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人生こんなところで終わらせてたまるか!第6話

 あたし佐伯美保子は28歳、アラサーまっただ中。某都市銀行の地方支店で働くOLである。

 身長180センチ、よく街で男の子に間違われる。大学時代は女だてらに女子プロレスにはまり、全国大会で決勝まですすんだこともある。

 5年越しのお付き合いの末、婚約者の齋藤丈治に別れ話をもちかけられ、婚活を始めたあたし。

 ネットの出会いサイトに登録したのはいいけれど、誤って出会ってしまったのは、ゲイのおっさんだった!

 どうなるあたし!?


 あたしの人生こんなところで終わらせてたまるか!


 ドキドキ婚活ストーリー!

「あら、そうなの?婚約破棄されたの?かわいそうにねぇ」

 権藤さんは、運ばれてきたチョコレートパフェをスプーンでゆっくりと崩しながらそう言った。あたしたちは、せっかく出会ったのだから少し一緒にお茶をしようと権藤さんに誘われて、奢りという餌に釣られて近くの喫茶店にやって来た。権藤さんはゲイであるならば、女性には興味がないから、安全だろうと京子が判断してのことでもある。

 喫茶店に着くと、京子が今回あたしたちが『俺と天使』に登録したいきさつを話し出した。あたしはあまりそういう個人的なことを他人に話すのには躊躇したのだけれど、京子は止める間もなくペラペラ喋り出したのだ。

「やっぱりね、好きな人に振られるのって辛いわよねぇ」

 と、権藤さんはあたしに同情してくれた。

「あたしもね、こんなになったのは、好きな人に振られたせいでもあるのよ」

 権藤さんによると、彼は少年時代にある少女に恋をした。しかし、こっぴどく酷い形で振られてしまい、心に傷を負ってしまい、女性を愛することができなくなったというのだ。

「あたしは、絶望したわね。もう生きていけないと思った。でも、その時に助けてくれたのが、友人の男の子でね。その子がゲイだったのよね」

 それから今までずっとその世界で生き続けてきたのだという。

 なんというか、あたしが全く知らない世界の話だった。

「で、男の人同士って、どうやって、愛し合うんですかぁ?」

 京子は前のめりに質問し始めた。こいつ、そんな趣味もあったのか。

「それはね…」

 と、放送禁止用語が飛び交う会話が続いた。あたしは、できるだけ聞かないフリをしていた。目線も出来る限り逸らすようにして。すると、喫茶店の他のお客さんたちが、ちらちらとこちらを見るようになった。

「ちょっと、周りの人達見てるわよ」

 さすがにあたしはそう忠告して、二人に話を止めるように諭した。

「じゃあ、続きはまた今度、別の場所でゆっくりしましょう?」

「はい、ありがとうございます。いやー、実際の生のお話聞くと、すごいですねー」

 京子は紅潮した自分の頬を両手で包みながら、目をキラキラさせていた。おい、少しは自重しろ。

「で、話戻すけど、確か、某某さんね、ノンケ用の交流サイトもやってたはずよ」

「某某さんって?」

「『俺と天使』の管理人さん」

 ああ、そう言えば、送られて来たメールにそんな名前が書かれていたっけ?

「でもね、そこ以外のサイトはやめておいた方がいいわよ。特に無料サイトは。大体はいかがわしいところばっかりだしね。有料のところは、まだいいけど、結構ぼったくりも多いし」

「某某さんって、権藤さん、お知り合いなの?」

 京子が疑問をなげかけた。

「ええ、知ってるわよ。よくオフ会とかで会うの。ああ、某某さん自体はノンケだけどね。でも、ゲイやレズビアンの人達にすっごく理解ある人なのよ。よかったら、今度紹介しましょうか?」

「あ、いえ…」

「はい!是非!」

 断りかけたあたしを差し置いて、京子は権藤さんにそう言った。

「ところで、京子ちゃんは、カレシとか探してないの?」

 話題が京子の方へいった。

 京子はこう見えても、男に不便することのないタチで、カレシのいない時期がないくらいモテるのだ。特におっさんキラーであり、今まで、中小企業の社長さんや、大企業の役員さんたちとお付き合いすること多々。その都度、ブランド物が増えていくという強者であった。但し、お付き合いが終わると、それらは質屋へ直行するのだが。

「わたしは、いまんとこ不自由してませんね」

「そうでしょう?きっとあれね、あたしくらいの年齢の男性にモテるでしょ?」

 権藤さんはきっちり言い当てた。

「でもね、もうそろそろ落ち着かないと行き遅れるわよ」

 などと、予言するかのように言った。

「そうですねぇ、そろそろ落ち着かないとならないかも知れませんねぇ」

 京子はそう言って、ニヤリと笑った。権藤さんも、同じく笑った。なんだこの二人。

「美保子ちゃん、どうする?某某さんのとこに登録してみる?」

「えーっと…、どうしましょうか…」

 どうしようと言われても、あたしはなんとも言えなかった。正直今回の件で、ネットはもうコリゴリだったのだ。

「じゃあ、あたしの知り合いに結婚紹介所やってるのがいるけど、もしよかったら、そっち紹介しましょうか?知り合いって言っても、あたしが通ってるジムの常連さんなんだけどね」

「権藤さんって、ジム通いしてるんですか?どこのジムですか?」

 どうりで、しっかりした体つきしていると思った。

「こう見えてもね、昔はラグビーとかやっててね。あの、あそこの駅前のビルの2階にあるでしょ?ジョイジムってとこ」

「そこ、あたしも通ってますよ!」

「あら、そうなの?奇遇ね。じゃあ、今度その人紹介してあげるわ」

 意外な偶然で、今度は結婚紹介所の経営者を紹介してもらえることになった。

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