相応しい若い先生で、正義感も強い。聖野を除けば、彼が一番勇者っぽい。
この班は先生が集まっているだけだから、不審と言う程の事は無いな。ステータス的に見てこういう編成になるのは頷ける。
他に偏った班は……。
……あった。
無能者と勇者2人が属している班だ。
まず、能力的に高い筈の勇者と能力の低い無能者が一緒の班だと言うのがおかしい。全然能力を鑑みた構成じゃない。
更に言うなら、彼らは元々虐め虐められる関係だ。しかもそれが召喚されてから酷くなっているようなのだ。
それくらいの事は向こう側も分かっているはずで、それなのに、彼らをわざわざ一つの班にするというのはおかしい。
目的は色々考えられるが、役立たずの無能者を手を汚さずに排除するのが目的か、それを理由に性格の悪い勇者達を排除するのが目的か…。
いづれにしろ、碌な事じゃないだろう。注意しておく必要があるな。
気になる班はそんなとこだろうか。
しばらくそうやって他の班を眺めている内に班分けも終わる。
すると、部屋の中に数十人の人が入って来た。魔法使いのような格好をしたのが半分、残り半分は兵士の様な格好をしている。
その人達は分かれて各班に向かう。俺達の所にも二人向かって来ている。
一人は俺の予想通り、カテリーナだ。今は魔女の格好をしている。
もう一人は兵士の様だ。他の兵士よりも一層筋骨隆々であり、身長も190cm有るか無いかと言った程度で、非常に迫力がある。ひげ面で厳つい大きな顔もそれに拍車を掛けている。
その厳つい武人が相好を崩したかと思うと話し掛けてきた。
「タリヤ帝国第一師団長のダヴィドだ。
今日からお主達をビシビシ鍛えて行くからよろしくな!
ただし、魔法については俺ではなく隣のカテリーナが教える事になる。俺には魔法みたいな小難しい事は良く分からん。」
そう言ってガハガハと笑うダヴィド。外面とは異なり付き合い易い人間なのかも知れない。
しかし、第一師団長か。やはりそうとう地位の高い人物だな。
昨日の報告によると、帝国には4つの師団が有って数字が若いほど強いのだとか。特に第一師団はとても強力で、他の三師団を合わせても勝てない程の実力なのだ。
故に、軍隊の総指揮官は実質第一師団長となる。
実質、というのは、形式上王が指揮官であり、それを第一師団長に預けるという形をとっているからだそうだ。
つまりダヴィドはこの国の軍隊のトップなのだ。
その後、カテリーナやダヴィドのため、もう一度簡単に自己紹介した。
自己紹介が済むと早速訓練を開始すると言うので、訓練場なる場所へと向かう。流石に訓練場は城の中にはなく、隣にあるドームのような建物がそれであるらしい。
何気にこの世界に来てから外に出ていなかったので、初めて外に出ることになるな。塀の中ではあるから、外と言って良いか分からんが。
城の窓から見て分かっていたが、元の世界でも見られる景色だ。日本の様に樹木がそこら中に生えているわけでは無く、少し低木が生えている程度で、後は草原なのだが。
おそらく乾燥的な気候なのだろう。
木はオリーブと良く似た特徴をもっているし、草も元の世界にあっても何らおかしくない様な造形だ。
勿論細かく見れば元の世界と違う点は多々有るが、草木に対する知識が無いと同じに見えるだろう。
何で俺がそんなことを知っているかというと、勿論授業でやったからだ。
こんなことまでやってるから授業が大変になるのだと思わなくも無いが、実際役に立っている以上文句も言えないな。
「それにしてもこんな風景を見せられると、異世界に来たというより外国に来た様にしか思えないよね。」
道中、急に聖野がそう話し掛けてきた。何故に?とも思ったが、鳥巻は他の女子二人と話しているし、残りは俺と布妻と二人で話している教師。
一番話し掛け易かったのが俺だったのだろう。布妻には話し掛けにくいだろうしな。
それにしても、鑑が女子に混じっているのは意外だな。大方、賽華が強引に話し掛けたのでは有ろうが。
「久世君…だったよね。折角同じ班になったんだし、仲良くしようと思って話し掛けてたんだけど、悪かったかな。」
俺が黙っているのを見て聖野が言う。折角なのだから話しておくか。
「ああ、すまん。突然だったから少し驚いただけだ。
確かに異世界って感じはしないな。魔法が有るだけで、それさえ無ければ地球の何処かに飛ばされたと言われても気付かないかも知れないな。」
「そうだね。違う場所でも環境が同じであれば生物は似たような進化をするって聞いた事が有るけど、実際に見ると凄いよね。」
収斂進化だったか、狼とフクロオオカミの例が有名だな。
「そう考えると、一見人間に見える彼らも全く別の生物だったりしてな。」
「そうだとしたら面白いね。」
そうやって話している内に訓練場についた。
訓練場とは言ったが、なんの事は無い、ただの運動場の様な物だ。中では、先に着いた班が走っていたり、この国の兵士と思われる人達が剣や槍の素振りをしている。
訓練場の真ん中位まで来た所でダヴィドがこちらに向き直る。厳めしい顔をより一層厳しくしている様だ。
「それでは、訓練を開始する。訓練中、俺の事は教官と呼ぶように。……返事は!」
「「「「「「はい」」」」」」
「声が小さい!」
「「「「「「はいっ!」」」」」」
訓練中は厳しそうだ。言葉使いも変わっている。公私を分ける態度には好感が持てるな。
「よろしい。
この訓練はお前達に戦闘技術を身に付けさせる為の物だ。だが、戦闘技術だけが有っても戦場では何の役にも立たん。
歳を喰った老兵はいくら経験を積んでいたとしても唯の老いぼれだ。
戦闘技術を生かすためにはそれを支えるだけの身体能力が必要だ。先ずはその身体能力を身に付ける為のトレーニングを行う。
今から行うのは、走り込みだ。身体能力の中でも最も基礎的な体力を付ける。
俺が先頭を走るから、お前達はそのあとを着いて来い。わかったな?」
「「「「「「はいっ!」」」」」」
そうやって訓練が開始された。俺達はダヴィドに着いて走って行く。ちゃんと全員が着いて来れる速さだか、そうは言っても結構な速さである。
俺と賽華と布妻にとっては鼻歌を歌いながらでも付いていける速度では有るが。
と、言うわけで、自分で自分に超能力を掛けて体を重くする。
A組でも良くやった方法だ。どれくらいの加減が良いかも分かっている。体力ついでに超能力も鍛えられるから効率的なのだ。
これで疲れた演技とかもしなくていいから精神的に楽だ。肉体的には大変だが、訓練にはなるだろう。
それから約3時間後、訓練が終了した。訓練の内容はと言うと、ずっと走り続けるだけだった。
しかも、徐々にペースがアップしていった。一人二人と脱落していき、最後に走っていたのは俺と聖野だけだ。
俺は後一回ペースアップしたらギブアップだったな。
今日は疲れた。飯を食ったらさっさと寝よう。
と、言うわけで一週間ぶりの投稿でした。
最近リアルが忙しくなって、あと、ウイイレに嵌まってしまい時間が取れんかった。仕方ないね。
2~3週間はリアルが忙しいので、週一の投稿になるかも知れません。ご了承下さい。