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人生こんなところで終わらせてたまるか!第20話

 あたし佐伯美保子は28歳、アラサーまっただ中。某都市銀行の地方支店で働くOLで、身長180センチ、元レスリング部、よく街で男の子に間違われる。

 5年越しのお付き合いの末、婚約者の齋藤丈治に別れを告げ、婚活を始めたあたし。

 出会い系サイトで誤って出会ってしまったゲイのおっさん権藤さんからなんと偶然、あたしの初恋の人である星夜くんに再会し、相思相愛に!

 と思ったら、銀行ではお局様が誘拐される事件発生! なんとゲイのおっさんは実は元刑事の探偵さんだった! 事件は星夜くんも巻き込んで次第に深刻さを増していく!

 さらに宗教団体から追われて逃げてきた元フィアンセ丈治が満身創痍で現れ、気になる課長からは個人授業に誘われ、きゃー! あたし、どうしたらいいの!?


 どうなるあたしの恋路!?


 ドキドキ婚活ストーリー!

 そんな頃、噂の丈治は、忠犬ハチ公よろしく、あたしの帰りを待っていた。

「ただいま」

「おかえり。遅かったね。ご飯は? ……お酒飲んできた?」

 今日の丈治は察しが良かった。

「うん、もう食べた。上司と会食。あ、ごめんね、連絡しなくって」

 あたしは無意識に少しつんけんな言い方をしたかも知れない。ついさっき京子に言われた言葉のせいなのかも。

「ううん。お疲れ様。OLも大変だよね」

 丈治は大きな体格をできるだけ小さくみせようとしているかのように、猫背で肩を丸くしていた。居候の身を恥じているという意味もあるのだろうか。さらに、あたしの愛用している猫のエプロンがより滑稽さを醸し出していた。

「じゃあ、これ、冷蔵庫に入れておくね。朝にでも食べて」

 食卓の上には夕食がセットされていた。ここ毎日帰宅した頃を見計らって用意されている。

「うん…ありがとう。ちょっと着替えてくるね」

 あたしは自室に入ってドアを閉めた。ちょっと複雑な気持ちだった。あんな事があったとは言え、一度は結婚を約束するほど愛し合った仲。頼られると、京子の言うようには放っておけない。けれど、主夫然とした丈治の姿はあまり見たくはなかった。

「丈治。ちょっと話があるんだけど」

 あたしは着替えてから居間に戻って丈治に声をかけた。

「ん?なに?」

「まだ、ダメなの?外出とか?」

「ん…。まだダメだと思う…」

 丈治は小さくした体をさらに小さくした。

「その教団の人達に見つかったらってことなの?」

 丈治は小さく頷いた。

「それでも、ちょっと外に出るくらいなら平気じゃないの?」

「美保子はあいつらの事を知らないから、そう言えるんだよ…」

 丈治の恐がり方は尋常ではなかった。その話をする度に震えあがる。よっぽど酷い目にあったのだろう。ここに来たときの外傷はかなり癒えてはきたけれど、心の病を治すのにはまだまだ時間がかかるのかも知れない。けれど、だからと言って、いつまでもこんな状態でいるわけにはいかないとあたしは思っている。

「でも、いつまでもこのままじゃ…」

「分かってる…分かってるけど…」

 ここ数日、こんな感じで話は進んでいなかった。

「もう、分かった…」

 結局折れるのあたしの方。あたしはほろ酔い状態のままソファに座って、テレビを点けた。丈治は台所で料理の片付けを続けた。

 テレビでは、バラエティ番組をやっていて、いま流行のタレントがたいして面白くもない駄洒落を言っていた。一体この人達はどれくらい報酬をもらってるのかな。随分高い駄洒落じゃんじゃないかな、などと、どうでも良いことを考えていた。

 さっき、課長が言いかけたことをぼんやり考えた。課長は離婚したらしいから独身なわけで。本社配属のエリート銀行員。将来は約束されている。年齢差はあっても、悪い話ではない。

 けれど、あたしはそんな打算的な女ではなかった。

 それに、課長も離婚したばかりで、ショックもあるだろうし、事件のこともあって、きっと一時の気の迷いなんじゃないかと思っている。それに、課長のことを考えると、もっとふさわしい人がいるに決まってる。

「この人、最近流行ってるの?」

 あたしがぼんやりテレビを観ていると、丈治が隣にやってきて、そう聞いた。

「そうね、流行ってるみたい。丈治、知らないの?」

「うん…ここ数ヶ月テレビ観てなかったから」

「そうなんだ…」

 そう言えば、あたしも丈治が来てからバタバタでテレビもロクに観ていなかった。丈治はきっとその教団にいる間はテレビから離れていたのだろう。いや、俗世間そのものから隔離されていたと言った方がいいのかも知れない。ここに来てからも、あたしがいない間も一人の時もずっとテレビを観ていなかったようだし、そういう風に洗脳されていたのだろうか。

「テレビって、おもしろいね」

 丈治はぽつりとそんな事を言った。やっと俗世間に触れる機会ができたと喜んでいるのだろうか。そう言えば、別れる前まではこうやって二人でテレビを観ながらどうでもいい話をよくしてたっけ。こうしていること自体が丈治の心のリハビリになっているのかも知れないなと、ぼんやり思った。

 やがて、番組は終わり、15分枠のニュース番組に切り替わった。清井さんの事件についても、軽く触れられていた。

「これって、美保子の銀行の人?」

「あ、ああ…丈治知らなかったっけ。そう、そうなの。それであたしもここ数日バタバタでね」

「誘拐されたんだ…。まだ見つかってないの?」

「そう、もう結構経つから。心配なのよね」

 それから、容疑者として、宮崎の写真と名前があがった。いよいよ公開捜査になったのか。

「あ、俺、この人知ってる」

 丈治は、宮崎の写真を見て、ぽつりと呟いた。

「え?」

 あたしは驚いた。

 意外なところから事件解決の糸口が出てきた。

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