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人生こんなところで終わらせてたまるか!第16話

 あたし佐伯美保子は28歳、アラサーまっただ中。某都市銀行の地方支店で働くOLで、身長180センチ、元レスリング部、よく街で男の子に間違われる。

 5年越しのお付き合いの末、婚約者の齋藤丈治に別れを告げ、婚活を始めたあたし。

 出会い系サイトで誤って出会ってしまったゲイのおっさん権藤さんからなんと偶然、あたしの初恋の人である星夜くんに再会し、相思相愛に!

 と思ったら、今度は社内で気になる年上の課長から個人的にお誘いを受けたり、お局さんからお呼び出されたり、終いに銀行では誘拐事件発生! なんとゲイのおっさんは実は元刑事の探偵さんだった! 事件は星夜くんも巻き込んで次第に深刻さを増していく!

 

 さらに宗教団体から追われて逃げてきた元フィアンセ丈治が満身創痍で現れる始末! あたし、どうしたらいいの!?


 どうなるあたしの恋路!?


 ドキドキ婚活ストーリー!

「じゃあ、事件についてまとめてみよう」

 京子との電話を終えて、男性版権藤さんが紙にペンを走らせながら真剣な目つきであたしを見た。

「まず、清井さん誘拐事件。もしこれが清井さん個人の理由で拉致された、もしくは身代金目的なのだとしたら、私たちのあずかり知らぬところなので、手の出しようがない。ただ、現在の時点で身代金要求の連絡がないところをみると、それはなさそう。但し、怨恨によるものが可能性としては残っている。

 そして、もう一方、京子ちゃんのストーカー事件。今は京子ちゃんの身辺には警察がついているから問題ないとして、容疑者は宮崎と小島。小島についてはここ最近のアリバイがあるので除外。宮崎については、京子ちゃん本人及び支店の人達の目撃証言があるので、ほぼ宮崎で間違いないと思われる。

 そして、美保子ちゃんの勘によれば、この二つの事件は関係があるのではないかということ。これで間違いないかな?」

「はい、そうです」

「ただ、ここで疑問が一つ。この清井さんと京子ちゃんの外見が似ていたとしても、付き合っていた程の相手が間違えるだろうか?」

 権藤さんは紙に「?」マークを書いた。

「でも、拉致現場を目撃した人によると、複数の男性が清井さんを連れ去ったっていうことになってますよね? だとしたら、宮崎が誰かに拉致を頼んだ。頼まれた男達が間違えた。ってことになるんじゃないですか?」

 星夜くんが補足してくれた。

「それも考えられる。だが、単なるストーキングの手法としては、どうだろうか? 大げさすぎないか? しかも、目撃証言によると、その連中、車からものすごい勢いで清井さんの前に現れて、連れ去ったらしい。手法がかなり手慣れてる。つまり、プロの犯行じゃないかと警察は見ている。単なるストーカーがそこまでするもんかねぇ?」

 確かにあたしの感じていた違和感もその辺ではあった。

「今のところの情報だと、以上かな」

 星夜くんとあたしは頷いた。

「じゃあ、美保子ちゃんの勘を信じて、私はこの宮崎という男を洗ってみるよ」

「ありがとうございます。よろしくお願いします。

 ところで、権藤さんには、何かお支払いとかした方がいいんですよね?」

 探偵ということは、それを生業にしているわけで、タダというわけにはいかないだろう。

「まあ、これも何かの縁だし、佐藤さんの顔もあるから…タダでもいいんだけど。

 それにね、ここだけの話、警察の方からも情報提供を頼まれていてね。今調べたことも全部うちの後輩に情報として流す約束になってるんだ。だから、美保子ちゃんに頼まれなくても調べることは一緒なんだよ。

 …まあ、電話代とか、最低の経費くらい出してもらったら助かるかな」

「分かりました。じゃあ、必要になったら、教えて下さい」

「オッケー、オッケー。じゃあ、正式に依頼をお受け致します」

 権藤さんはにこやかに笑って、あたしの依頼を請け負ってくれた。


 帰宅したのは深夜。丈治は深い眠りについていて、全く起きることはなかった。それを確認してから、あたしは寝室に入り、京子に電話して、権藤さんが捜査を請け負ってくれた旨を伝えた。京子も頼もしい味方が増えたと喜んだ。

「しかし、権藤さんが、探偵さんねぇ…しかも、元刑事…。信じられない」

 京子も同じことを考えていた様子。

「まあ、悪いこともあれば、良いこともあるもんね。ところで、丈治いるの?」

「うん、居間のソファで寝てる」

「明日には追い出しなさいよ。置いておいても、絶対いいことないからね」

 京子は強い言い方でそう言ったが、あたしはそれには返事しなかった。

「あんな風に婚約破棄するような男よ。絶対に美保子の為にならないから、分かった?」

「うん、考えておく」

 京子は電話の向こうで深い溜息をついた。

「せっかく、初恋の君といい感じになったのに、それ、ぶち壊す気?」

 確かに京子の言う通りなのだ。星夜くんとは、まだ正式にはお付き合いを始めた訳ではないけれど、権藤さんのおかげで相思相愛が発覚し、星夜くんは経営の軌道が乗れば、あたしは今の星夜くんのことを理解できたら、という条件付きで、お付き合いの約束をした仲なのだった。しかも、あたしの中では、星夜くんは初恋していた時より、ずっとずっと素敵な男性になっていた。

「そんなつもりは……」

「じゃあ、ちゃんと、ケリつけておきなさいよ」

 京子はばっさりと言い切った。けれど、その後に無言が続くと、また溜息をついた。

「まあ、いいわ。じゃあ、また明日ね」

「うん、また明日」

 電話を切った後、居間に戻ってソファに寝ている丈治の様子を伺いに戻った。タオルケットは掛けた時のままになっている。あれから微動だにしていないことが分かる。よほど疲れたのか、何日も寝てなかったのか。とにかく尋常ではない状態だったことは確かだ。こんな状態の人を、放り出すことはできない。これは、恋情とかではなく人情なのだ。決して両天秤とか、そういうことではない、とあたしは自分に言い聞かせた。

 

 翌日あたしが起きても、丈治は全く目を覚ます様子はなかった。やはりタオルケットに変化はなかった。心配になって、息をしているかどうかだけ確認する。確かに呼吸はしているし、その鍛えられた胸は上下している。昨日に続いて簡単ではあるけれど、朝ご飯を用意した。

 置き手紙に「会社に行ってきます」と書いてテーブルに置き、後ろ髪を引かれる心地で、いつも通りにマンションを出た。

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