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人生こんなところで終わらせてたまるか!第5話

 あたし佐伯美保子は28歳、アラサーまっただ中。某都市銀行の地方支店で働くOLである。

 身長180センチ、よく街で男の子に間違われる。大学時代は女だてらに女子プロレスにはまり、全国大会で決勝まですすんだこともある。

 大学在学中に、齋藤丈治と出会い、結婚を前提にお付き合いを始めた。去年の秋にプロポーズしてもらい、それぞれの両親への挨拶も済ませ、来年には結婚の予定だったのだ。

 ところが、急に別れ話をもちかけられた。その理由が宗教団体へのお布施のため、結婚資金を注ぎ込むことになったのという!

 そんな男、こっちから願い下げだわ!


 そして、婚活を始めた。どうなる、あたし!?


 ドキドキ婚活ストーリー!

 そして、日曜日。あれから何度かやり取りして権藤さんとは、自宅近くの公園で会うことにした。最初に会うのは、昼間に人通りの多いところいいという京子のアドバイスに従って、この場所にした。

 また、この公園だと、こちらは一旦隠れて相手の様子をうかがうこともできる。もしかしたら、来ないかもしれないし、冷やかしの可能性もあるので、こちらが勝手知ったるフィールドの方がいいということだ。しかも、何かあったら、周りに助けを求めることができるところがいいという。

「あんた、なんで、こんなこと知ってるの?」

 と、あたしが言うと、京子はニヤリと笑って何も言わなかった。あたしはそんな京子に感心するやら驚愕するやら。京子はあたしの予想以上にいろいろ経験してきたことがあるようだ。

「あ、来た。あれじゃない?」

 京子が指をさす先に、男性がやって来て、指定のベンチに座った。年の頃は50歳から60歳くらいの中年。茶のジャケットを着てハンチングを被っている。無精髭を生やしており、少し細面のダンディなおっさんだった。細めのサングラスをかけている。確かに、メールで送ってきたのと同じ服装だ。

「ちょ、おっさんじゃん」

「でしょ。だからあたし、そう言ったじゃん」

 いや、確かにあたしは年上趣味ではあるとは言え、さすがにこの年齢はないだろう。少なくとも20歳は離れていそう。これは…と、思いつつ、よく見てみると、結構体格が良い。身長も180センチ以上はありそう。おっさんとは言え、スポーツ選手然としていて、まあ、あと10歳は若ければ、考えなくもない…いやいや、そんな…などと妄想が。

「いや、行って断ろう。いくらなんでも、あんなおっさんじゃ…」

「行くの?断るなら、このまま帰っちゃってもいいんじゃない?」

 などと、京子は大変失礼なことを言い出した。

「そんな失礼なことできないじゃない」

「ホント、あんた、変なところで真面目ねぇ」

「あたしはいつもどこでも真面目です!」

「それよりさ、さっきから思ってたんだけど、あんた、なんでデートなのに、パンツスーツなの?」

 と、改めて京子があたしをジロジロ見ながら言った。

「だって、スカートとか恥ずかしいじゃん」

 正直、スカートは履き慣れないのだ。

「まあ、いいけど。じゃあ、行くわよ」

 そう言うと、京子は茂みを抜け出して、ベンチに向かった。あたしは慌てて後を追った。

「あのー、権藤さんですか?」

「ええ。美保子さん…ですか?はじめまして」

 権藤さんはサングラスをとって、あたしに頭を下げた。優しい目をしている。いや、いかんいかん。

「はい、あたしが美保子です。こちらは、あたしの親友で、向坂京子って言います」

「美保子さん、ちょっと女の子っぽいわね。声も高いし。…でも、私はそういうのも好きよ」

 権藤さんは、ちょっとナヨっとした口調でそう言って、あたしの二の腕を撫でた。

「ぎゃ」

 あたしは酷い叫び声をあげて、ちょっと後ずさった。ボディタッチには慣れてはいるのだが、今まで感じたことのない感触だったのだ。しかも、あたしは女としては声が低いって言われてる。なんか違和感。

「あら、ごめんなさい。良いから体つきしてるなぁって思っちゃって」

 明らかに権藤さん口調は普通の中年男性のソレではなかった。

「京子…さん?も、同じお仲間なのかしら?」

 権藤さんは嘗めるような視線で京子を見た。なんだかおかしい、この人。あたしは狂気を感じた。後で思えば、もっと早くに気がつくべきシグナルはいくつもあったはずなのだ。

「これ、出会いの記念にプレゼント。お友達もいらっしゃるなら、もう一個用意しておいたんだけど」

 そう言って、権藤さんは小さな可愛い箱をあたしに差し出した。

「大丈夫、安心して。安全なプレゼントだから」

 あたしが手を出さないので、権藤さんはそう言って、催促した。

「あ、あの、ごめんなさい!今日はお断りに来ました!」

 あたしは、そう言って、頭を下げた。

「え?…ああ、そうなの? それは残念ね…?」

 権藤さんは少し残念そうな顔をした。

「あ、あのー。失礼ですけど、権藤さんって…ホモなんですか?」

 京子は遠慮無く彼にそう聞いた。ちょ、あたしも、そうじゃないかとは思ったけど、面と向かって聞く?

「え…ええ。そうですけど……その言い方、嫌いだわぁ……ゲイって言ってよ。……ってことは、あななたちは、違うのね?」

(えー!)

 即答する権藤さんにあたしは驚いた。

「あの、もしかして、『俺と天使』って、ゲイサイトなんですか?」

「あら、知らないで登録しちゃったの? 時々いるのよねぇ、そういう人達ぃ」

「あ、やっぱり。じゃあ、『私と天使』って、レズビアンサイトですか?」

「そうそう。私は見たことないけどね。でも、そこで知り合ったカップルは知り合いにはいるわよ」

「おーい、京子!あんた、なんでそんなサイトにあたしを登録したの!」

 仲良く会話を続ける二人に、あたしは突っ込んだ。それじゃあ、京子のミスじゃないか!なんてことしてくれたの!?

「あ、あの、あたし、そんなこと知らなくって!ご、ごめんなさい!」

 あたしは平謝りした。

 京子ー!あとで絶対しばいたる!!!!

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