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人生こんなところで終わらせてたまるか!第19話

 あたし佐伯美保子は28歳、アラサーまっただ中。某都市銀行の地方支店で働くOLで、身長180センチ、元レスリング部、よく街で男の子に間違われる。

 5年越しのお付き合いの末、婚約者の齋藤丈治に別れを告げ、婚活を始めたあたし。

 出会い系サイトで誤って出会ってしまったゲイのおっさん権藤さんからなんと偶然、あたしの初恋の人である星夜くんに再会し、相思相愛に!

 と思ったら、銀行ではお局様が誘拐される事件発生! なんとゲイのおっさんは実は元刑事の探偵さんだった! 事件は星夜くんも巻き込んで次第に深刻さを増していく!

 さらに宗教団体から追われて逃げてきた元フィアンセ丈治が満身創痍で現れ、気になる課長からは個人授業に誘われ、きゃー! あたし、どうしたらいいの!?


 どうなるあたしの恋路!?


 ドキドキ婚活ストーリー!

「よし、頑張ったご褒美に、飯奢ってやる。何が食いたい?」

 終業後の勉強会が終わると、課長は背広を羽織りながらそう聞いた。

「いや、そんな、面倒みていただいた上にご馳走になんてなれませんよ」

 あたしは一応遠慮した。

「じゃあ、割り勘にしようか? それならどうだ? 何か食べられないものないか?」

 それなら、お断りする必要もない。

「あたしはなんでも大丈夫です。食べられないものはありませんから」

 昔から好き嫌いのないあたしは、出されたもので食べられなかったものはない。食べ物以外なら嫌いなものはあるのだけれど。例えば、お化けとか、高いところとか。そう、あたしは高所恐怖症。

「じゃあ、俺の行きつけのイタリアンにしようか。すぐ近くだし」

「課長は、沢山行きつけあるんですね。あたしなんか、そんなにないですよ」

「そうか?まあ、一人の生活に慣れちゃってるからな。どうしても外食中心になっちまうし」

 それから、課長行きつけのイタリアンに向かった。最近できたばかりの新築のビジネスビルの半地下にある、小洒落た感じのレストランだった。客席も40席ほどあるだろうか。その奥のボックス席にあたし達は座った。座り心地の良いソファ席だった。

「ワイン飲めるか?」

「はい、少々なら」

 あたしは、嘘をついた。ワインは大好物で、一人で2本空けたこともある。まあ、学生の時分だったから、最近では1本も飲めば良い気分。

 料理は課長にお任せにした。パスタをメインに、あと前菜をいくつか注文したようだが、あたしにはさっぱり分からない料理名だった。

「すまんな、こんなとこまで付き合わせてしまって」

「いえ、こちらこそ、色々教えてもらった上に、こんな素敵な店にお誘いいただいて」

「いや、俺もな、一人で食べる夕食って味気ないだろ。時々でもこうやって誰かと食事できると嬉しいんだ。まあ、いつもって訳にもいかないんだけどな」

 課長はにこやかにそう言った。

「ところで、例の事件、どうなってるんだろうな? 警察からは、清井さんの行方については捜査中ということばかりでな。あっちからは色々聞いてくるくせに、こちらにはなかなか情報回してくれないんだ」

 そうなのか。捜査協力仰ぐなら、それなりに情報提供もしれくれればいいのに。

「実はですね…」

 あたしは、課長に簡単に説明することにした。京子の安全のこともあるので、あたしたちが個人的に興信所に依頼して調べてもらっていることにして。興信所とはもちろん権藤さんのことである。ここ数日あたし達が入手した情報の内、差し障りのなさそうな内容だけを伝えた。

「そうか…。じゃあ、佐伯の勘ってのが当たってたんだな?」

「まだ分かりませんけど。その線が濃いっていうことらしいです」

「そうか」

 あたしは、前菜に口をつけながら、ワインを飲んだ。なんだろう、この淡いふわふわな料理は?

「これは、卵らしいな。卵白を泡立てて作ってるみたいだよ。この店のオリジナルらしい」

「へえ、そうなんですか。口当たりがいいですね」

 課長はあたしの心を読んだようにそう説明してくれた。

 それから、また差し障りのない話が続き、最後にはまた今日の勉強内容に話が戻った。

「だからな、あそこで、こういう結果が出るわけだ。だから、金利がこうで、返済計画がこれこれで」

 と、ワインで緩くなってきた課長の口から、先ほどの勉強の内容が続いた。その内容はあたしの脳には全く届いていなかったが、しきりに相槌を打ち、聞いているフリをした。しかし、課長は真面目な人だな、とかそんな事を考えながら。

「でだ、佐伯。来年、一緒に本社に行くぞ」

「は?」

「本社枠になれば、本社転勤も可能だからな」

「あ、はい」

 あたしは適当に返事した。

「俺は本気だ」

 課長は明らかに酔っていた。そう言えば…あれ…?ワインが3本空き瓶になっている。いつの間に。

「あ、はい。そうですね」

「もし、転勤できなかったら、俺が連れて行く。な、一緒に来い」

「あ、はい…って?」

「俺のこと、どう思ってる?」

 課長の目がすわっていた。

「どうって、いい上司だなと。尊敬してます」

 それは、本当だった。

「上司じゃなくって、男としてだ」

「あ、あの…」

 あたしは何となく課長の言いたいことが分かったような気がした。

「課長、お疲れなんじゃないですか。あの、プライベートでも色々あったみたいですし、今回の事件もあって、お疲れでしょう。そろそろ、あがりませんか?」

 水を差すようでもあったが、あたしはこの話はここで終わらせた方が良いと思った。うん、あたし大人だ。と、酔っ払った頭で自画自賛。

「…ん…。そうだな。悪かった」

 酔っぱらっても、やっぱり課長は大人だった。そう言って、すぐに席を立った。会計をすませる為にキャッシャーに向かったみたいだ。あたしは、しばらく気がつかずにその背を見ていた。はっとしてその後を追う。

「割り勘の約束ですよね?」

「いいんだよ。もう済んだ」

 課長はすでに財布を閉じた後だった。

「すみません。では、ご馳走になります」

「じゃあ、また、来週な。宿題は忘れるなよ」

 店の前で、課長と別れた。店の看板はすでに消された後だった。気がつかないうちにかなり長居していたみたいだ。

 帰り道、京子に電話をかけた。はたしてワンコールで出た。

「何か変わったことはない?」

「ないわよ。美保子、何かあったの?」

 京子はやっぱりエスパーだった。

「ん…ちょっとね」

 さっきの話をかいつまんで話した。

「美保子、モテ期きたんじゃないの?」

「からかわないでよ。そんなんじゃないから!」

「まあ、でも、この期を逃さないようにした方がいいわね。あ、でも、丈治はダメよ。あたしが保障するけど、あの人はダメ」

 京子はけんもほろろにそう言った。

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