人生こんなところで終わらせてたまるか!第17話
あたし佐伯美保子は28歳、アラサーまっただ中。某都市銀行の地方支店で働くOLで、身長180センチ、元レスリング部、よく街で男の子に間違われる。
5年越しのお付き合いの末、婚約者の齋藤丈治に別れを告げ、婚活を始めたあたし。
出会い系サイトで誤って出会ってしまったゲイのおっさん権藤さんからなんと偶然、あたしの初恋の人である星夜くんに再会し、相思相愛に!
と思ったら、今度は社内で気になる年上の課長から個人的にお誘いを受けたり、お局さんからお呼び出されたり、終いに銀行では誘拐事件発生! なんとゲイのおっさんは実は元刑事の探偵さんだった! 事件は星夜くんも巻き込んで次第に深刻さを増していく!
さらに宗教団体から追われて逃げてきた元フィアンセ丈治が満身創痍で現れる始末! あたし、どうしたらいいの!?
どうなるあたしの恋路!?
ドキドキ婚活ストーリー!
出勤前、自宅を出て京子のマンションに向かう途中、星夜くんから携帯電話に着信が入った。昨日の夜あたしの中に渦巻いたモヤモヤが残った状態だったので、一瞬躊躇したが、すぐに我に返って着信ボタンを押した。
「美保子の勘が当たったみたいだよ。宮崎、例の事件以降失踪状態らしいんだ」
「失踪?」
誘拐した本人が失踪とは、一体どういうことだろう。しかし、誘拐事件と同時ということは、ほぼ関わりがあることには間違いない。
「会社にも出てきてないって。俺の方からも顧客名簿の連絡先に電話してみたけど、携帯も自宅も応答なしだったよ。警察も、そっちの線で捜査してるみたいだって」
「そう。連絡ありがとう。京子にもそう伝えておくわね」
電話を切ってから少し溜息をつく。何故か心臓が高鳴っている。星夜くんと丈治の顔が交互に浮かんだ。ブンブンと頭を振って妄想を消し去る。そんなことを考えてる場合じゃない。
マンションに着いてから、京子にも同じことを伝えた。
「宮崎が失踪ねぇ…」
京子はすんなり納得してはいなかった。
「なんか、ちょっと解せない感じね」
京子もあたしと同じく違和感を感じたようだ。見張りの刑事さん達を気にしながら、あたしたちはいつも通りの時間には出勤する。清井さんはまだ見つかってはおらず、当然支店にも彼女の姿はなかった。一応、課長から、身代金目的の誘拐ではないようなので、今日の午後にも公のニュースになる予定だとの説明をもらった。課長もかなり心配のようだ。昨日の夜も寝ていないのかも知れない。スーツとネクタイは昨日と同じものだった。
「早く見つかるといいのにね」
同僚の子達も一同にそう、心配していた。日頃は厳しい先輩でも、さすがにこうなると、いないのは寂しらしい。皆、清井さんのいいところもよく分かってるのだろう。
その日の夕刊の地方面にニュースとして掲載され、地方局TVの夕版ワイドニュースではトップ記事として読まれた。
「この宮崎って人、よく分からない人だな…」
その夜、あたしは昨日と同じく『バー サンセット』で星夜くんと一緒にいた。今日は京子も一緒だった。表では黒塗りの車の中で見張り役の刑事さん達が待機しており、彼らには悪いとは思ったが、いつまでも京子を仲間はずれにするのも気が引けた。それに、結局はどこにいても彼らは張り込みしなければならないわけだから、どちらにしても同じではないかとの判断だった。
ちなみに、丈治は一旦帰宅した後もそのままソファで寝ていた。朝食は摂っていた様子だったので、声を掛けたら目を覚ました。いつまでもソファ寝だとあまりにも悪いので、日中あたしがいない時はベッドを使ってもらうようにした。夕食を食べたらまた寝たので、そのまま出てきた次第だった。
「なにがよく分からないの?」
星夜くんの言葉にあたしは首を傾げた。
「うちの結婚相談所に登録しているのに、どうやら、複数人との交際していたような形跡もあるらしい」
今日は権藤さんはいなかった。情報集めとかで、出ずっぱりらしい。
「そうなの?京子以外にもってこと?」
「うん、そうみたい。京子ちゃんと付き合ってたのって、去年の終わりくらいまでなんでしょ?」
「ええ」
京子は小さく頷いた。
「その後くらいから、かなり若い女性と連れだっているところを、会社の人達が何度か目撃しているらしいんだ。けど、うちに登録したのは、今年に入ってからなんだよな。なんかおかしいよな…」
その時、星夜くんの携帯が鳴った。
「もしもし。ああ権藤さん?はい…はい…。え、そうなんですか。ちょうど、今その話をしていたところで。分かりました。お疲れ様です」
「権藤さん?どうしたの?」
「ちょうど今話していた、宮崎と交際していたらしい若い女性ってのが、くせ者らしい。権藤さんの調べだと、誰かに雇われた娼婦だったらしいんだ」
「雇われ娼婦?」
「つまり、美人局なんじゃないかって。宮崎自身もなにかヤバイことに巻き込まれてた可能性があるっていうんだよな」
「つつもたせ…?」
「ああ…つまり、なんていうかな。色仕掛けで、脅迫するとか、そういうヤツ。誰かか、その若い女性を使って宮崎に近づき、女と関係したことを理由に、恐喝したりして、金品を巻き上げるとか、そういうことがあったんじゃないかってことかな」
「あたし、なんかよく分からなくなってきた。つまり、宮崎は加害者じゃなくって、被害者だったってこと?」
「んー。今の話だけじゃ良く分からないなぁ」
「あたしは宮崎は誘拐とかできるような性格じゃないと思ってた」
京子はぽつりとそう言った。
結局、その日の収穫はそれだけで、進展はないまま、あたし達は解散した。
それから数日経っても、清井さんは発見されず、捜査も難航しているようだった。新聞、ニュースでも連日の報道はされているが一向に進展があるようには見られなかった。
丈治は丈治であたしの家に落ち着いたまま、居候状態。引きこもりよろしく、自宅でじっとしたまま。京子には何度も追い出すように言われたが、彼に言い出せずに、結局放置状態が続いていた。
事件の方が完全に膠着状態になったある日、あたしの身辺が急展開を迎えた。




